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なんとか解決。残った謎

かなり遅くなりました!

すみません!

それでも読んでいただけると幸いです!

「ふぁ~。おはようございます」

「おはよう!」「おはようございます」


目を覚ましたリズフィー、そしてそれよりも少し前に目を覚ましたメアとディー。

メアとディーが起きた時には既に数人が起床しており、何やら朝食の準備をしている。


何を呑気なと思うかもしれないが、腹が減っては戦はできんということだ。


「華晶さん、まだ帰ってきていないのですね。結局一睡もしていないのでは?」


「さあ?でも、まぁ、華晶なら大丈夫だよ。多分…」


「昨夜から様子がおかしかったけど、何かあったのでしょうか?」


「リズフィーさん大丈夫ですよ。………………僕も詳しくは知りませんが、大体予想がつきます。恐らく今回の件に関係しています。華晶は顔が広いので魔人の知り合いもいるんですよ」


「え?!」


華晶は竜人族の中でもかなり目立っていた。その分他種族との交流も多く、信頼もされていた。魔王エルリアとは昔、数年に1度開かれる魔王の(ワルプルギス)に他種族が招待されたことがあり、その時に出会った。

だから、友人と呼べるのはエルリアだけだが、知り合いの魔王は沢山いる。


リズフィーは華晶たちが魔人と関わりがあったことに驚愕した。華晶は無口であまり他人に興味を示さない人だと思っていたリズフィー。華晶の性格を短い間ながら少し理解していたつもりだったリズフィーは、自分が華晶の性格を軽視していたことに気づき、恥ずかしさと申し訳なさが入り混じった感情でいっぱいになった。


「ま、魔人と…………」


「まあ、今回の魔人の正体が分からない以上、僕には何も言えませんが」


沈黙が続いた。すると突然メアが話し始めた。


「それよりリズフィー、お父さんとお母さんはいいの?」


「まだ目覚めていません。モキューが見てくれています」


「良かったね。無事見つかって」


「ええ!」


満面の笑みを浮かべる。

2人のことをどう皆に説明するか考えながら朝食の手伝いをしに行くリズフィー。


討伐隊の人数はそれなりに多いので、しっかり見ていないと人数が増えたことに気づきにくい。減っていれば必ず誰かが気づくが、増えている場合、"あんな人いたっけ?"というぐらいにしか思わない。しかも、参加者の人数を把握している者はそう多くない。ルージェスはともかく、把握していても気にとめないのは単に関わり合いたくないというだけだ。


その頃の華晶はというと……


(あー!きっつ!やっと見えてきた。……ジョー・ネイル……いればいいんだがな。……その前にディーたちに顔を出しておいたほうがいいか?………どっちにしろ後で説明しなきゃいけねーし、連れて行くか)


と、戻って来た華晶は何事もなかったかのようにリズフィーたちの前に姿を現した。


「!?華晶さん!今までどこに行っていたんですか?!心配したんですよ!昨日だって戻って来たと思ったら何も言わずまたどこかへ行ってしまいましたし!」


怒った顔をして声を荒立てる。親を見つけてくれたことには感謝しているが、それとこれは違う。


「まあまあ、リズフィー。落ち着いて?」


メアがリズフィーを落ち着かせる。そしてディーが事情を聞く。


「華晶、あの後……ていうか、昨夜何があったの?華晶がリズフィーさんの両親を見つけて数時間後に見えた魔力の波、フローラ様の探索魔法(サーチ)だよね?魔人絡みなのは確かだと思うけど」


「さすが察しがいいな、ディー。その事で話がある」


ーーーーー


華晶は昨夜のことをすべて話した。リズフィーの親を見つけるまでの経緯、魔人のこと、魔王エルリアのこと、女神フローラのこと、邪石・魔の石印のこと、ジョー・ネイルのことなど話せるところはすべて話した。


「……今回の件、そんなに大事(おおごと)だったの?」


「ああ、いくらエルリアでもさすがに石印を奪われるなんて思わなかったけどな」


話についていけているのはディーのみ。メアとリズフィーは唖然としている。決して意味が分かっていないわけではないのだ。ただ、話のスケールが壮大で驚いているだけ。


「で、その事なんだが、お前らもついて来てもらえないか?」


「僕はいいけど………誰か残った方がいいんじゃない?リズフィーさんの両親の件もあるし、急に4人もいなくなったらさすがに不自然だよ」


「うん。私はリズフィーと討伐隊にいるよ。だからディーは華晶と行ってきたら?ていうか、そのジョー・ネイルっていう人も連れていかなきゃいけないんだよね?私たちが適当に言っておくから安心して行ってきなよ」


「悪いな、そうする」


華晶はそう言ってディーと共にジョーがいる、討伐隊の前衛側に向かった。そろそろ出発するところだ。


前衛ーーー


「ネイルさん、準備が整いました。前衛側はいつでも出発出来ます!」


「ああ、了解した」


「にしてもさすがだ。ほとんど前衛はネイルさん達が指揮している。ほんと心強いよな!」


「ああ、ルージェスさんもかなり心強いし、このまま何事もなく終わりそうだな」


ジョー・ネイルはかなりの信頼を得ている模様。それこそ、彼のチームは全員がランクB+ながらも、チームとしてはランクA以上の力に相当するからだ。


「華晶、なんか話しかけづらくない?」


「同感だ。ああいうタイプは好きじゃない」


前衛に来たものの、多くの人に囲まれているジョー・ネイル他メンバーを見てそんな雰囲気を感じたディーと華晶。


「あの人達で合ってるの?」


「間違いないはずだ。フローラの探索魔法(サーチ)だからな。ま、絶対とは言えないが……」


「どうするの?」


「……………周りから認識されなくなる認識阻害魔術(アエラス)……なら使えそうだな」


そう言ってディーに出来ないか聞く。魔術も得意とする竜人族は、古くからあらゆる魔術を扱ってきたので多くの術が使える。魔術は魔力を必要とせず、術式さえ知っていればどんな種族でも扱うことが出来る。

つまり今の華晶でも扱えるわけだが………


華晶がディーに出来ないかを聞いたのは、書くものと紙が手元にないため、魔法でその術式を展開できないか聞いたのだ。小枝で地面に術を彫ってもいいが、それでは様々なリスクを伴うし、魔法で展開した方が解除したい時に解除できる。


「いいけど、僕は魔術についてあんまり詳しくないよ?教えてくれるなら展開するよ」


「ああ、そのつもりだ」


そう言って木の茂みに隠れて華晶は術式を教え、ディーはその術式を魔法で展開し始めた。


文字が螺旋状に並んだ歪な形の術式が出来上がった。


「へー、あまり見ない形式だね」


「知名度が低くてあまり使われてねーからな。今はどうか知らないが、認識阻害魔法(アエーラ)の方が知られてるんじゃねーか?」


単純な魔術だ。

発動条件は対象の人の容姿を思い浮かべながら、術式の真中に名前をフルネームで書くだけ。あとは発動したいタイミングで"アエラス"と口にする。複数人の場合は1人ずつ思い浮かべながら名前を書いていく。


メンバー全員の名前を"たまたま"知っていた華晶が次々順々に名前を言い、ディーが書く。

全ての名前が書き終わり、いつでも発動できる状態になったところで、早速華晶は"アエラス"と口にした。


すると、早速周りはジョー達をまるで元からいなかったかのように認識しなくなった。術者であるディーと華晶にはその効果はない。

突然の変化に不信感を持った5人は慌てながら話し合っていた。


「おい!なんだよこれ!なんでみんな俺らが見えてないんだよ!?」


「いえ、見えていないと言うよりこの反応…認識されていないのでは?恐らく認識阻害魔法(アエーラ)です」



「一体誰が……」


認識阻害魔術よりも魔法の方が一般的だ。だからと言って効果に大差はない。手順が簡単で魔力を使うのが魔法であり、逆に手順は面倒だが魔力なしで誰でも扱えるのが魔術だ。だから勘違いした。

混乱しているところで華晶とディーが5人の前に姿を現した。華晶が何かしたのだと直感で察した5人は、少しばかりの敵意を華晶に向ける。


華晶はまったく気にせずに"来い"と、一言だけ発して周りに気づかれないよう討伐隊から離れる。


不信感は消えないものの、このままにするわけにもいかないので恐る恐る5人は華晶について行った。


少し離れたところで立ち止まって、本題に入る華晶。


「なあ、1つ質問に答えてもらう。お前ら、魔の石印を持ってるよな?」


率直に聞く。急な動揺で反応が顔に出やすくなるからだ。"魔の石印"と言った瞬間、5人は一瞬ピクッと反応した。その反応を見逃さなかった華晶は魔の石印と分かった上で盗んだことを悟った。


「………何故それを君が知ってるんだ?」


ジョーが少し焦ったかのように、警戒心MAXで聞いてくる。

冷汗が5人の背筋を凍させる。


「………持ってるんだな。なら着いてこい。お前らに会わせたい奴がいる。YES以外の返答は認めねー」


「!そ、そんな急に言われて"はい"なんて言えるわけないでしょ?!」


「なら何故魔の石印だと分かっていながら盗んだ?魔人、魔王の逆鱗に触れることは分かっていただろ?」


それを聞いて黙り込む。しかしその顔は、まるでこうなるとは思っていなかったと言うように恐怖、焦り、苦が混ざったような絶望の顔をしていた。


その顔を華晶は知っていた。何かに騙され、焦ってどうしようと悩む顔。

そう単純な話ではないことを悟った華晶は、さらに彼らに問う。


「黙ってないで答えろよ。こっちだって暇じゃねーんだ」


すると1人の男が口を開いた。ルベリア・ポルス。今更だが、ジョー・ネイルのチーム後衛担当の魔道士だ。


「…っ………俺らは…ただ軽い気持ちで…、調子に乗った…」


それに同意するように周りは黙り込み、後悔するように顔を顰める。


「軽い気持ち?調子に乗る?魔人と魔王を相手にか?馬鹿にも程があるだろ」


怒っている。いや、呆れているのか。力の差も分からず魔王のものに手を出すなど、普通では考えられない。


「違う!知らなかったんだ!魔の石印だと!俺らはただ強力な力を持つ石を取ってくるという任務で!知ったのはもう取った後だったんだ!」


表情でなんとなく察しはついていたが、まさかこんな都合のいいことがあるのかと、疑いを通り越して馬鹿馬鹿しく思えてきた華晶。


「それがお前らの言い分か?それでわざわざ魔王城に?しかも魔物の感知能力を阻害することまで考えて?ご苦労なことだな」


「……最初は引き下がろうかとも思ったわ!そこを見た瞬間、ただの城ではないとわかったから……報酬が高かったわけも…」


ジグが補足をする。

エルリアの城は確かに魔王城である。しかし、警備は他の魔王に比べてとても緩いのだ。普段なら他者の侵入を許さないが、その日はエルリアが不在で、魔人たちにも暇を出していたのでほぼ無人状態だった。

だからこそ人族でも容易く入ることが出来たと言える。


「けどまさか魔王城だとは思わないじゃない!」


「なるほど。妙な気は感じられど、最近波に乗っていたし、無人だったから調子に乗って魔王城とも知らず忍び込み盗んだのか。馬鹿だな。どうやって魔の石印を持つことが出来た?」


「依頼を受ける時に手紙と一緒に送られてきたんだ。傷つけない為の手袋と袋を」


こんなことありえるのか。ありえる。エルリアだからこそありえるのだ。他の魔王の場合はどう考えてもありえないことだ。

エルリアにも非があるのではと思ったディー。


傷つけない為の手袋と袋が魔物の感知能力を阻害し、人族にも持てるようにしたとすぐに分かった。だが、そこで更に謎がうまれる一体誰がこんな依頼をしたのだろうと。


「まあいい。どっちにしろついて来てもらわなきゃいけねーしな。もう一度ここに来たということはその魔の石印、返しに行くんだろ?」


「え、あ、ああ、はい」


ぽかんと唖然した表情を見せるジョー一行。問い詰められ、なにかされると思っていたからか気が抜けたのだ。華晶が向けた一瞬の殺気はまさにそんなものだった。

だが、エルリアとこの一行の状況があまりにも馬鹿馬鹿しくて、殺気も出す気になれなかった。

馬鹿馬鹿とは言うが、わざわざ返すために再び戻って来るという勇気は評価してもいいと同時に思った。


生命の泉の先にある野原、アグロス。


「ここは……」

「こんな場所、あったんだ……」


緑溢れる草原。鳥の囀り、草木が揺れる音。戦いとはかけ離れた平和な地だ。


「遅かったね。結構待ったんだけど?」


「連れてきたんだ。文句はねーだろ?まあ、あとはお前らに任せる」


そうクロスに伝えたあと、耳打ちをして少し離れたところでディーと共に様子を見る。

クロスとライラは一行に目を向け、ジョーの手に握られた黒い袋を見つめる。そして石印を指さしながらクロスが言った。


「それ、返してくれない?僕らの王が大変お困りなんだ」


「ま、魔人?!……は、ははい」


魔人を近くで見るのは初めてのようで、緊張と恐怖から足が震えていた。5人の顔は今までにないほど真っ青で、今にも倒れ込みそうだ。


(そもそもエルリアの奴、本拠地の魔王城になんの対策もなく出かけるなんて何考えてるんだか。仮にも魔王かよ。ある意味自業自得だな)


「これを機に警戒態勢を強化するべきだ。もう少し危機感を持てとあいつに言っておけ」


「そうだねー。まあ、僕からすれば別に戻ってきたわけだし、今回はエルリア様にも非があるわけだから不問でいいと思うけどね。今回の騒動、エルリア様にバレたらそれなりにまずいけど、そもそもは彼女の危機管理不足のせいでもあるわけだし」


それを聞いて一同は安心して息をついた。華晶はクロスの好戦的な性格を知っていたため、戦闘にならなかったことに驚きはしたが、一晩中走り回った疲れがどんと押し寄せてきたのでありがたいと思いながら腰を下ろした。


一方先程から一言も話さないディーとライラはその様子をまるでテレビでも見ているかのように黙って見ていた。

が、ここでディーが口を開いた。


「1ついいかな?華晶」


「なんだ?」


「なんで石印を取ってくるなんていう依頼があったのかが気になって。だって魔の石印を取ってくるなんて本来なら国家クラスの依頼だよ?それどころか下手すれば魔王や魔人との戦争になりかねない代物。こんな誰でも受けられるギルドにクエストという形で普通依頼する?そもそもなんで魔の石印を欲しがってるんだろ?」


そう華晶を含め全員が疑問に思っていた事だ。

魔の石印は強力な力を秘めてはいるが、持ち主の魔王とその眷属にしか制御できない。

魔王を敵にまわすと分かっていながらそれをあえて狙う者はいない。


「確かに気になるな。わざわざクエストという形で冒険家に行かせたのは恐らく失敗してもしなくても自分は罪に問われねーからだろうな。そもそも魔王のものをこうも堂々と」


「わざとエルリア様の物を狙った可能性も否定できないんだよねー。彼女の性格を考えれば幾ら魔の石印でも他の魔王様よりは簡単に手に入るから。久しぶりだよ、こんな真っ向から喧嘩を売られたのは」


クロスはニヤニヤとなにやら楽しげに笑う。今後のことはお互いこれ以上関わらないということで方が着いた。


「最後に少しお聞きします。あなた方の依頼主の情報はありますか?」


ライラが5人にそう問う。


「い、いいえ!全て手紙だったので……!」


見るに堪えない。初めて会った時のような少し偉そうだけど頼りになっていたらしい人物たちには見えない。

5人はライラが''そうですか"と言い終わるとのそのそとげっそりとした顔でどこかへ行ってしまった。あの調子だともう討伐隊へは戻らないだろう。


「このことは僕達の問題だから僕達で解決しなくちゃならない。まあ、でもなんか分かったら教えて。じゃあまたね華晶、ディー」


クロスはそう言い残して、ライラは一礼して2人は魔王城へ帰って行った。


「相変わらずクロスは自由だね」


「はぁ~疲れる……。ディー、念の為騒動にならねーように魔術はそのまま発動させといてくれ。終わったら解く」


「別にいいよ。戻ろっか。久しぶりに退屈しなくて済んだし、やっぱり華晶達といると暇を持て余す時間もないよ。根本的なことは解決してないけどね」


そうして2人はもといた討伐隊へと帰って行った。だが、一夜にして討伐隊の意味がなくなったので、恐らく何もすることなく終わるだろう。邪石が回収された以上、フローラの魔力で邪気が祓われ、凶暴化した魔物はもういないし邪石の痕跡も消えている。

後はただの様子見だ。

副作用あと4日

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