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9話 衝突

昼休みに翼咲と一緒に食べてから、翼咲は週に一度は蓮の教室に誘いに来るようになった。

翼咲が蓮のことを好ましく思っていることは誰の目にも明らかだった。

しかし、蓮と翼咲が二人の中は、後輩と先輩の関係から友達の間ぐらいであり、恋人の関係になってはいなかった。

蓮が拒んでいた面はあったが、翼咲も関係を深くすることは避けているように、蓮は感じていた。


そんなある日のこと、蓮が職員室から出てくると、前から白が向かってくるのが見えた。

「こんにちは。」

蓮が白に挨拶すると、白も微笑んで挨拶を返す。

「蓮さんも職員室に用があったの?」

「学級委員でプリントを集めて持ってきたんです。」

「今日は光里さん、一緒じゃないんだ。」

「私一人で持っていける量だったんで。」

「じゃあ、少しここで待っててくれる?先生の用が終わった後に少し話させて。」

蓮が不思議そうにうなづくと、白は職員室に急いで向かう。

しばらくすると白は出てきた。


「ちょっとついてきてくれる?」

そう言うと白は体育館の方に向かう。

そして、翼咲とお弁当を食べていたベンチに向かったのだった。

白はいつも蓮が座る場所に座ったので、蓮は翼咲が座る方に座った。


「蓮さん、学校には慣れてきた?」

「慣れてきたと思います。こうして白先輩とも仲良くなれましたし。」

蓮がそう言うと、白は可愛らしく微笑む。

「じゃあ、この学校は好きになれた?」

「好きになっていると思います。毎日楽しくしてます。」

「それなら良かった。」

白は安心したような表情をした後に真剣な表情になり、蓮を見る。


「蓮さん、前にも言ったけど生徒会に入ってくれない?」

白はじっと蓮を見つめる。

蓮は想定はしていた質問だったが、答えに詰まる。

それを受け、白は話を続けた。

「陸上部の一年生から、蓮さんは成績優秀で人望もあるって話を聞いたの。」

「……。そんなことないと思います。」

蓮はそう返すと白は首を振る。

「それだけじゃなくて、蓮さんのクラスの担任の先生とも話したんだけど、先生内でも評価高いよ。」

「……。」

「私も他にいい人はいないか、調べたんだけど、推薦したいと思えるのは蓮さんだけだった。

学校をよりよくするために、一緒に生徒会に入って欲しい。」

白は真剣な表情で蓮を見つめる。

蓮は、白の目を通してその真剣な想いが伝わった。


「……。先輩からの推薦って、二人に対してもらえたりできますか?」

「え?、私から二人を推薦?他の生徒会のメンバーに口添えすれば二人を推薦することはできると思うけど。」

白は一瞬戸惑い答える。


「それなら、私だけじゃちょっと心配なんで、もう一人一緒に推薦してもらえるなら、生徒会入ってもいいかもです。」

蓮がそう言うと、蓮の表情は一気に明るくなる。

「よかった。二人の推薦の件は約束するけど、あ、あの子か。」

白は誰を蓮が一緒に生徒会に入りたいかわかったようだった。

蓮はうなづき、白に笑みを浮かべる。白も優しく笑を返した。


蓮は白と別れ、教室に戻ると、光里が待ちくたびれたように、机に沈み込んでいた。

「蓮ちゃん、遅いよー。何かあったの?」

「うん、ちょっとね。」

蓮はそう言いながら、光里の側による。

そして、じっと光里を見つめる。


「光里ちゃん、一緒に生徒会に入って、学校をよくしていかない?」

「え?どういうこと?」

光里は急な蓮の提案に驚くしかなかった。

蓮は、白に会って生徒会に進められ、二人に推薦してくれるなら入る、と伝えた話をした。


「私は一人だと心細いから、光里ちゃんも一緒にいて欲しい。」

「そ、それは……私も生徒会委員に興味あったけど、急に言われても……。」

話が急すぎたようで、光里はあわあわしながら言った。

すると、蓮は光里の手を両手で握り、愛玩するような目で光里を見る。

「お願い、光里ちゃん。」

蓮はお願いするように光里に言った。

光里は蓮のお願いに心動かされたようで、息を飲む。

そして、口を開いた。

「蓮ちゃんに、そこまで言われたら断れないよ。」

「ありがとう」

蓮はそう言うと、光里を両手で抱きしめていた。

「もう、蓮ちゃんったら。」

光里は蓮に抱きしめられて、照れながら言った。



その次の日、放課後になり、蓮が帰宅しようとしていた。

「蓮ちゃん、」

教室に来ていた翼咲に声をかけられる。

翼咲は頻繁に蓮の教室に来ていたので、もはや驚く生徒はいなかったが、

それでも二人の方に視線はいくようだった。

光里もワクワクと言った体で見つめている。


「今日、部活動が休みになったんだけど、遊びに行かない?」

周りの視線など気がつかないように、翼咲は自然に蓮を誘う。


「用事が済んでからで大丈夫ですか?」

「いいよ。先生に何か頼まれた?」

「いえ、ちょっと生徒会室に用があって。」

「生徒会室?」

翼咲の表情が変わった。


「私、生徒会に入ろうかなって考え始めてるんです。それでその話をしに。」

「なんで急に?」

「昨日、白先輩に薦められたんです。」

蓮がそういうと翼咲は苛立った表情をし、急に立ち上がる。

「白のやつめ。」

そういうと、急に翼咲はどこかに向かおうとした。

「翼咲先輩!?」

蓮が翼咲の後ろから声をかけるが、翼咲は振り向きもせず、教室を出ていく。

蓮が急いでついていくと、翼咲は生徒会室に向かっているようだった。


生徒会室の前に来ると、部屋の扉を勢いよく開き、翼咲が乗り込む。

そして、入るやいなやすぐに白を見つけたようで、白に近づいていく。

「私の邪魔がしたいんでしょ。」

翼咲は怒ったように言う。

白は翼咲の顔を見て、背後の蓮の姿を見て、悲しい表情をした。

そして、翼咲に向く。

「違う。蓮さんのことは翼咲とは関係ない。」

白は翼咲に言い返す。

生徒会室には沈黙と、二人の間に険悪な雰囲気が漂っていた。


蓮は二人のことを見つめることしかできなかった。

すると、翼咲は一瞬蓮に振り返り、白を睨みつけるように見た。


「蓮ちゃんは、あの頃の白に似ているんだよ。」

翼咲がそう言うと、白は驚いた表情をした。

翼咲はハッとしたように口を噤む。

「蓮さんが私に似ている?」

「……。フンッ」

翼咲はばつが悪くなったのか急に踵を返し、生徒会室から出ていこうとした。

部屋を出る直前に一瞬蓮を見た。翼咲は悲しそうな表情をしていた。

そして、勢いよく扉を閉めて出ていった。


白は翼咲が出ていく姿を見送ると、蓮に振り返る。

「蓮さん、ごめんなさいね。 翼咲のこと、迷惑かけたんでしょ。」

「いえ、そんなこと。ただ翼咲先輩の急な行動にはびっくりしました。」

蓮がそういうと白は優しく微笑んだ。

「少しついてきてくれる?蓮さんに話を聞いて欲しい。」


白についていくと、体育館側のベンチ着いた。

前に白と来たときと同じように、白は蓮が座る場所に座り、

蓮は翼咲が座る場所に座る。


「翼咲はね、今もだけど昔から猛進するとこあったんだよ。」

「そうなんですか。白先輩とも何かあったんですか?」

「幼なじみだしいろいろあったよ。意地悪な子や怖そうな大人を追い払ってくれたり、嫌なことを嫌と言ってくれたり。

自身のことは気にしないでどんなことからも私のことを守ってくれたりしてくれたんだ。」

白は過去を懐かしむように言った。


「……守ってくれたんですか?白先輩を?」

「うん。」

「以外です。白先輩が守られている姿が思い浮かばない。」

「私も守られてばかりは嫌だったからね。がんばったんだよ。」

白が照れたように可愛らしくそう言う。


「でも翼咲が、私に向かってくることになるなんて。」

白は悲しそうな表情になり言った。

「翼咲と同じ立ち位置に立ちたかっただけなのに。」

蓮は複雑な気持ちで白の話を聞いていた。

白は落ち込んだように大きくため息をつく。


「前もここに連れてきてもらいましたけど、白先輩ってこの場所好きなんですか?」

蓮は話を変えるように明るくそう言った。

「このベンチはね。本当は翼咲との秘密の場所だったんだ。

入学したての頃はここで一緒にお弁当食べてた。」

「え?」

「この席に座ってね。」

「……。」

蓮は、ベンチに座っている時の、翼咲の優しい眼差しと、生徒会室で翼咲が話していた

蓮が昔の白と似ているという話を思い出す。


「あの、実は、最近時々翼咲先輩とここで昼ごはん食べたりしてました。」

蓮がぼそりそう言うと、白は悲しそうな表情に変わる。

「そう、なんだ。」

「いつもは白先輩が座っている席に私が座ってるんです。」

「……。」

「それで、翼咲先輩は私を優しく見つめる時があって。

でも時々私じゃない誰がを見つめている気がしてたんです。

結局、翼咲先輩とは仲の良い先輩って感じでの付き合いですし。」

「……それってもしかして。」

「白先輩、もう一度、翼咲先輩と話したらどうですか?」

「……でも、もう私たちは。」

「でもじゃないんです。白先輩も翼咲先輩のこと、まだ好きなんでしょ。」

「!?」

蓮に言われ、白は急に赤面する。

「ふふっ。赤くなってる。」

「コラ、あんまりからかわないで。」

白がそう言うと、蓮と白は二人笑い合った。


白と話をした後に、蓮は一人教室に戻る。

白はというと、決意を決めたような表情をして生徒会室の方へと戻っていったようだった。

蓮は戻り道で、何か寂しい失恋したような気持ちになった。


教室の扉を開けると、光里が残っていた。

光里は蓮が入ってくることに気がつくと、明るく目を輝かせる。

「蓮ちゃん、おかえり。大丈夫だった?」

「光里ちゃん、待っててくれたの?」

「蓮ちゃんの鞄が置いてあったから、戻ってくるのかなって。」

「そうなんだ。ありがとう。色々あっけど一応大丈夫かな。」

蓮はそう言い、笑を浮かべる。

光里はほっとしたように微笑み、それ以上は聞いてこなかった。

そして、蓮は鞄を持ち、光里と一緒に下校した。


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