第6話 2頭の巨獣
ジャングルの天気は変わりやすい。
さっきまで快晴だったのにいきなりの豪雨になっていた。
この雨が小さな身体の俺には大洪水となる。
そこで俺はツルギの頭の上に座っていた。
非常時に俺とツルギの両手を開けておくベストポジションが頭の上だったのである。
結局、雨が止んだ後もツルギの頭の上が俺の定位置となっていた。
袴を履いて腰に刀を差した少女の頭上で胡座の赤ん坊という異様な姿である。
もちろん、ジャングルをあてもなく進んでいたわけではなかった。
先程の雨水が流れて行く先を追っている。
水の流れる先には川がある。
川に沿って行けば人の集落がある可能性が高いからだ。
それ以外にも水場には、動物が集まるから食料が手にはいる。
もちろん、そんな獲物を狙う肉食動物に出合う危険性はあるが、今はツルギがいるから何とかなるだろう。
しばらく、水の流れを追っていた時、唐突に獣の唸り声と何かが激しく争う音が聞こえてきた。
「ツルギ、気付かれないように近づくぞ。」
「御意。」
俺達は、気配を消して音のする方へ近づいて行く。
木々の間にできたわずかな広場に2頭の獣が対峙していた。
額に一本角の生えた黒い豹に似た獣と、腕が4本ある緑のゴリラに似た獣である。
どちらも像を連想させるほど巨大な身体をしている。
一角豹
HP 12945
MP 3568
攻撃力 7431
防御力 5015
敏捷性 9053
四つ手猿
H P 22652
M P 2312
攻撃力 12682
防御力 11568
敏捷性 6533
俺は、鑑定結果に驚愕した。
まずい。ツルギのステータスに何とかなるだろうと甘く見ていた。
俺が知っていたのは雑魚キャラ代表のスライムだけだった。
当然、他に強いモンスターがいることは容易に想像できた。
くそっ、俺はなにやってるんだ。判断力まで赤ん坊かよ。
まあ、不幸中の幸いなのは、先に気付けたことだな。
気付かれる前にここを離れないとやばい。
そう思ったとき、俺は2頭の巨獣の足元に人が倒れているのに気が付いたのである。
2頭の巨獣は、この人間を獲物として手にするために争っていた。
「マスター。至急、この場を離れることを進言します。」
ツルギの言葉は分かっていたが、俺は倒れている人がまだ手足を動かしているのを見てしまった。
まだ、生きている。
「ツルギ、あの人間を助けるぞ。」
「進言します。我が方の戦力では、2頭の獣を相手にするのは困難と思われます。至急、この場を離れるべきです。」
「分かっている。モンスターを相手にするつもりはない。隙をみて助け出す。」
「承知いたしました。」
「とにかく、気配を消して、あの人間の所へできる限り近づくぞ。」
「御意。」