冒険家ギルドにて冒険家に
(すんなりと入れたな。心配して損した。)
華晶は検査が甘過ぎると思いながらも、甘くて良かったと思った。
「すぅっごーーい!!こんな国初めて見た!噴水に、豊かな自然溢れる道。ここは天国だよ!」
確かに綺麗で賑やかな場所ではあるが、メアの反応は大げさ過ぎである。
王都に入ると、目の前には大きな噴水があり、広場になっていた。広場や道の地面は白いレンガが敷き詰められ、花や緑でいっぱいであり、平和の象徴である白鳩や蝶などがあちらこちらにいる。全体的に白いので、まぁ、人によっては天国に見えることもなくはない。
「確かに。前来た時とは比べものにならないほど綺麗になってるね。長い年月が経ったとはいえ、ここまで変わるものなんだね」
感動を覚えたメアとディー。華晶もまた、人族はかなり変わったと聞いていたが、"ここまで変わっていたとは"とディーと同じことに驚いていた。
「まずは……冒険家ギルドに行くぞ」
早速目的を果たす為に動こうとした華晶。
……なのだが、
メアのテンションが上がりすぎて四方八方飛び回っていたのを、落ち着くまで待つことにした華晶とディーだった。
待っている時、華晶とディーはギルドの場所と図書館の場所を、広場にある地図で確認した。
~30分後~
30分経っても興奮しっぱなしのメアをディーが物理攻撃で止めた。これ以上遅くなるわけにもいかない。王都でやることは山ほどあるのだから。
「まさか30分経っても落ち着かねーなんて思わなかったな。かなり時間を無駄にした。遊びに来たわけじゃねーって言っただろ!」
"まったく"と言いながら、華晶はディーにギルドの場所を案内してもらった。ディーは先程レトラーが教えてくれたギルドに案内した。レトラーの話をしっかり聞いていたのは、ディーだけだった。
「綺麗な道。……僕としてはこの国に来てよかったと思うよ。新しいものが見られた。華晶もそう思わない?」
ディーは華晶にこの王都についてどう思うか聞いた。最初は全く関心がなさそうだった華晶が辺りを見渡しているので、興味本意で聞いてみたくなったという。
「まぁ、悪くはねーな。俺にとって居心地がいい場所ではないが……。随分と変わるものだな。国も、人族も。文明は残りつつもパッと見昔の面影がほとんどなくなってる」
「………あまり見てると調子が狂うな」
ボソッと小さくそう呟いた。
華晶は時の流れを感じた。自分が眠っていた時、他種族……とは言っても、今のところ見たのはこの人族の国の様子だけだが、こんなにも大きく変わっていたのかと。
4000年。竜人族にとっては長くもないが、決して短くもない。見て思う。"友である瀧愁達も変わってしまってはいないか"と。これだけ世の中が変わっているのだから、皆が変わってしまっていてもおかしくはない。そんなマイナスなのかも分からない思考が華晶の脳内を横切る。
「着いたよ、華晶。………?」
ディーが着いたと言っても、華晶の反応はなかった。振り返って華晶を見てみると、心ここに在らずの状態だった。ディーは大声で華晶の名前を呼んだ。
「華晶!………華晶ってば!」
「ん?」
「ん?じゃないよ!大丈夫?ぼーとしてたみたいだけど…。なんか最近、"大丈夫?"って言う回数が増えた気がする。…着いたよ。ここがレトラーが言ってた冒険家ギルドだよ」
ディーは華晶の先程までの状態を心配しながらも着いたと報告した。最近、不安と心配ことばかりである。
「あぁ、案内ありがとな」
(まずいな。森を出てから心情が不安定だ。副作用に関係はねー、よな……?久しぶりだからか?考え過ぎもよくねーな、どんどんドツボにはまっていく)
華晶達はギルドの中へ入って行った。
ギルド内には目の先に大きな受付カウンターがあり、奥は食事屋になっていた。このギルドは王都1大きなギルド。中も外も立派な建物だ。
早速華晶は受付カウンターに行き、冒険家になりたいと申し出た。登録方法を教えてくれた後、名前、年齢、種族、称号、ランクを登録。登録の際、称号は"駆け出しの冒険家"、ランクは"G"と決まっているらしい。各場所のギルドには必ず更新用の機械があるらしく、依頼が終わったらそこで更新するようだ。
勿論年齢と種族は誤魔化している。法律上では勿論違法である。
登録が終わった華晶は、メアとディー、2人と合流した。するとメアが目を光らせながら…
「登録終わった?これから何処に行く?仕事する?」
と聞いてきたが、その前に図書館へ行きたかった。目的は言うまでもなく情報収集だ。
王都に入る前にも行くと言ってあったが、この様子だと浮かれて完全に忘れているようだ。
「いや、図書館が先だ。依頼仕事はまた明日にする。まあ、嫌でもやらねーと金が入らねーからな。夕食は昼にとった山菜。寝所は別に何処でもいいだろ?」
何処でもいいとはどういうことなのだろうか。メアは「まさか」と言いながらディーの方を見ると、ディーは仕方がないという顔で「多分…そのまさかだよ」と答えた。まさかというのは、つまり宿無しで寝るということだ。
「行くぞ」
2人の様子に気づいていない華晶。
3人はギルドを出た。
華晶はあまり気にしていないようだが、王都で野宿というのは少し抵抗があるメアとディー。メアは楽しみにしていた事がひとつ減り、半泣きの状態になっていた。
《これから行くのは図書館。そこで色々なことを知る。そして新たな出会いも。だが……》
ギルド登録証(身分証明書)
名前:華晶
年齢:16歲(偽)
種族:人族(偽)
称号:駆け出しの冒険家
ランク:G