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リズフィーの家にGO➡︎

「あーー!いたー!!やっと見つけたよー!勝手にあっちこっち行かないでよ!まったく!自分で離れるなって言ったのに!」


かなりお怒りの様子のメア。どうやら10分程探し回っていたようだ。「広いんだから勝手に歩き回らないでよね!」と説教をする。

まさかメアに説教をされる日が来るとは思わなかった華晶。


メアが華晶に説教をする中、リズフィーが口を開いた。


「ごめんなさい。私が華晶さんに話しかけて引き止めてしまったんです。お連れの方がいるとは知らず…すみm…」


「謝らなくていい。俺が勝手に動いたのは事実だし、話に乗ったのも俺自身だ」


華晶はリズフィーの言葉を遮るように重ねてそう言った。何度も謝られると逆に罪悪感を感じるからだ。


(よく謝るやつだな。何故そうも簡単に謝るのか分からない。……だが、今回は助かった。メアのやつ、1度言うとしつこいからな)


やけに静かになったと思ってメアの方に目を向けると、唖然と目を丸くしていた。そしてその目線の先にはリズフィーがいた。


「えっ、あのー……私に…なにか?」


自分のことをじーと見つめてくるメアが気になって聞いた。


(え、なに?私なにか悪いこと言った?!もしかして私が華晶さんを引き止めてしまったことに怒ってる?え、やっぱりもう1回しっかり謝った方がいいのかな?!)


そんなリズフィーの内心は焦っていた。

ディーが「どうしたの」とメアに問いたところ、やっと口を開いた。


「ディー、華晶が1人で普通に人族の女の子と話してる!これは一大事だよ!今日台風でもくるのかな?!雨の代わりに槍が降るかも!どうしよう?!台風と槍のなかで野宿だよ!」


リズフィーの内心よりもメアの方が重症だった。

ふざけて言っているわけではない。華晶は人族を嫌っているが、その華晶が人族の女の子と一緒にいて、しかもまともに会話をするなど、それはもう予想だにしなかっただろう。


ディーも気づいたようで、小声で「珍しいこともあるもんだね」と呟いた。


「こねーし降らねーよ!お前らいい加減にろ!………まぁ、悪かったな。勝手に動いたのは」


珍しく素直に謝る華晶を見て、メアは華晶のでこに手をあてて、「熱でもあるんじゃないの?」と一言。

これには流石にキレたようで、華晶は黒いオーラを放ちながらメアのことを鷲掴んで、"何が言いたい?"というがんを飛ばした。


「ごめんなさいごめんなさい!もう言わないから!だから離してー!ギブーギブー!だって珍しかったんだもん!華晶が人族の女の子と話すなんて!」


「メア、静かに!ここ図書館だよ」


華晶から身の毛がよだつ黒いオーラを感じたメアは、冷や汗をかきらがら大声で必死に謝ると、ディーから注意された。"なんで私が悪いみたいになってるのよ!"と内心で思っていたメアであった。


「……騒がしくてすみません。申し遅れました。僕は妖精族のディーと申します。貴方は?」


ディーは華晶とメアを放って置いてリズフィーの前に立ち、お辞儀をして種族と名前を名乗った。ディーは基本的にメア以外の女性には紳士的なのだ。

動揺していたリズフィーもディーの言葉で落ち着きを取り戻し、名前を名乗った。


「ご丁寧にありがとうございます。リズフィー・フローリアと申します。……あ、あのー、あのままでよろしいのですか?」


ディーの後ろでもめている2人を見て止めなくてもいいのかと聞くリズフィー。


「そうですね。大声は出していませんが、そろそろ他の方に迷惑なので止めましょう」


華晶とメアのもとに飛んで行き、「そんなことしてる場合じゃないでしょ!」とその一言で華晶とメアの絡み合いを止めた。


「そうだよ華晶!戦争について載ってる本の場所と、この時代の知識を少しだけど教えてもらったよ!本の場所は2階の奥から2番目の棚だって。得られた情報については後でゆっくり話すよ!」


メアが図書館司書から聞いてきたことを華晶に伝えた。華晶は「ああ。ありがとな」と二人に言った。本当はリズフィーから本の場所は教えてもらったので知っていたが、それを言うのは悪いと思い、黙っておいた。


「ん?ところで貴方は誰?スルーしちゃったけど名前を聞いてなかったよね。私はメアよ。よろしく!」


ディーから一歩遅れての名乗りだったが、忘れてはいない。

リズフィーは慌てて同じく名前を名乗り、ある提案をした。


「あ、はい。リズフィー・フローリアです。…………あのー…先程野宿と聞こえてきたのですが…もしかして旅の方なのですか?もし宿がとれていないのでしたら、よければ私の家に来ませんか?空き部屋があるので。嫌でなければですが…」


少し照れくさそうに言うリズフィー。

その話に1番飛びついたのは、フカフカのベットで寝ることを1番楽しみにしていたメアだった。


「いいの?!私達お金持ってないよ?それでもいいの?!お金なくてもいいなら是非泊まらせて!いや、泊まらせて下さい!」


「メア?」


「あ…」


図書館であることを忘れてまた騒ぐメア。

ディーは"ここは何処だったっけ?"と言葉にはせず疑問形でメアの名前を口にして問うが、笑顔であるはずの顔はメアには鬼の顔に見えていた。

メアの必死さに圧倒されて少し戸惑いつつ、リズフィーは「大丈夫ですよ」とOKを出した。その言葉と同時に小声で喜ぶメア。


「本当によろしいのですか?」


ディーの問いかけにリズフィーは迷いなく「はい」と答えた。


その後も色々と話していると、図書館の閉館時間のアナウンスが流れた。この図書館は朝5時から17時30分までだ。華晶達はまだほぼ何もできていない。


「は?!もう閉館時間かよ!まだ何もしてねーんだぞ?!」


アナウンスの途中華晶が時計を見ながら少し大きめに怒鳴った。そんな言葉を聞いたリズフィーは、横から華晶に言った。


「朝早くからやっているので終わりも早いんですよ。でも大丈夫です。華晶さんが気になっている滅びの戦争についての本は家にもありますから。その他にも本は沢山あるのでお貸ししますよ。ここも年中無休で開いていますし」


家に泊まると決まった時点で必要ならば貸そうと思っていた。

リズフィーの趣味は読書がメインであるため、歴史、地理、古代・伝説関連から小説まであらゆる本が揃っている。


華晶、メア、ディー、リズフィーは図書館を出て、まっすぐリズフィーの家に向かった。


「リズフィーの家ってどういう感じなの?って言うか、まだ人族の中でも若い方だと思うけど、親とかって大丈夫なの?」


リズフィーの年齢は16歳。勿論見た目も10代だ。長く生きる種族にとって年齢や時代などはあまり頓着しない。数えることが面倒になってくるのだ。親がいるのに勝手に行ってもいいのかとメアは聞いた。


「はい。大丈夫だと思います。今日、両親とも仕事で帰って来ないので。どんなところ、ですか……。………あ、もう着きます。」


図書館から徒歩約10分のところにリズフィーの家はあった。そしてそのリズフィーの家を見てメアは息を飲んだ。


豪邸と言える大きさの家。門があり、庭には噴水があった。ええー!!という驚きの叫びをあげるメア。


「貴族、か」


「そうみたいだね」


ディーと華晶は相変わらず落ち着いている。


一方リズフィーの方は

「はい。王都にある別邸です。でも、気にしないで自由に使って下さい。お父様もお母様も明後日まで帰って来ませんので。使用人には私から説明しておきます」と言いながら門を開けて中へと入った。扉の前まで来ると使用人がリズフィーの帰りに気づいたようで、ドアを開けた。リズフィーはそれと同時に華晶達のことを説明して、部屋まで案内した。


「ここが皆さんの部屋です。どうぞ自由に使って下さい。あ、あと華晶さん、本は1階の扉の右側3番目の部屋にあります。出入り自由なのでいつ読んでくれても構いませんよ。私の部屋はこの部屋の左隣ですので、困った時は聞きに来てください。では、夕食ができ次第また声をかけますね」


リズフィーはドアを閉めて自分の部屋へと入っていった。


自分の部屋に戻った後、メアはベットにダイブして足をばたつかせながら幸せそうな顔をしている。

華晶とディーは立ち話をしていた。


「まさか貴族の家に泊まることが出来るなんてねー。野宿かと思ってたからこれは流石に予想外だよ。ところで、ずっと思ってたんだけど…華晶、普通にリズフィーさんと話せてたけど大丈夫だったの?人族のこと憎んでるんじゃないの?何があったのさ?」


やはりディーも華晶の変わりようにはずっと気になっていたようだ。


「野宿って言っても普段からあまり変わらねー気がするが…。別になんにもねーよ。水槞が昔言ってたことをさっき思い出したってだけだ。中途半端な感情に流されるなって言葉。俺、以外とあの言葉気に入っててな。んで、今生きる人族は全員あの滅びの戦争には関係ないってな。俺はもう半端な感情のまま行動するのはやめたんだよ。あとは…リズフィーだったか?少し気に入っただけだ」


図書館で思ったことをディーにそのまま伝えた。

そして自分がどこまで感情を制御できるか、抑えきれるのか試したくなった。


「…あの短時間でほんと何があったんだか…………。滅びの戦争か。あの戦争のことを人族はそう言うんだね。因みに少し確認したいんだけど、瀧愁たちを探すという目的は変わらないよね?」


ディーは華晶の意志確認をした。無論何となく答えは分かっていた。


「探すのは瀧愁達だけじゃないが…変わるかよ。それだけは絶対に変わらねー。それに、半端な感情に流されないとは言ったが、それと憎んでいない、恨んでいないは別だ。俺が憎むことをやめたのはあの戦争と直接関わりがないやつだけだ。俺らを騙した国ラストラ王国と滅びの戦争に直接参加していたやつは許さねー。まぁ、やめたってだけで感情がそれについていけるかどうかは分からねーけどな」


感情と意思は別物である。どんなに意思で感情に抗おうと抑えきれない感情というものはある。それこそ自分の意思とは真逆なものであってもだ。

ディーは少し考えて矛盾していると疑問そうな顔をして言った。


「今のラストラ王国は戦争と直接関わりないんじゃないかな?」


その通りである。ラストラ王国は人族の国。滅びの戦争時代にいた人族はもうこの時代にはいない。故に直接関係はない。だが華晶は許す許さない以前に、ある制度が気になっていた。


「……あの国には奴隷制度がある。奴隷制度は国にかなりの利益をもたらしてるからな。なくせばそれらは崩れる。人族に直接危害を与える気はない。あの国がなくなれさえすればそれでいい。だが、この判断は見てから決める。国を残す意味があるようなら残す」


華晶が言いたいことを何となくだが悟ったディーは苦笑いをして言った。


「相変わらずだなぁ〜。さっきみたいに素直に言えばいいのに。まぁ、それも本当だとは思うけど、奴隷にされている者達を解放してあげたいって言いt「んなわけねーだろ!」」


そんなディーの言葉を途中で完全否定し、精霊玉だけを持って部屋を出ようとする華晶。


「何処に行くの?精霊玉なんて大事なものを持って」


華晶がドアノブに手をかけたところでディーが聞いた。


「大事なものだからだ。これだけは肌身離さず持っておく。…ちょっと1階の本部屋に行ってくるわ。図書館じゃ何も調べられなかったからな。いつまでもここにいるわけにもいかねーから、得られた情報から次に行く目的地を決めてーし…」


華晶はそう言い残して部屋を出て行った。

一瞬出て行った後ろ姿が何となくどこか寂しそうに思えたディーだが、メアの騒ぎ声でそれは消し飛んだ。


(まったく……メアときたらいっつも呑気だなー。………華晶、変わったとは言ったけど、やっぱり性格はそう簡単に変わるものじゃないか。ひねくれているし、なんでも自分だけで背負い込もうとする。考え方は少し変わったみたいだけど、性格は昔と全然変わってない)


その頃華晶は本部屋へ向かっていた。


(人族の家に来るなんてのは初めてだな。これからどうするっかなー。今のところほとんど瀧愁達の手がかりはねーし。それどころか他の竜人族(なかま)の手がかりも…。本部屋になにか手がかりになりそうな本があるといいが….)


「……必ず探し出す!」


自身にしか聞こえないくらい小声でボソリと言った。"強い思いを口に出す"そう先生に小さい頃から教えられてきたのでその癖が出た。先生とは華晶の師匠のようなものだ。瀧愁、水槞、楸樂、梅寵もまた、同じ先生に教わった。この5人は友達同士でもあるが、家族のように一緒に育った。一緒にいる時間で言うと誰よりも長い。故に華晶は再び会うことを望む。この先、この広い世界で会えるかどうかも分からないが、探さずにはいられない華晶であった。

リズフィーの家は侯爵家です。

母親は副騎士団長 父親は騎士団長。今は魔物の討伐に行っています。

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