待合室にて
メアとディーは登録する為に受付のカウンターへ向かった。華晶とメアはA-3待合室で待っていてほしいと言われたので、先にそこへ向かった。おそらく集合場所だろう。そこには14人の、人族に限らず様々な種族が集まっていた。
「わーすごい…。これだけの冒険家が参加するんですね。20人以上だからもっと増えるのかな。登録したのは7歳の頃でしたけど、やるのは初めてなので少し緊張します」
(お母様とお父様大丈夫かな……。今からくよくよしていても何も始まらないよね?……大丈夫。きっと生きてる。とりあえず今は皆の足を引っ張らないようにしなきゃ)
「おい!あれ、殺闇のライドじゃないか?奥にいるのはジョー・ネイルのチームじゃないか?すげー」
「あいつらも参加するのか?」
待合室にいた冒険家達が騒ぎ出した。どうやら有名人がいるようだ。
殺闇のライドはランクAの冒険家であり、ジョー・ネイルのチームは全員ランクB+の冒険家だ。冒険家のランクは全部で12段。上からSS,S+,S,A+,A,B+,B,C,D,E,F,Gの12段。最初は皆Gからで、経験を積んでいけばランクは上がるが、ランクCからは実力が全てだ。なのでG~Dまでは経験さえ積めば直ぐに上がることができる。
「………ま、確かに腕はたつかもしれねーな、まとっている空気が他と明らかに違う。特にあのライドとかいうやつ……ランクAとは思えねーな。もっと上でもいいと思うが……まあ、ランクAの強さの基準が分からないからなんとも言えねーか」
ライドに少し興味を持つ華晶。竜人というだけあって少し闘争心が強いところがある。そろそろ待合室に来てから10分が経つ。
「あ、いた。華晶!リズフィー!」
入り口から聞こえてきたのはメアの声だ。例の大男とディーと一緒にいる。皆が騒いでいるのでどうしたのかとディーが聞く。
「あー、有名人がいるらしい。それで色々騒いでるんだ」
「へー」
野次馬に目を向ける。メアが野次馬に潜り込もうとしているのでそれを止めに行く華晶。あと少しで捕まえられるというところで誰かにぶつかった。
「っ~ー、悪い……!?」
ぶつかった反動で思わず目をつぶってしまったが、目を開け、尻餅をついている相手に手を差し伸べようとした。だが、手は時間が止まったように動かなかった。目の前にいるのはハーフエルフだった。
「私の方こそごめんなさい!お怪我はありませんか?」
彼女は立ち上がり、心配そうに華晶のことを見つめる。リズフィーの影響で少し慣れたと思っていたが、華晶の体は硬直していた。戦争に参加していたエルフの顔を一部しか華晶は知らない。彼女もその場にいたのではと反射的に思ってしまったのだ。
「こっちは何ともない。それよりお前は大丈夫なのか?思いっきり尻餅ついてただろ」
(……大丈夫。こいつは違う。よく見ればハーフエルフだ。あの戦争にハーフエルフは参加していないと聞いてる。それにハーフエルフの寿命は4000年もねー。なら白だ)
尻餅という言葉に反応したのか、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにした。
「だ、大丈夫です!」
「そうか」
野次馬の中に入って行ったメアが疲れた様子で帰ってきた。華晶とハーフエルフの少女を見るなり、
「え……….、ら、華晶が…、エルフと…………キヤヤャャャー!!」
発狂してディーのところまで去って行った。
「なんだったんだ?」
同時に参加受付終了の合図がかかり、騒がしかった空気が一気に静けさへ変わった。途端、皆の表情が変わった。ディー達といた大男が前に出て説明し始めた。
「俺はルージェス・ダリアンだ。まずはここにいる皆に確認したいことがある。この依頼はB+以上の魔物討伐と凶暴化した魔物の出現の原因調査だ。最悪死に至る。それでも参加するか?」
ルージェスが最後の確認を取る。勿論それは、後には引けないからだ。フローラの森が迷いの森と呼ばれているのには理由がある。
本来フローラとは花の女神。彼女自身は決して悪い存在では無い。
だが、フローラの森には多種多様な植物があり、薬草になるものもあれば毒草もある。
それだけではない。触れれば麻痺させる植物、幻覚を見せる植物、刺されば石化させる植物、肉食植物などなど恐ろしい植物も沢山ある。
おまけに高ランクの魔物、魔獣もいるため、1度入ったら戻って来れないかもしれないということでこの別名がつけられた。他にも理由はいくつかある。
誰一人と引く者はいなかった。それもそうだろう。先日魔人が出たという場所に行くのに半端な覚悟で来る者はいない。
勿論フローラの森の恐怖も知っているからこそでもある。
「分かった。全員参加でいいな。報酬の話はもう知ってるな?………。では、これからフローラの森へ向かう。各自最後の準備をしておくように。集合は今から30分後、正門前の広場で。遅れぬように」
この場はひとまず解散となった。
華晶、リズフィー、ティア、メアはギルドの外に出て話し合った。
「最後の準備って何をすればいいんでしょうか?食材かな?」
リズフィーが最初に口を開いた。
「任せると言ったところだな。俺は別にいい。フローラの森なら基本なんでもある。必要なら自分で採取する」
「流石華晶。……僕はどちらでも構いませんよ?リズフィーさんが決めてください。そもそも僕達、お金を持っていませんから」
「なら、水と少しの食料を買いに行ってもいいですか?もしもの時のために」
「いいですよ」
華晶達は食料を買いに店へ入った。そこそこ大きな店で、食べ物だけでなく日用品も売っていた。
リズフィーはバックに入る程の食料と水を買う。
「銅貨3枚と小銅貨6枚です」
リズフィーはお金を出して払い終わった後、バックにしまう。
「終わったか?」
「はい!」
「んじゃ、行くぞ」
準備も整い、正門広場へ向かう。
すでにほとんどの参加者がその場に集まっていた。
(見たところざっと35人くらいか。思ったより多いな。………不思議な気分だ。敵対していた種族と一緒になって戦うのは)
「ーーぃ、らんーー、華晶!!」
「?!」
「どうしたのさ、最近心ここに在らずって顔ばっりしてるよ。B+の強さがどれだけのものかまだ分かってないんだから気ー抜かないでよね!」
「あ、ああ。」
名前:ライド・グレゴ二ー
性別:男
種族:人族
ランク:A?
名前:ジョー・ネイル
性別:男
種族:人族
ランク:B+(チーム)
名前:ルージェス・ダリアン
性別:男
種族:人族
ランク:A+