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変な設定が生えてきたんだが?

更新です。

評価とブクマありがとデス。




「ご苦労様です、クルフ様!」


「あぁ、君もいつもご苦労様」


「随分長い事話をされていた様ですが彼はお知り合いで?」


「よくよく見てみれば数年前に旅をしていた時に、戦場で一緒に戦った事があった傭兵だったのでな、つい長話をしてしまった」


「それはそれは、クルフ様と共に戦われたとはさぞ実力のあるお方なのでしょうな!!」


「そうだな、彼は高い継戦力と何度傷付いても立ち上がる姿から『不死者ノスフェラトゥ』と敵からは呼ばれ恐れられていてな。命を救って貰ったこともある。なぁサカザキ殿?」


「・・・おう、そうだな」


「しかし、とある戦場でそうそう回復出来ない様な呪いを受けてしまったと報を受けた。そこで私は恩を返すために、呪いが解呪されるまではここで療養しないか、という誘いを彼にかけ、彼はそれに乗ってくれた訳だ」


「ほぉ、そんな事が!!一度受けた恩を忘れないとは、流石はクルフ様です・・・しかし、今は結界が作動して誰も入れなかった筈では?」


「はは、照れるな、恩を返すのは当然の事だよ。結界については彼が到着すると伝達魔法を使ってきたときに一瞬の間切って入って貰った」


「・・・」


と、まぁそういう事になった。

あんまり不用意に喋るとこの謎の設定に齟齬が生じそうなので黙ってた方がいいだろう。

でも不死者って二つ名は正直滅茶苦茶恥ずかしいんだが?

というか誰だコイツ、さっき俺を平然と殺そうとしたヤツとは大違いだ。

外向けの顔と本性が全然噛み合ってないんだが?

部下の兵士A君も目をキラキラさせちゃってまあ。


しかし、伝達魔法ってなんだ?

んー、伝達ってんだから魔法で電話でも出来ちゃうのか?

色んな魔法が有るもんだ。

というかだ、俺は今後魔法を使える様になるのか?伝達魔法を使ったとか言ってたけど今何も使えないぞ俺は。


「なるほど!!所でクルフ様と共に戦えると言う事はランキングも当然高いのですか?」


「・・・私は過去に言ったと思うがランキングが強さの全てではないよ。彼はランキングで言えば下から数えた方が早い、しかし間違いなく強い」


「あっ、し、失礼しました!!」


「別に怒ってはいないよ。ただ、ランキングが全てではない、これだけは覚えておく様に」


「了解しました!!」


「よし、では最後に一つ、全部隊に通達を頼む『サカザキ殿は我がレトリア家の客人である、療養中のため興味本位で実力をたしかめる様な阿呆な事は考えるな』と」


「はっ!!では失礼します!!」


綺麗な敬礼をしてキビキビとした足取りで去っていく兵士A君。

教育が行き届いてんなあ。


「そういう訳でサカザキ殿、宜しく頼むよ」


「何がそういう訳だ、変な設定生やしやがって。風呂敷を広げすぎると後で回収が大変になるぞ?任せておけと言ったから静かにしたけどさあ。どうすんだこれ」


「不穏分子は手元に置いておいたほうが面倒がなくていいだろうと思ってな。殺しても復活してしまうのならば変に牢に繋ぎ止めるのも不味いだろうしな」


「お前な」


喋ろうとした瞬間に手で口を塞がれる。

なんだってんだ。


「何よりも、だ。私は身分故に対等に話してくれる者が少なくてな、君みたいな奴が隣にいると面白いと思った」


イタズラ好きの少年が浮かべる様な笑顔でそう言われてしまい、肩から力が抜ける。

そしてふと真剣な顔になったかと思うと突然腰を曲げて―――


「何度も殺してしまって済まなかった、民草の事を思うと不審な者をここに入れる訳にはいかなかった。まだ魔の物ではないかと多少の疑いはあるが、そうで無いと証明出来た時には改めて謝罪させて貰う、もしその時に許してくれるのであれば私と友になってはくれないか?」


「普通の人なら死んだら終わりだからまぁ許すも許さないも無いんだろうけど・・・まぁいいよ、謝罪ももう要らない」


殺して済まなかった、と言われとっさに何も思い付けなかった。

何言ってんだコイツ、と思わないでもないが、あまりにあっさり謝られて思わず苦笑してしまう。


只、急にこの世界に飛ばされた俺としては、一人でどう生きるかなぁ、なんて思っていただけに友達という言葉はやけに心に来た。

なんだかんだ摩耗しちゃってんのかね。

本当に、色々思う事もあるけど、まあ。


「じゃあさ、俺が別の世界から来たっての、取り敢えず信じてくれよ。呪いで記憶喪失って事でもいいから。んで、俺にこの世界で生きていく為の知恵をくれ。それで全部許す、友達になろう」


少しして顔を上げた彼はなんというか、少々間抜けな顔をしていた。

カッコイイのが台無しだな、と思わず俺が噴き出すと、クルフはハッとした顔をして咳払いをする。

まさかこんな簡単に許されるとは思わなかったのだろう。

癖なのか少しの間目を瞑り、上を見上げてその後に。


「分かった、それでいいのなら喜んで力になろう」


「ん、良し、んじゃあ、移動しようぜ。今からどこへ行くんだ?眠いし腹減ったしで俺もうヤバイんだわ」


「私の家、と言いたい所だが客人を紹介しない訳にはいかないからな。家族皆が住まう本邸の方に行こうか。夕食も寝処もそちらで用意させよう。魔の物でない証明もそこで行う」


「まぁ、何でもいいよ。所でさ、俺の潔白はどうやって証明すんのよ?」


「我が家の魔道具に『真実の結晶』と言うものがあってな。存在が魔に寄っている者が触れると黒くなり、更に触れている間に発言した事が嘘であれば・・・」


「どうなるんだ?」


「体が結晶に覆われて窒息死する」


「エゲツないわ!!」


別に嘘なんてつかないから良いけどな!!

やっぱ俺の事殺す気かコイツ?!

何でも話を聞くと、その魔道具はコイツの師匠が発明したものらしい。

師弟揃ってヤバすぎない?


「嘘をつかなければいいだけだ。嘘を平気でつくやつは死ねばいい。私は嘘と言うものが大嫌いでな」


「極端すぎんだろお前・・・まぁいいや、さっさといこうぜ」


「今の説明を聞いてその態度なのが既に白では有ると思うんだが、まあ、やるに越したことはないな・・・あ、それともう一つ」


「まだ何かあるのか?」


「私が部下に、サカザキ殿は『不死者』の二つ名がどうのと言っていたことだが・・・その内本当にその二つ名で敵に恐れられる事になるので風呂敷の回収はバッチリだ」


それを聞いて呆然としている俺の肩を悪い笑顔でをポンポンと叩き、行くぞと歩いていくクルフ。

何?俺戦わされんの?嫌だけど?決定事項なの?

いやいやいや、言っちゃなんだか今の所何も出来ないクソザコナメクジよ俺?


戦闘に巻き込まれる前にさっさと元の世界に帰れないかなあと、肩を落としてクルフについて行く俺であった。


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