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第7話 ツルギ対四つ手猿

 巨獣同士の戦いは、スピードの上回る一角豹がほぼ一方的に四つ手猿を攻撃をしていた。

 スピードを活かした一角豹の巧みな攻撃は、次々と四つ手猿の身体を切り裂いていく。

 四つ手猿は、その身体を鮮血に染め苦痛のうなり声をあげた。

 怒りに震えた四つ手猿は、4本の丸太のような腕を振り回し狂ったように振り回し周囲の木々を叩き折っていく。

 俺とツルギは、折れた木々をカモフラージュに這うようにして倒れているた人間に向かって近づいていった。

 特に赤ん坊である俺は、ハイハイが得意である。

 戦いに夢中の巨獣たちは、俺達に全く気付いていない。おかげで倒れた人間の所まで無事にたどり着くことに成功した。

 俺は、倒れている人間を確認して驚きの声をあげかけた。

 倒れていた人物は、俺の知っている人間とは見た目が少し違っていた。長い耳、金色の髪、しかも美形のファンタジーの定番種族であるエルフだったのである。

 ただ残念なことは、エルフの美少女ではなく、エルフの少年だったことである。

 そこまで、お約束という訳にはいかないようだ。


「ツルギ。そいつを運ぶんだ。」

「承知致しました。」


 ツルギがエルフの少年を担ぎ上げた時、エルフの少年がうめき声を漏らし、一角豹が俺達の存在に気付いてしまったのである。

 一角豹は、獲物を横取りされまいと怒りの咆哮を上げ、俺たちに襲い掛かろうとした。

 やばい。

 俺は、覚悟を決めた。

 しかし、一角豹が俺たちに襲い掛かってくることはなかった。

 四つ手猿が一角豹の尻尾をガッチリと掴んでいたのである。

 四つ手猿は、一角豹が見せた僅かな隙を見逃さなかった。

 反撃の間を与えず、尻尾を引っ張り一角豹を振りまわし、その勢いで地面に叩きつける。

 一角豹の口から血が飛び散った。

 続けて四つ手猿は、一角豹を振り回しながら、辺りの樹々に叩きつけていく。

 振り回す度に辺りに一角豹の身体が血がまき散る。


「今のうちにこの場を離れるぞ。」

「されば、この者を捨て置き、この場を離れることが得策かと。」


 確かに俺がこのエルフの少年を助ける義理はない。でも助けられるなら助けてやりたい。それにこのエルフの少年が持っているこの世界についての情報が何より必要なのである。

「よし、作戦変更。俺がこいつを運ぶ。援護に回ってくれ。」

「承知致しました。」


 俺は、エルフの少年の身体の下に潜り込むと両手で頭上に持ち上げた。

 姿が赤ん坊でも俺の身体能力は、通称の成人男性をはるかに越えている。エルフの少年一人を持ち上げる位、容易なことだ。


「行くぞ!」


 既に気付かれている。俺は全速力で走り出した。


 後方から四つ手猿が一角豹を地面に叩きつける音が聞こえてくる。

 今のうちにできるだけ距離を取らないといけない。

 しかし、数十メートルもいかないうちに足元の地面に黒い影が映った。

 反射的に後ろに飛び退く。


ズシン!


 大きな音をたてて、さっきまで俺がいた場所に一角豹の死体が降ってきた。

 振り替えると四つ手猿が怒りを顕にして吠えた。

 ツルギは、既に刀を抜いて構えている。

 次の瞬間、四つ手猿がひとっ飛びで俺達を飛び越え行く手を遮るとエルフの少年を担いだ俺に掴みかかってきた。

 

「させぬ!」


 ツルギが四つ手猿の腕を斬りつけた。

 刃が四つ手猿の太い腕に食い込むが分厚い筋肉で腕を切断することが出来ない。

 やはり、格上相手である。ツルギでは倒すことができない。

 しかし、2頭だった獣も潰しあって今は1頭。倒せぬまでも逃げることはできるはずだ。


「ツルギ、無理をする必要はない。隙をみて逃げるぞ。」

「承知いたした。」


 しかし、四つ手猿の容赦ない攻撃は凄まじく、ツルギは、受けるだけで精一杯の状態であった。

 隙をみて逃げ出そうにもこう続けざまに攻撃されていてはその内やられてしまうかもしれない。

 ツルギにしても、まだレベル1の状態であった。

 これまでに幾度か格下のモンスターとの戦闘はあったが、レベルアップはしなかった。

 基礎数値が高いことからレベル1の状態でも今までは問題が無かったのである。

 俺は心配ではあったが取り敢えずその場をツルギに任せ、その場から離れた。

 エルフの少年を担いだままでは何も出来ない。

 四つ手猿から死角になる位置にあった岩場の裂け目に少年を押し込み、木の枝で隠すと急いでツルギの元へ駆けつけた。

 ツルギは四つ手猿の攻撃に何とか耐えていた。

 だが、その姿はボロボロである。


「待たせた、ツルギ。」


 俺は、ツルギの後ろに回ると背中に両手を当てて、有りったけの魔力を流し込んだ。

 ツルギの身体を淡い光が包み、みるみる傷が回復していく。

 ツルギはゴーレムであるが自己修復能力が備わっている。しかし、それには魔力を消費する。格上相手のギリギリの状態での戦闘においては、小さな損傷は修復する暇と魔力がないのである。

 しかも、ツルギの魔力は自然回復しないので俺が注入してやらなければならない。

 というわけで俺がツルギに魔力を補充したのである。


「魔力の補給確認。スキルを発動します。」


キーン!


 一瞬、ツルギの刀から甲高い音が響く。


斬!


 ツルギが刀を振るった刹那、四つ手猿の右腕の一本が地面に落ちる。


「スキル。高周波ブレードでござる。」


ギャーお!


 四つ手猿が悲鳴を上げた。

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