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第2話 遭遇

 俺は、赤ん坊の身体にも慣れて、かなり自由に動ける様になっていた。

 しかし、ここで重要な問題が判明していた。

 この部屋には、水も食べ物も何もない無かったのである。

 腹が減ったら動けなくなるのは、赤ん坊だろうが大人だろうが同じである。

 今のところ喉の乾きや空腹感は無かったが時間の問題だろう。

 赤ん坊であっても保護者がいなければ、自分で自分の食いぶちは確保しなければならない。

 不思議と前世では有り得なかった生きるための気迫が、身体の内から沸いていた。

 部屋の外に出て、水と食料を見つけるなくてはならない。

 俺は部屋を出るため、扉の前にいた。

 扉は最初の体当たりで開いた状態となっている。

 扉の陰から外の様子を伺うが何の気配もない。

 俺は慎重に扉の向こうに足を踏み出した。

 まあ、厳密に言えば、ハイハイなんで右手だけど。

 扉の向こうは、部屋の中と同じく石造りの通路になっていた。

 俺は、赤ん坊だから、背が低く、遠くまで見通すことが出来ないので壁沿いを進むことにした。

 しかし、遠くが見えないってことは、敵がいれば相手から先に見つかる危険性が高いことになる。

 ここで遭遇するものが人であれ、動物であれ、味方とは限らないのである。

 しばらく進むとテニスコート程の広さの天井の高い広間に出た。

 だが、小さな身体だとかなり広く感じる。

 床には、俺の背丈ほどある緑色の草が一面に生えていた。

 これ、食えるかな?


『鑑定 リヒポ草(HP回復薬の原料)』


 HP回復薬の原料なら、食って食えないことはないだろう。

 俺は、リヒポ草を千切ると口に入れた。

 青臭い味が口一杯に広がる。


「うっ、不味い。」


 流石に赤ん坊が食べられる味ではない。

 しかし、俺はただの赤ん坊ではなく、中身がオヤジなのだから。


「まあ、青臭い苦瓜(にがうり)だと思えば、食えないことはないな。」


 若芽の柔らかいところだけ摘んで食べると苦味も少なく意外と食える。

 草を摘まみながら、進んでいくと、突然、そいつに出くわせたのである。

 サッカーボール程の大きさの丸くてプルルンとゼリーの様な緑色の物体である。

 そいつはボールの様に弾むとリヒポ草を上から押し潰す様に体内に吸収していった。


「何だ、こいつ?」


『鑑定 スライム

    HP 120

    MP 15

    強さ 45

    防御力 60

    敏捷性 40』


「スライムって、まあ、見た感じそうだろうと思ったけど。」


 スライムは、プルプル震えると弾みながら俺に襲いかってきた。

 予想はしていたが、スライムの動きが、スローモーションの様に見える。

 俺は、スライムの攻撃を余裕で避けるとスライムに体当たりをした。


 ボン!

 スライムは、ボールの様に大きく弾き飛んだ。

 しかし、ダメージを与えることが出来ない。

 スライムですら二桁の攻撃力が俺はたった1なのだから仕方がないのかもしれない。

 気付くとスライムは、一匹ではなく何十匹と辺りに一面で草を吸収している。

 ここは、スライムのエサ場であったのだ。

 何十匹というスライムが一斉に襲いかってきた。

 数匹であれば、避けることは容易いのだが、これだけ大量だと避けるのは困難である。

 次々と飛び掛かってくるため、どうしても攻撃を受けてしまう。

 それでも高い防御力に助けられてダメージを受けることはなかったのだが、突然、背中に痛みと衝撃を感じた。

 何だ?


『敵スライムから1ptのダメージを受けました。』


 ヤバイ、残りHP4だ。

 こんな調子でダメージを受けていたら直ぐに0になって死んでしまう。ゲームみたいに死に戻りなんかはあてに出来ない。

 俺は、とにかく全力で逃げることに集中した。

 目指すは、祈りの間につながる通路だ。

 とにかく、避けるだけではダメだ。俺は、スライムに片っ端から体当たりをしていく。

 攻撃は、最大の防御だ。

 体当たりをして弾き飛んだスライムが更に他のスライムを巻き込んで弾き飛ぶ。

 俺は、やっとのことで祈りの間につながる通路に転がり込んだ。

 スライム達は、何らかの制約があるのか通路には入ってこない。

 残りHP1。

 首の皮一枚つながって助かった。

 死にかけたが、収穫はあった。

 直接の攻撃では、全くノーダメージだったスライムだが、弾き飛ばして他のスライムにぶつけるとで僅かながらダメージを与えているようなのである。

 これなら、やりようによっては攻撃力1でもスライムを倒せるかもしれない。

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