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夢物語  作者: 佐伯 稜
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青春はここから始まった。

私は病弱だった。体調を崩す度に入院しないといけない程の。そんな私はこの世界には自分の家の周辺と病院しか、自分の居場所はないと感じていた。だけどそんな私にも世界は広いんだ!と知る機会がやってきたのだ。

あれは私が小学4年生の時だった。私はいつものように病院のベッドで眠っていた。何も起きない退屈な空間。部屋は全て真っ白な壁で段々と不安になってきてしまう。私は、病弱なところがあったから学校にもろくに行けないで友達も全然できなかった。できる訳なかった。そして私は段々と人と話さなくなっていった。いや、話せなくなってしまった。感情もあまり顔に出なくなってしまった。でも、そんな私にも友達が出来た。それは人形とかではなく、ちゃんと同い年の男の子だった。突然の出来事だった。同じ病室にその男の子がやってきたのだ。その男の子は交通事故で脚を怪我してしまったらしい。だからその男の子は常に松葉杖をついて歩いていた。だけどその男の子は私なんかよりもずっと重い怪我をしているはずなのに、常に笑っていた。私なんかよりも、もっとずっと友達も多いはずなのに。家族も、居るはずなのに。みんなに迷惑かけてしまっているのに、なんでそんな平気で居られるんだろうか。私は気になった。

「なんで、そんな風に笑っていられるの?」

私はそう聞きたかった。だが現実はそんなに上手く行くもんじゃないと思い知らされた。その男の子が病院に来てから、2週間が経とうとしていた。もう、今日で退院らしい。だけどまだ一言も話せないでいた。ずっと学校に全然行ってなかったという代償はあまりにも大きすぎたのだ。女の子ならまだしも、男の子となんて...なんて話せばいいかと全く分からない。あぁ...ダメだ、何も浮かばない。結局私みたいな人間はこんな閉ざされた世界で生きていかなきゃいけないのかもしれない。そんなマイナスな思考になっている時だった。

「ーそのままでいいのか?ー」

突然誰かに話しかけられた様な気がした。誰の声なのか分からない。だけど、何故か不思議なほどに力が湧いてくる感じがあった。そして私は、やっと言えたのだった。

「君はなんで、そんなに笑っていられの?」そして、その男の子はこう答えた。

「友達が...いや、仲間が居るから!」

「仲間...?」

やはり、私とは全然無縁の世界に生きているのだろう。その話を聞いた瞬間私はそんな風に考えてしまった。聞いた私が馬鹿だった。こんなこと聞いたって、わたしには分からない答えが返ってくるに決まってるじゃないか。私とは釣り合う訳ないんだ。

だけど、意外な言葉が返ってきたのだ。

「そう、仲間。...お前も俺達の仲間になるか?」

私は頭の中が真っ白になった。私を仲間に?そんなことする人がいる訳ない。こんな弱い私を。私は真っ白な頭で必死になんて応えるかを考えた。そしてまたマイナスなことを言ってしまった。

「私なんか、構わなくていい。」

あぁ、またやってしまった。友達を作ろうとしても人を嫌がらせてしまう、この癖が。私はいつからこうなってしまったのだろう。もっと小さい時は友達なんて簡単に作れたのに。なんで、人とふれ合おうとしての逆のことを思われてしまう様な発言をしてしまうのだろう。だけど、そんな私にも希望の光が見えた。

「お前、友達いないだろ。」

そう言われた。初めて、他人からそう言われた。いつもならここで会話は切れてしまうのに。初めて会話が続いた。

「いなくて、何が悪いの」

わたしは無意識に言葉を返していた。そして異様にむしゃくしゃした気持ちになっていた。

「寂しくないのか?独りって。俺なら無理だな。尊敬するわ」

その男の子はそんなことをどんどんと言っていく。わたしにとっては侮辱にしか聞こえないことをズバズバと言っていく。だけど一番最後のとある言葉で、むしゃくしゃした気持ちも一気に吹き飛んでしまった。

「だったら、仲間と一緒にいることの楽しさを俺が教えてやる。だから来い。退院したら待ってるぞ。」

「待ってるって、どこでー」

「学校だ」

そう言い残して、男の子は私より先に退院してしまった。そういえば、まだ名前も聞いていなかった。名前くらい聞いとくべきだったと少し後悔していた。

その男の子が退院してから3日後、わたしも退院した。3週間ぶりの学校。だけどなぜか少し気が楽だった。いつもなら退院後は毎回不安になりながら登校していたのに。

しばらくして校門についた。

「よう!待ってたぜ!」

そして、その男の子は私を明るく出向いてくれた。

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