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正門での検査待ちで……

正門の前には50人程が並んでいた。人族を含め、種族は様々だ。エルフや妖精族、ドワーフ、猫人族、犬人族などが並んでいた。冒険家と思われる者もいた。


「………」


華晶は黙っていた。やはりどこか複雑なのである。眠っていた華晶にとっては、戦争があったのは10年ちょっと前という感覚なのだ。と言っても長い間眠っていたせいか当時の記憶は曖昧なところが多かった。

敵だった種族が目の前に沢山いる。この時、憎しみが少しでも風化していて良かったと少し思った。当時のままでいれば、おそらく耐えられなかったと確信した。


「早く並ぼうよ!………華晶?どうしたの?」


空気を読まず、やけに静かになった華晶を見て、どうしたのかとメアが聞いた。


「……別に何でもねーよ。ちょっと考え事をしてただけだ」


自分から行くと言っておいて今更あれこれ言うわけにもいかないので、複雑な気持ちになったとかは特に言わないでおいた。


華晶達は列の最後尾に並んで、順番がくるのを待った。因みに、精霊玉は流石に見られてはいけないものなので、ディーの魔法で隠してもらった。正直華晶は、これもバレそうで不安なのである。賊でさえ透視魔法(ヴレポ)が使えるのだ。魔法を防止する為に何かあるとしても不思議ではない。


「おっ、兄ちゃん。妖精族なんて連れているのか?色々と絡まれたりして大変だっただろ」


後ろに並んだ少し大柄な男が華晶達に話しかけてきた。絡まれるというのは、妖精族を狙う者達にということだろう。心配?をしてくれたということは、悪いやつではなさそうだ。


「何よ!まるで私達が邪魔者みたいに!それに、私達は今日一緒になったから誰にも絡まれていないわよ!」


男の言ったことが気に入らなかったようで、メアが男に突っかかった。確かにメア達からすれば、厄介者みたいな言い方だ。

だが、当然男はそんなつもりで言った訳ではない。


「!?そうか、悪いな。別に邪魔者なんて言う気はないんだ。ただ、この国はいい所だと伝えたかったんだ。ここには妖精族を狙う輩なんていないからな」


男はすんなりと謝って、そう言ってくれた。メアとディーに楽しめと言いたかったのだろう。


「ところであんたら、名前はなんて言うんだ?俺はレトラー・トレイド。冒険家だ」


冒険家と冒険者の違いがよく分からないので、メアが聞いた。こういった場面では、メアのコミュニケーション能力が高くて良かったと思える。


「冒険家?冒険者じゃなくて?私は妖精族のメアよ」


「あぁ。ギルドに加入している冒険者のことを冒険家って言うんだ。冒険家はいわゆる職業名みたいなもんだ。……メアか、宜しくな。それにしても、そっちの兄ちゃんと妖精族の子は全く喋らないな」


華晶からしてみれば4000年ぶりに人族に話しかけられたので、内心少し困惑していた。ディーの方は、メアが話していたのでただ聞いていた。なので、話さない訳ではないのである。


「別に喋らないわけじゃないよ。僕の名前はディー。で、こっちが華晶だよ。華晶は少し無口なんだ。あまり気にしないで」


ディーは華晶の気持ちを察して、そういうことにしておいた。のに………


「誰が無口だよ!華晶だ」


と、いきなり声を発した。


「!?元気いいな、宜しくな、華晶」


レトラーはフレンドリーに話しかけるが、華晶の反応はお決まりだ。まだ気持ちの整理が上手くできていないのである。


「いきなり呼び捨てかよ…。俺はお前と仲良くする気はねーからな!構うな、話しかけてくんな!」


あからさまに嫌そうな顔をしてレトラーに向かって怒鳴る。


(人族の国に用はあるが、人族と馴れ合う気は毛頭ねーよ。勢いで名前は名乗ったが…。これっきりだ)


どうやら先程まであった困惑は落ち着いたようだ。だが、やはり憎しみが完全に癒えることはなかった。


「ちょっ、華晶。落ち着いて。ってもう大丈夫なの?」


ディーは華晶を止めて、心配そうに聞いた。

華晶はそれに対して、「何が?」と少し大きな声で不機嫌そうに言い放った。


「はぁ〜。ごめんなさい。華晶は昔、親を賊に殺されてしまって……」


竜人族だから人族を恨んでいるなんて言えないので、そう誤魔化した。これで変には思われないだろう。ディーのこういうところは相変わらずである。


「なんか…デリカシーがなくてすまんな。まぁ、分からないことがあったら何でも聞いてくれ。できる限り力になるよ」


さっきのことも踏まえて謝った。そして、しばらくこの国にいるからと、レトラーが泊まるギルドの場所を国内地図で教えてくれた。


何やかんややっていたら、華晶達の順番がやってきた。

初めに、冒険家ギルドに入っているかを聞かれたので、いいえと答えた。次に持ち物検査。魔法で検査されたが、幸いディーの魔法の方が一枚上手だったらしく、バレずに済んだ。最後に種族の確認。これも特に問題なかった。


これら全てを代表してディーがやってくれた。流石の一言だ。案外すんなりと何事もなく終わったので、拍子抜けである。


並んでから20分後、やっと王都に入ることができた3人。


《レトラーという人族との出会い。この先も沢山の出会いがあるだろう。そう、この王都でも……。》

名前:レトラー・トレイド

性別:男

種族:人族

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