14話 成長
光里に失恋した次の日の朝になり、蓮は目を覚ます。
上半身を起こして、外を見ると、太陽が上っていて明るくなっていた。
光を浴びて、不思議と蓮の心も晴れ渡ってくるようだった。
そして、勇気を出して学校に向かった。
勇気を出して、教室に入る。既に光里が席に座っていた。
「おはよう、光里ちゃん。」
「……。おはよう。」
光里は心配そう表情で暗い雰囲気に見えたが、蓮は昨日のことは気にしないようにし、
"友達"の光里に明るく挨拶した。
恋人ではないのだ。光里ちゃんは私の大切な"友達"なんだから、と言い聞かせて。
蓮は、光里には許嫁もいて恋は叶わない、と恋を諦めようとしていた。
そして、何事もなく日々が過ぎていった。
蓮と光里は学校生活を楽しくおくった。
白には光里のことを相談をしたこともあり、告白の結果を伝えていた。
話を聞き、白は悲しそうな表情をしたが優しく励ましてくれたのだった。
そんなある日のこと、昼休みになり、
いつものように蓮と光里は一緒に昼食を取ろうとしていた。
「蓮ちゃん、久しぶりに一緒にご飯食べない?」
蓮が振り返るとそこには優しく微笑む翼咲がいた。
光里に行ってきたらといわれ、蓮は翼咲についていく。
翼咲と一緒によく昼食を取っていたベンチに着いた。
ベンチに座り、お弁当を広げる。
空は晴れ渡り、鳥のさえずりが聞こえる中で、二人とも静かに食べ始める。
蓮はなんとなくではあったが、呼ばれた理由がわかっている気がした。
翼咲は食べ終わると、いい天気だなと独り言のように呟く。
そして蓮の方を見る。翼咲は優しい表情をしていた。
「蓮ちゃん、白に聞いたんだけど光里ちゃんに告白したんだよね。」
「……。はい。」
蓮は忘れようとしていた失恋の日のことが頭をよぎり、胸苦しくなり俯く。
「諦めるの?」
「仕方ないですよ。フラれたんですし。」
「諦めないほうがいいよ。」
蓮が顔を上げると、翼咲は強い眼差しをして見つめていた。
蓮はたまらず目をそらす。
「光里ちゃんは難しいです。」
「そうなのかな。」
翼咲はそう言うと、真正面を向き、空を見上げる。
「もし諦めたらなら、それで終わりだけど、本当にそれで満足?」
翼咲に問われ、蓮は答えられなかった。
「その顔、諦めてないね。」
「……。」
翼咲は蓮の方を見て、微笑む。
「本当はまったく諦めてないのに、諦めたつもりでいると、気付けば好きな人と面影が似ている人に告白したりしてるかもよ。
その人が好きなんじゃなくて、諦めたと思ってた人の面影を好きになってね。」
「……それって?」
「蓮ちゃん、ありがとう。教えてくれて。私は諦めない。」
そう、翼咲は力強くいった。そして、立ち上がると蓮の方を向き、微笑む。
そして、生徒会室の方に向かっていった。
翼咲の表情は緊張しているように見えたが、決意した表情をしていて格好が良かった。
残された蓮は、翼咲を見送ることしかできなかった。
次の日、学校に来ると大ニュースか飛び交っていた。
それは、翼咲が白に生徒会室で告白し、それが受け入れられ、二人が付き合うことになったというものだった。




