初日から運悪すぎない?
でけた。
評価もブクマも嬉しいです。
「さて、旅人殿、ようこそ城塞都市レトリアへ」
「あ、どうもどうも」
イケメン君に付いていって門から中に入ってみれば、なるほど中世頃の西洋の町並みにみえる。
あー、なんというかあれだな、異世界に来たってよりはというかRPGの中に直接ぶち込まれた様な感じだ。
「おや、街が静かなのが気になるのかな?」
「んん?・・・うん、はい、そうですね。田舎者なので発展した街が珍しい、というのもありますけど」
キョロキョロしてたら何か勘違いされたみたいだな。
あんまり挙動不審な態度は見せないほうがいいか、また矢で狙われるのはゴメンだ。
「はは、いつもは活気があっていい街なんだが、今はさっき言った通り付近の魔物が活性化していて危ないから皆あまり外出しないんだ」
「なるほど、外があれだけ無茶苦茶なら街の人は怖いでしょうね」
「そういうことだから最近飲食店なんかは売れ行きが悪いみたいでね、良かったら出るまでに何か食べたりして助けてあげてくれ。・・・さぁ詰め所はこっちだ」
どうやら詰め所で話を聞いてくれるらしい。
しかし困ったな、店で買い物したり飲み食いしたりするのは良いんだがそもそも金が無い。
というか通貨がどんなものかも分からないし、もっといえばこの世界の常識も分からない。
一番問題だと思うのは、この世界に俺が呼ばれた目的が謎ってところだ。
「取り扱い説明書もなし、初期の所持金もゼロ、更にクリア条件も謎・・・完全にクソゲーじゃねえかどうすんだこれ・・・」
・・・ホントにどうしたもんかねえ。
◇
「さて、そこにかけてくれ」
「あ、はい」
案内されたのは詰め所の一室、あるのはテーブルと椅子、後は資料が乱雑に詰められている棚があるのみ。
んー、なんかテレビでみた警察の取り調べ室みたいな・・・取り調べ?
「・・・先日、ここの近くでうちの兵士達と魔物を討伐している途中にあの二匹と出くわしてね、何人かやられているんだ。確か、君は逃げてくるついでにここの兵士らしき者の遺体から遺品を持ってきてくれたんだとか?」
「ですね・・・えっと、今腰に下げてるこの剣と・・・このタグ?みたいなものですね」
まぁ靴は別に良いか、また素足で動くのも嫌だし。
剣とポケットに突っ込んでいたタグを取り出し渡すと、イケメン君はそれをしばらく眺めたあとに目を瞑り、天井を向いて溜息を一つ。
「確かにここの兵士のものだ、これは彼の家族に届けておこう・・・そういえば、質問なのだが遺体は街の近くに?」
「あー、ここからしばらく西に行ったところに倒れてましたね。埋めてあげようと思ったのですがあの二匹の魔法がこっちまで飛んできて殺されそうになったので流石に断念しましたが」
「賢明な判断だ。では遺体も既に無くなっていそうだな、残念だが回収は諦めるとしよう。ご協力感謝する・・・・・・ん?」
「どうされました?」
「そういえば名前を聞いていなかったか、恥ずかしいな、こちらも名乗っていなかった」
「そういえばそうですね、私は逆崎 光といいます。逆崎が家名で光が名前です」
「サカザキ殿の故郷では家名が先に来るのだな。私はレトリア家の次男、クルフ・レトリアという。一応このレトリアの兵士全ての指揮と運用をさせて貰っている」
「アッ、ハイ、ヨロシクです」
おおっとお、町に来て初エンカウントがまさかの領主の息子さんだぁ。
おえらいさんだったのか・・・面倒だなぁ、遺品だけその場で渡してさっさと退散すれば良かったかね。
というか言葉遣いとか大丈夫だったか俺?
「はは、そう固くならなくても大丈夫だ。もっといえばサカザキ殿、君がもし堅苦しいのが嫌いだというのなら敬語もいらない」
「あっ、そう?それなら良かった。敬語とか苦手なんだよな俺、どうも宜しくクルフ君」
「・・・見事な変わりようだな、公私の使い分けが上手いというか。まぁ領主の息子という事もあってか皆私に対しては口調が固くて困る」
そう言って苦笑するクルフ君。
なるほど、少し話をしたりした程度だが、行動一つ一つが丁寧で言葉も気取った所がない。
顔良し性格良しで確実に皆から慕われていそうなタイプだ。
好感が持てるし出来れば仲良くしたい。
・・・したいのだが。
「あーっと、クルフ君?なんで俺の首に剣を添えてるのか教えて貰えるかな?」
「サカザキ殿、遺品を持ってきてくれた事には感謝しているし、出来れば君を殺したくは無い。今からする質問に正直に答えてくれないか」
くっそビックリした!!
というかクルフ君の動きが全く見えなかった、いつ剣を抜いて首に添えられたのかもわからない。
俺が瞬きをする一瞬の間にこれだ。
・・・もしかして俺、この短いやり取りの中でなんか不審がられる様なマズイことをしたのか?
「返事をしてくれサカザキ殿」
「ちょっ!!切れてる切れてる!!答えるって!俺なんかしたか?!」
「・・・では質問だ。この街の周りに有事の際に張られる結界、あれは誰も、何の魔術も通さないように出来ているロストマジックの筈だ。それに認可が降りて居ないものが触れれば燃やされ塵になる攻性結界でもある。それを無視してどうやって入ってこれたのかを聞きたい」
え?何?ロスト何て?結界?
新要素盛り沢山でちょっと目眩がしてきたぞ?
そもそも結界とかあったか?
というか粉微塵とかいう物騒な言葉で何か記憶がよみがえってきたような・・・
あっ、そういえばあったわ結界。
思い出した思い出した。
ここに付く直前に何か透明なドームみたいなもんがあるなぁと興味本位で触ったあれだろうなあ。
触った瞬間に塵にされたわ。
しかもその場で即リスポーンするからひたすら塵にされ続けてなぁ!!
塵になった体が少しずつ結界の中に入っていって最終的に結界内に入れたから良かったけどな!!!!
ショックで記憶飛んでたわ糞が!!!!
・・・後で何回死んだか確認するのヤダなぁ、めっちゃ死んでそうだし。
「どうしたサカザキ殿?やはり何か悪意を持ってこの街に来たのか?」
「あー、いや、すまん、理由は分からないけど実は俺、体の再生能力が異常でな。体を再生させながら無理矢理結界の中に入り込んだんだ。言われるまでショックで記憶飛んでたわ。ホントゴメンね」
とっさに答えたのだがこれでどうだろうか?
死なないってのはちょっと安易に言うべきではない気がしたので却下。
再生能力が高いのは本当だ。
実際ここに来るまでに何回か鳥さんの子供達に体をぶち抜かれた時に発覚したわけだがこの体、致命傷で死ななければ速攻で傷が塞がるのだ。
飛び散った肉片とか血とかはそのままだったので、どこから体のパーツが
補充されてるのかは不明なのがまた気味が悪い。
「・・・ふむ、聞いた事はないが、常時発動型のリジェネみたいなものか?確かにもう首につけた傷は塞がっているが・・・しかし体を燃やされ続ける痛みで普通はそんな事をしようと思わないものだがな?」
「ならその剣で腕でも刺してみるか?一瞬で塞がるぞ?因みに何故か痛覚も無い。俺も出来れば普通の体に戻りたいんだが」
言うや否や実際肩をぶっ刺される。
ホントに刺されるとは思わなんだ・・・ドン引きである。
いやまあ責任ある立場だし、ちゃんと確かめとかないといけないから仕方ない・・・いややっぱおかしくね?
「確かに再生するみたいだ、いきなり刺してすまない。確認に時間をかけている間に再生魔法をこっそり唱えられていたら真偽のつけようがなくなるのでこういう処置を取らせて貰った」
「なるほどな、若干頭おかしい人なのかと疑ったけどそういう理由なら仕方がない」
「さらっと失礼な事を言うな君は。確かにいきなり肩を指すのは私もどうかと思ったが・・・しかし痛覚も無いのか、ここで滞在するのにあたって、その辺りの経緯をちゃんと聞かせてほしいのだが、何か深い訳が有るのだろう?」
いや、ないですけど?