第5話 次の扉
俺は、ツルギと出会った広間を抜け、次の扉の前に立っていた。
石造りの両開きの大きな扉である。
俺の身体が小さいことを抜きにしてもかなり大きい。
片側の戸だけで、ざっと高さ10m、幅3mってところだ。
とりあえず、力を込めて押してみたがびくともしない。
流石にこれだけ大きいと体当たりしてみる気も起こらない。
「流石に無理か。」
さて、どうしたものか。
これまで別のルートは無かった。となると出口はここだけなんだろう。
「開きませんか、マスター。私が試してみてもよろしいでしょうか?」
俺はツルギの顔をまじまじと見た。
確かに俺より力があるだろうがこの大きな石の扉を動かすほどの力があるとは思えない。
「まあ、ツルギがやってみたいなら試してみなよ。」
「では、やってみます。」
ツルギは、そう言うと刀の柄に手をかけた。
まさか、ツルギの奴、この石の扉を斬ろうとでも言うのか。
いや、攻撃力が少々高いだけでは、斬鉄剣でも持ってこない限り、この石の扉を斬ることはできないだろう。
ツルギは扉の正面に立つと刀を上段に構え、一気に振り下ろした。
キンッ!
甲高い音が響き渡る。
ゴトン!
扉の向こうで何か大きな物が落ちた音が聞こえた。
ツルギは、扉に歩み寄り、片手を当てると力を込めた。
すると、扉は音もなく外側に向けて動いたのである。
「一体どういう訳だ?」
「外側に閂がかかっているのが扉の隙間から見えましたのでそれを斬りました。」
「閂?」
俺が扉に手を掛け押してみると、意外にも大した力も必要とせずに外側に開いていった。
扉をくぐるとそこには閂に使われていただろう一抱えもある太い丸太が転がっていた。
「お前、これを隙間越しに斬るかよ。大体、その刀じゃ届かないだろう。」
「斬撃を飛ばせばすむことです。」
斬撃を飛ばすって、まあ、この世界なら何でもありなんだろうが、それにしても扉の隙間越しに、この丸太を斬ったとは大した腕前である。
しかし、外側からわざわざ閂をする必要性。外に出られないようにするために使われたのだろうが一体誰を閉じ込めたかったのだろう。
たくさん転がっていた鎧姿の亡骸達なのか、それともツルギの前身であった黒い鎧姿の巨体ゴーレムなのかは分からない。
可能性としたら、後者だろうが俺にとってはどうでもいいいことだ。
とにかく、ツルギが役に立つと分かったからである。
ところで肝心の扉の外であるが、いきなり外になっていた。
正確には、元々は建物の内部であったのであろうが壊れて、屋外となっていたのである。
しかし、久しぶりの日差しが眩しかった。
外から見ると、今まで俺がいた場所は、古い神殿の様な建物だった。
今は無残な姿であるが、元はかなり大きく立派な建物だったようである。
建物の周囲は、熱帯風の植物に覆われた鬱蒼としたジャングルになっていた。
「外に出られたのはいいが今度はジャングルの中かよ。」