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その一 帰り道に轢かれました。

いわゆる世界観の説明的なアレです。苦手な方は飛ばしてください。

「――でさ、明日俺彼女とデートなんだよねー。マジ楽しみだわ」


 学校の帰り道。俺は隣で色恋の自慢話をしている友人の話を適当に相槌を打ちながら聞き流していた。今となってはもう少しきちんと話しておいた方がよかったと後悔しているが。


「そりゃよかったな……まったく、なんなんだよ。俺への嫌がらせか? 彼女が出来たのなんのってよ……」


「いやいや、純粋に楽しみで仕方ないんだよ! ハルもなんか自慢したい時ってあるだろ?テストで順位がよかったときとか」


 さっきこいつが言ったように俺の名前はハル。草創晴臣くさわけはるおみという。正直に言ってこんな読みにくい苗字の家に生まれたくはなかった。


「別にそうは思わないけどな――っと、悪い。俺こっちだから」


「言われなくても分かってるってまた明日な、ハル」


 そうして友人と別れて俺はいつも通りの帰り道をいつも通り一人で歩く。そうして、いつも渡る横断歩道に差し掛かり、いつものように渡り始めたとき。いつも通りではないことが起こった。俺の真横から巨大な鉄の塊が突っ込んで来たのだ。

 ――ただし、俺に向かって、まっすぐに。キキィィーーーッ!という甲高いブレーキ音のようなものが俺の耳に入る前に俺の意識は強い衝撃とともに飛んでいた。



*******



 ツンツンと柔らかい指のようなものが俺の頬を突っついてくる。


「ねえねえ、起きてよキミ。いくらねぼすけさんといってもそろそろ起きてくれなきゃボクが困るんだよ」


 女性らしき声が聞こえる。俺は仕方なく重い瞼を開け、周りの様子を見た。俺の目に飛び込んできた景色は全く見覚えのない蔦の這った天井ととても可愛い美少女だった。


「んっ……んうぅ……」


「あ! やっと起きてくれた!? 心配したんだからね!」


 すごくフレンドリーなしゃべり方をしてくる目の前の少女――いや、幼女は俺の知り合いでもなんでもない。初対面である。ついでに言えば天井だけでなくこの部屋そのものに見覚えがない。


「えっと……ここは? あとお前は誰?」


「第一声がそれか…まあいいや。ここはボクが作った山小屋。そしてボクはアレクシアだよ」


 ない胸を張りながら言うアレクシア。当然ながらその外国人のような名前に聞き覚えもない。


「そういうキミは? ボクは自己紹介をきちんとしたんだからキミの名前も教えてよ」


「ん? ああ。俺は草創晴臣だ」


「クサワケハルオミ……?あぁそっか。キミの元々居た場所はそういう名前をつけるところだったね」


 目の前の幼女の言っていることが全く理解できない。こいつはさっきからなにを――。


「んっ、コホン。いきなり何を言われても分からないだろうから一から説明するよ。まず――」


 俺の考えを遮って出された言葉はとんでもないものだった。


「――キミは、一度死んだんだよ。ヒトが作ったクルマっていうものでね」


 俺が、一度、死んだ? じゃあいったい今ここにいる俺はなんなんだ。そんな俺の心を読んだかのように言葉を紡ぎ続けるアレクシア。


「ここはキミが元々居たチキューっていうところとは全く別の場所。もとい、世界だ。名前としてはエスラっていうんだけど、キミの知ってる言葉で言うと『異世界』ってことになるかな。みんな大好き剣と魔法のふぁんたじぃ! で、キミの魂をボクが造った義体に入れて、こっちに転生させたってこと。キミは今はいわゆる人造人間ならぬ『神造人間』ってことだね」


 言っている言葉は分かるが、意味が分からない。なんだこれは。なんとか無理矢理言葉を咀嚼し、飲み込み、理解しようとする。


「つまり俺は一度死んでこの異世界にお前の力でやってきた……ってことでいいのか?」


「うんうん。飲み込みが早いようで助かるよ」


 いや、飲み込みが早いというか無理矢理理解しようとしただけなんだが。


「で、なんでわざわざ体を造ってまで俺をここに呼んだんだ?」


「えっとね、まずキミの時魔法への適正と空間魔法への適正、そしてこの義体への魂の適正が高かったこと。あとボクの趣味」


 マホウ? こいつは今魔法っていったのか? 魔術? マジック? おまけに最後には趣味って……。


「魔法って俺の考えてる魔法であってるんだよな? あの火の玉作ったり土で壁を作ったりするあれか?」


 うんうんと俺の考えを肯定するようにうなずくアレクシア。この手の知識を教えてくれた友人には感謝しかない。


「あ、でもねでもね、そんなに身構えなくても大丈夫だよ。基本的にはキミが元々居た場所と同じだから」


「同じ? 具体的にはどこが同じでどこが違うんだ?」


「まず、この世界はチキューと同じような成り立ちなんだ。ディエリっていうチキューのタイヨーみたいなものの周りをぐるぐる回ってる。ムアジュっていうツキみたいなものもあるから、そのあたりはほとんど変わらないんだ。強いて言うなら名前が変わったぐらいかな」


 なるほど。太陽はディエリ、月はムアジュだな。覚えたぞ。


「まあ何が違うかって言うと、チキューでは石と石を打ち合わせて火花を出して火をつける。この方法が最初に見つけられた。でもエスラでは火をつける方法として最初に魔法が見つけられたんだ。キミの方では科学が発展してる。でも、こっちでは魔法が発展して科学があまり発展していないんだ。だからキミの方と比べると……うーんと、中世って言ったら分かるかな?」


「つまりビルだの鉄筋コンクリートだの科学が発展したことで手に入ったものがない、と」


「うんうん! そうそう! すごいねハルオミは。ボクと違って纏めるのが得意なんだね。まあそんな感じで違うところがいくつかあるんだよ。キョーリューじゃなくてドラゴンが生まれたり、ヒョーガキが来てもドラゴンが滅亡しなかったり」


「なるほどな。で、なんでお前はそんな色んなことを知ってるんだ? そんなに長生きしてるようには見えないぞ」


 アレクシアの口から出た言葉に俺はさらに驚かされることになった。


「それはね、ボクがこのエスラを創った神様だからだよ。創造神アレクシア。それがボクさ」





考えが纏まっても文章にしたり会話にしたりするととてつもなく諄くなるんですけどどうしたらいいんですかね。

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