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虹に願いを

作者: 松村かれん

 ある小さな村に広い原っぱがありました。そこに赤い屋根の家がありました。その家には、うみちゃんという女の子とその子のお父さんとお母さんが住んでいました。昼間になると、その原っぱには村の子供たちがたくさん遊びに来ます。しかし、うみちゃんは重い病気を持っていて他の子のように外で遊ぶことができませんでした。そんなうみちゃんは虹を見るのが大好きでした。雨上がり、うみちゃんの村では必ず森に虹がかかります。しかし、その虹は逆さまだったのです。いつしかその森は「逆さ虹の森」と呼ばれるようになりました。うみちゃんの部屋の窓からは逆さ虹の森がよく見えます。なぜなら、その森はうみちゃんの家の目の前の原っぱの隣にあったからでした。窓から見える風景を眺めながらうみちゃんはこう思うのでした。「あの森に行ってみたいなぁ」と。しかし、この村にはこのような言い伝えがあります。「虹のかかる時にしか森には入れない」。なぜなら、オンボロ橋と呼ばれる橋があるからです。原っぱと森の間にはとても大きな川が流れています。オンボロ橋は普段は今にも崩れそうなくらいボロボロになっていますが、虹がかかる時だけ綺麗なつり橋になります。今まで、何人もの冒険者たちが挑戦しましたが、帰る頃にはもう虹が消え、もとのオンボロ橋に戻ってしまい、帰ってこられなくなった者がいるとかいないとか。      そんなある夜、うみちゃんの村に大雨が降りました。うみちゃんは雨音と雷で眠れませんでした。夜中、雨が止み、うみちゃんが眠ろうとした時です。外がやけに明るいのです。うみちゃんはカーテンを開きました。すると、空には逆さ虹がかかってたのです。うみちゃんは「夜遅くに虹がかかるなんて珍しいわね~」と呟きました。その時です。空から虹色の流れ星が降ってきたと思ったら、うみちゃんの窓の外にある植木鉢にぶつかったじゃありませんか。植木鉢がひかりました。すると、植木鉢の中からウサギが現れました。そのウサギはうみちゃんの家の窓を開け、うみちゃんのそばに来ました。土まみれになったウサギはその場で土を払いましたが、うみちゃんがせきこんでしまったためやめました。「ごめんね。病気持ちだったね。」ウサギは優しく言いました。ウサギはなんだか悲しそうな顔をしていました。「ウサギさん、何か悲しい事でもあったの?」うみちゃんは心配そうに言いました。「違うんだ。僕は元々こういう顔なんだ。」ウサギはそう答えました。「僕はね。ウサギのなみだっていうんだ。よろしくね。」「私はうみ。こちらこそよろしくね。」二人が自己紹介を終えた後、うみちゃんがウサギのなみだにこう聞きました。「なみださんはどっからきたの?」なみださんはこう答えました。「実はね。うみちゃんが憧れている『逆さ虹の森』から来たんだ。」うみちゃんは驚きました。だって、あの逆さ虹の森から来客が来るとは思ってもいませんでしたから。うみちゃんは、さっきから疑問に思ってたことを聞きました。「ところで、なんで私の名前と病気持ちのことを知っているの?」なみださんは答えました。「実は、逆さ虹の森にある『ドングリ池』という場所から世界中の子供たちの様子が見えるんだ。そこでうみちゃんを見つけたわけ。そこで今日は、うみちゃんの願いを叶えに来たんだ。」うみちゃんは「私の願い?」と言うと、「ほら、『森に行ってみたい』って言ってたじゃないか。」となみださんは言いました。「でもね。」なみださんは続けて言いました。「もうすぐ虹が消えちゃうんだ。だから、今からは行けない。そこで…。」なみださんは虹に左手をかざしました。すると、なんということでしょう。夜空の虹がなみださんの手元に行き、虹色の千歳飴に変わったではありませんか。「これを持っていると、いつでも森に行けるよ。虹の代わりになるからね。」うみちゃんはなみださんから千歳飴を貰いました。「うん。わかった。ありがとう。」と、うみちゃんが言うと、「それにね、この千歳飴を振ってみて。」となみださんは言いました。うみちゃんは弧を描くように千歳飴を振りました。すると、夜空に虹がかかりました。「わぁ、スゴい!」とうみちゃんが言うと、「こういう使い方もあるから試してみてね。」となみださんが言いました。「うん。」とうみちゃんがうなずいた時、「じゃあ、うみちゃんが虹をかけてくれたところで、僕は森に帰りますか。」と言って、うみちゃんの家を去りました。

 次の日、お母さんの「うみ、朝ごはん出来てるわよ!」の言葉で目が覚めました。昨日、夜遅くまで起きていたので深く眠り過ぎていました。朝ごはんを食べた後、うみちゃんは本を読んでいました。数時間後、不意になみださんから貰った千歳飴の事を思い出しました。さっそく、昨日と同じ方法で虹を作ると、うみちゃんは「この千歳飴どんな味がするんだろう?」と思いました。なめてみると、すごくおいしいのです。今まで食べた飴の中で一番な気がしました。そして、いつの間にか全部食べてしまいました。空を見ると虹も消えていました。「あっ、全部食べちゃった。どうしよう。このままじゃ、森に行けない。」うみちゃんはしょんぼりしてしまいました。               その夜、うみちゃんは夜空に向かって「なみださん、なみださん。もう一回来て!」と言いました。すると、うみちゃんの家の周りに逆さ虹がかかりました。そして、虹色の流れ星が降りなみださんが現れました。「もう、うみちゃんたら。飴全部食べちゃって。」「だって、凄くおいしかったんだもん。」とうみちゃんが言うと「そういうこともあるだろうと思って…。」なみださんは虹に手をかざしました。すると、虹はリボンに変わりました。なみださんはそれを手に取ると、うみちゃんに渡しました。「このリボンを手首に結んでみて。」となみださんは言いました。うみちゃんが結び終えると、今度は「その手で大空に弧を描いて。」となみださんが言ったので、うみちゃんは大きく手を動かしました。すると、うみちゃんの手から金平糖がでてきました。その金平糖は宙を舞い、やがて虹になりました。「これなら、いくら食べても虹が作れるよ!」となみださんが言いました。「凄い、凄い、ありがとう。」とうみちゃんがお礼をした時、「うみちゃんが虹を作ってくれたということで... 」森に帰ると思いきや、「僕と一緒に探さ虹の森へ行こう‼」となみださんが言いました。「満月の日の森はとても綺麗なんだ。だから、ぜひうみちゃんと一緒に遊びたいんだ!」うみちゃんの答えは即答でした。「うん。行く!なみださん、よろしくね。」こうして、二人は逆さ虹の森に行くことになりました。 広い原っぱをぬけ、オンボロ橋の前に到着しました。しかし、空の虹が消えかかり橋が少しボロボロになっていました。なみださんが言いました。「うみちゃん。今こそ『虹色リボン』の力だよ!」うみちゃんは橋の形にそって右手を華麗に動かしました。すると、橋に虹がかかりオンボロ橋は綺麗なつり橋に変わりました。ついでに、うみちゃんは森全体にも虹をかけました。その光景はまるで絵画のようでした。「さぁ、行こう!ここからは、うみちゃんと僕達だけの世界だよ‼」なみださんはうみちゃんの手を引いてオンボロ橋、いや、虹のつり橋を渡りました。                            森を進んで行くと、しゃべり声が聞こえてきました。どんどん歩いて行くと彼らの姿が見えました。「僕の友達たちだよ。」となみださんは言いました。向こうもなみださんたちの姿が見えたのか「あ、なみださんだ!」「なみだくん!」「ウサギのなみだと一緒にいるのは例のうみちゃんかな?」など色々な声が聞こえました。「みんな、うみちゃんを連れてきたよ‼」となみださんが言うと、動物たちがうみちゃんのもとへ集まりました。しかし、大きな体のクマだけは木の裏に隠れてしまいました。なみださんは順に動物たちを紹介しました。まず、暴れん坊のアライグマのイカリ、お人好しのキツネのシンセツ、歌上手で愛の歌を歌うコマドリのいとし、食いしん坊のヘビのぺこり、いたずら好きのリスのいじり、そして、「ビビリ~、うみちゃんはとても良い子だよ。怖がらないで出てきて。」先ほど木の裏に隠れていたクマは、なみださんの言葉を聞いて安心したのかうみちゃんたちの所にゆっくり歩きながら来ました。そのクマは怖がりのクマのビビリ、これでここにいる全員の紹介が終わりました。そこで、なみださんが言いました。「この近くに『フェアリーの噴水』があるから行こう!」うみちゃんと動物たちはフェアリーの噴水がある所に行きました。到着すると、なみださんは「水の妖精たち~!」と大きな声で言うと、「は~い‼」という声が奥の方から聞こえて来ました。そして、水の妖精たちがやって来ました。妖精たちは水口の上を宙を舞いながらクルクル回ると、水が吹き出しました。さらにクルクル回ると、うみちゃんの手首と同じようなリボンが噴水の周りにかかりました。妖精たちは華麗なダンスを踊りました。その演技は素晴らしいものでした。踊り終わると妖精たちは列になって「うみちゃん、逆さ虹の森へようこそ‼」と言いました。「うわぁ、ありがとう!」うみちゃんは喜びました。「逆さ虹の森を楽しんできてね!」と妖精の一人が言いました。「うん。わかった!」とうみちゃんが言いました。「じゃあ、みんなは後で『陽だまりの丘』で合流しようね。僕はうみちゃんを案内するから。」となみださんが言いました。「面白そうだから俺もついていくぜ。」とリスのいじりが言い、「僕も行きたいな~」とコマドリのいとしが言い、「わたくしはそういうの得意です。」とキツネのシンセツが言ったので、なみださんは3人とうみちゃんを案内することにしました。      森をトコトコ歩き、うみちゃんたちは『根っこ広場』に着きました。根っこ広場はたくさんの木の根っこが飛び出した広場でした。木の根っこでガタガタしていてとても歩きにくい所でしたが、コマドリのいとしだけは飛べるのでそんな心配はありませんでした。しだいに3人は太い根っこに沿ってかにのような歩き方をして進んでいきました。だんだん根っこ広場での歩き方にも慣れたところで、うみちゃん・なみださん対コマドリのいとし・リスのいじりの2チームに分かれ、根っこのボールでドッヂボールをしました。ゲームの半ばでそろそろ点を入れたかったのか、いたずら好きのリスのいじりがこんなことを言いました。「うみちゃん、頭の上に毛虫がついてるよ。」うみちゃんは思わず、「きゃあ‼」と言いました。しかし、これはリスのいじりがついた真っ赤な嘘でした。すると、近くにあった根っこがリスのいじりをまきつきました。「根っこ広場で嘘をつくと根っこがその人にまきつくんだ。だから、うみちゃんも気をつけてね。」となみださんが言いました。「そんなことはいいから早く助けてくれよ~。」リスのいじりが言いました。すぐさま、お人好しのキツネのシンセツが助けようとしましたが、なみださんがそれを止めました。「リスのいじり、もう嘘をつかないと約束できるか?」なみださんの問いにリスのいじりが「それはちょっと難しい話だな~。」と言ったので「だめだ。置いて行こう。」となみださんが言いました。「ちょ、ちょっ、ちょっと待って、待って。」とリスのいじりが言うと、うみちゃんが「じゃあ、私に嘘をついたことは反省してる?」と言いました。「もちろんだよ。」とリスのいじりが言ったので、うみちゃんはなみださんに「こういってる事だし、もう許してあげて。」とお願いしました。なので、なみださんは小刀で根っこを切り、リスのいじりを助けました。リスのいじりはうみちゃんを抱きしめて「ありがとう。君は命の恩人だよ!」と言いました。この一件によりドッヂボール大会は中止なったので根っこ広場を出ることにしました。歩いていると、うみちゃんがつまずいて転んでしまい、右ひざをすりむいてしまいました。ひざから出た血はかかとあたりまで流れていました。周りの人たちから見てもうみちゃんがとても痛そうにしている様子が伝わってきました。そこで、キツネのシンセツがなみださんに聞きました。「ねぇ、今日って月出てますよね?」「うん。今日は満月だよ。あっ、そうか!」なみださんは何か思いついたようです。「よし、今から『月明かりの花畑』に行こう!」こうして4人は月明かりの花畑に行く事にしました。             月明かりの花畑に着きました。月明かりの花畑は月の花という水色の花が咲く花畑です。うみちゃんは未だに足を引きずっていました。なみださんが言いました。「月の花は月が出ている時にしか咲かないんだ。今日みたいな満月の夜には満開になるんだよ。」どうやら、半月の時は半開、新月の時は全く咲かないなど月の満ち欠けによって咲く不思議な花でした。「今日が月が出ている日で本当に良かったですね。」キツネのシンセツが言いました。「どういうこと?」とうみちゃんが聞くと、「月の花や『陽だまりの丘』の太陽の花はケガした所や体の悪い所に効く薬草なんだ!」となみださんが答えました。そして、なみださんは月の花を一輪手に取るとうみちゃんの右ひざに花の粉をかけました。するとどうでしょう、みるみるうちにケガが治っていき、あたかも最初からケガなどしていなかったかのように傷跡一つも残りませんでした。痛みもだんだん和らいでいきました。「えっ、嘘みたい!」うみちゃんは驚きました。そしてもう一つなみださんは言いました。「これ食べられるんだよ。食べてみて。」うみちゃんは月の花を一輪食べました。それはみずみずしくシャキシャキしていてほんのりと甘みのある味でした。「これでうみちゃんの病気は治るわけではないけど、逆さ虹の森で具合が悪くなることは無いよ。」となみださんが言いました。「ちなみに太陽の花は甘酸っぱいんだぜ。」とリスのいじりが言いました。「でも、月の花と同じくらい太陽の花も美味しいですよ。」とキツネのシンセツが言いました。「じゃあ、うみちゃんのケガが治ったということで僕のオススメの場所へ案内してあげるよ。」とコマドリのいとしが言いました。「あぁ、あそこだね!」となみださんが言いました。「僕の友達も紹介したいし。」コマドリのいとしが言いました。「いつも寝てばかりいるけどな。」リスのいじりが言いました。ということで4人は『あの場所』に行くことになりました。   あの場所というのは『そよ風の竹林』のことでした。そよ風の竹林は1年中そよ風が止まることなく吹いている竹林でした。うみちゃんの髪がそよ風によってなびきます。4人は優しい風の中、前へ前へと進んでいきました。すると、目の前に眠っているパンダを見つけました。なみださんはそのパンダの肩を優しくたたき、「パンダのねむり、うみちゃんが遊びに来てくれたよ。だから起きて。」と言いました。パンダのねむりは大きなあくびをして起きると、「今日はヒーローになって子供たちと野球をする夢を見たよ。」と言いました。それに対してなみださんは「おぉ、それは良かったね!」と言いました。すると、コマドリのいとしが「じゃあ、パンダのねむりが起きたところで僕はうみちゃんへ歓迎の歌を歌いましょう。」と言いました。「それはいいですね。」キツネのシンセツが言いました。「コマドリのいとしの歌、世界で一番好き。」パンダのねむりが言いました。うみちゃんは「うわぁ、楽しみ‼」と言いました。そして、コマドリのいとしはそよ風によって竹の葉っぱが奏でる美しい伴奏とともに愛のこもった歌を歌いました。逆さ虹の森一の歌上手ともあって、その歌声はとても美しいものでした。歌い終わった後、コマドリのいとしはうみちゃんにこう聞きました。「僕からのプレゼント、気に入ってくれた?」それに対してうみちゃんは「うん。最高だったよ。ありがとう。」と言いました。「うみちゃんが喜んでくれてれて本当に良かった。」とコマドリのいとしが嬉しそうに言いました。そんな時、キツネのシンセツがパンダのねむりにこう聞きました。「ここをもう少し歩くとみんなで待ち合わせしている『陽だまりの丘』に到着しますので、あなたもよかったらどうです?」それに対してパンダのねむりが「いいの?ねむもついてっていいの?」と言いました。「もちろんだよ。」なみださんが言いました。「これで仲間が増えたね!」うみちゃんが言いました。「歩きながら寝るなよ。」リスのいじりが言いました。「そんなこと、いくらパンダのねむりでもできないよ。」コマドリのいとしが言いました。そんな楽しいおしゃべりをしながら5人は『陽だまりの丘』へと向かって行きました。                                        陽だまりの丘に着きました。陽だまりの丘にはさっきいた3人となみださんに似たウサギがいました。なみださんは白い色で悲しい顔をしていますが、そのウサギはピンク色でニコニコしてました。「僕の双子の妹の『ウサギのえがお』だよ。」なみださんが言いました。「よろしくね!」ウサギのえがおさんが言いました。「私、みんなのためにサンドイッチを作ってきたからみんなで食べよう!」えがおさんはそう言ってなみださんと大きなレジャーシートを引きました。みんなはそこに座って仲良くサンドイッチを食べました。それぞれ中身は、キイチゴのジャムのサンドイッチ、月の花のジャムのサンドイッチ、太陽の花の塩漬けのサンドイッチ、そして、おかずにそよ風の竹林で採れたタケノコの煮物でした。「太陽の花の塩漬けは風邪予防にもなるんですよ。」キツネのシンセツが言いました。「見てみてうみちゃん。これが太陽の花のつぼみだよ。」なみださんは近くの草のつぼみを指差して言いました。そのつぼみは黄色い色をしてました。「晴れた日はここ全体が満開になるんだ。」となみださんが言うと、「それじゃあ、こんな所にみんなで座っていいの?」とうみちゃんが聞きました。「うん。平気。太陽の花は強いからこれっぽっちじゃ死なないんだ。あと月の花もね。」となみださんが答えました。「じゃあ、俺がどんなに暴れても大丈夫ってことか?」とアライグマのイカリが言いました。すると、なみださんは「うん。だけど、クマのビビリが怖がるからやめな。」と冷静に言いました。そんな時、うみちゃんはあることに気づきました。「あれ、そういえば水の妖精さんたちは?」そして、「水の妖精たちはフェアリーの噴水の守り主だからあそこから離れることができないんだ。」となみださんが答えました。数十分後、みんなは食べ終わりました。パンダのねむりはお腹いっぱいでその場で寝てしまいました。一方、ヘビのぺこりはえがおさんに「ねぇ、もっと無い?」と聞いてました。「ごめんね。これ以上は無いんだ。」とえがおさんが答えてました。「そうだよ。いくらウサギのえがおが料理上手でもあれ以上作るのは無理だよ。」となみださんが言いました。みんなで色々な話をしている時、なみださんがうみちゃんにこう言いました。「最後に君を連れて行きたい所があるんだ。」「あっ、『ドングリ池』だね。」リスのいじりが言いました。「ちょっと、それを言っちゃだめじゃない。」えがおさんが言いました。「でもあそこでドングリを投げて願い事をすると叶うと言われているのでいいのではないでしょうか。」キツネのシンセツが言いました。「あそこからうみちゃんや世界中の子供たちのことをずっと見守っているんだ。だから、うみちゃんにもぜひ見て欲しいんだよ。」なみださんが言いました。そして、うみちゃんとなみださんは『ドングリ池』に行くことにしました。        二人はドングリ池に着きました。ドングリ池はよく澄んだキレイな池でした。「二人でここでお願い事をしよう。」なみださんが言いました。うみちゃんは『たくさん友達ができますように。』と祈りました。「私の病気は一生治らないからね。病気が治ることをお願いしたらドングリ池が困っちゃうと思うの。だから、生きている間にたくさん友達を作りたいと思ったの。」うみちゃんが言いました。「そうだね。いくら願い事が叶う池でも病気が治る花でもうみちゃんの病気を治すことはできないと思う。でもねうみちゃん。今日会った僕の友達はみんなうみちゃんの友達だし、人間の友達も多くなくていいから『この人なら大丈夫。』って思える心のキレイな人を見つけるんだよ。」となみださんが言いました。「私にそんな人が見つかるかな?」うみちゃんが言いました。「その虹色リボンがあるから大丈夫だよ。」なみださんが言いました。一方、なみださんは『世界中の涙が虹になりますように。』と祈りました。「この世界から悲しみが消えることは無い。もし、悲しみが消えてしまったら喜びも消えてしまうだろう。だから、ウサギのなみだとウサギのえがおは双子で生まれて来たんだよ。昔も今もこの先も涙と笑顔は共存しなければならないんんだよ。」なみださんは語りました。「人間は泣きながら生まれてくるんだから涙が消えないのは当たり前だし、その後も泣き続けていかなければ笑顔で生きていられないんだよ。」なみださんはそう言いました。「もし病気が悪化して僕たちに会いに行けなくなっても、人間の友達と遊べなくなっても、会いたいって思った人を寝る前に思い浮かべてみて。そうしたら、その人が虹の橋を渡って夢で会いに来てくれるから。それが僕だったら会いに行くよ。約束だよ。」なみださんはうみちゃんにそう言いました。「約束の印に・・・」なみださんはドングリ池のほとりにあった花を花束にしてうみちゃんにあげました。その花は海のように青く、雪のように輝く、この世の色では表現できないほどキレイな色をしている花でした。「これはね、『水毬の花』って言うんだよ。花言葉はね『あなたに出会えて本当に良かった。この奇跡に感謝します。』っていう意味があるんだよ。僕はうみちゃんのことをこのように思っているんだ。」それに対してうみちゃんはこう言いました。「私も同じことを思っているよ。」それを聞いたなみださんはちょっと嬉しそうでした。こうして、うみちゃんはなみださんからもらった花束を手に家に帰りました。         それから、うみちゃんは虹色リボンのおかげでたくさんの良い友達が出来ました。「うみちゃん、あの魔法使って!」と言われると「いいよ!」と言って金平糖を使って虹をかけ、みんなで逆さ虹の森へと遊びに行くのでした。しかし、なみださんは知っています。うみちゃんが死んでしまったら、虹色リボンは消えてしまうこと、うみちゃんの友達たちは虹色リボンやなみださんたちのことを忘れてしまうこと、でも、うみちゃんの友達たちは心の中でずっとうみちゃんが生きていたという記憶を忘れないでいられることも。

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