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Squad  作者: 野鳥 飛鳥
3/3

第2話 スコー②~僕とジャーニー~



--------数時間前---------


「はっ、はっ、はぁッ、、、」


走る。ただ走る。

だがやみくもに走っているわけじゃない。

逃げているのだ。


「どうして・・・どうしてこんなっ・・・なんでっ・・!」


今朝は確か、そうだ。

8時くらいに起きて、いつも通り大学に行こうとしたんだ。

雪が降っていたから、もちろん授業なんてやってない。

けれどなぜか、そのまま僕は外に出てしまったんだ。


数年ぶりの大雪に浮かれていたのか?

今となってはその時の自分を叱りつけたい、いや、

殴ってでも止めたい。そんな気持ちだ。

こんな状況になっているのは、その気まぐれのせいなのだから。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しんしんと雪の降る街に繰り出し、人が居なくなったビルの群れの中を歩いていた。

行くあてなどとうに失っていたが、たまにはこんな時間の使い方もいい。

べつに散歩は趣味じゃないけど、雪の日ともなれば話は別。

それは言うなれば、日常からはなれた別世界の様相で

まるでおとぎ話の中にいるような、おかしな高揚感すら与えてくれる。

道端に散りばめられた薄汚いゴミ屑や、もはや掠れて誰にも理解されない道路標示。

そういう「不純物」すら、真白く美しい雪が埋め尽くしていく。

その白銀は視界だけでなく、きめやかな雪に街の雑音も吸い込み、

普段なら聞こえる大通りの喧騒や、文明の生み出した無粋な機械音だって

今日は全くと言っていいほど気にならない。

その不自然な自然の静寂に耳を傾け、少しだけ悦に浸っていると

先の角の向こう側から、人の声が聞こえた。


「$&%$%‘($I)$’&$!!!△○×■$%%&$(!!!!」


なにかモメているのだろうか?

よくわからないまま、ただ好奇心で足は声の方へ歩み出す。


パシュッ


「え・・・?」


倒れこむ男の大きな体。

相対する者の手にある拳銃からは、薄く硝煙が上がっている。

純白だった雪は、飛び散った血飛沫で真っ赤に染まり、

僕の平穏も音を立てて崩れていった。


間違いなく行われた「殺人」。

その凶弾の主は、クッとこちらに顔を向け、

恐ろしく不気味な翁の面の下から、僕をしっかり捉えていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そのあとは、ただひたすらにその場から逃れたい一心で

がむしゃらに、逃げるように走っていた。


「っはぁ、っ・・はぁ、ぁっく・・ハァ・・」


ようやく「追手」から逃げ切ったと思い、僕は雑居ビル、

中でも特段古びた建物の地下階段にへたり込んでいた。

全力疾走なんていつぶりだろう。

肺と胃の奥がぎしぎしと軋み、吸い込む空気は喉を突き刺すように冷たい。

脚はガクガクと震えて、自分の荒い呼吸だけが「生きてるぞ」と実感させる。


「そうだ、まずは警察に・・・?いや救急車?学校・・バイト先・・・」

完全に混乱していて頭の中が慌ただしい。

どうするか決めるより先に、脳はまずポケットの中の携帯に手を伸ばす。


「   オイ、おまえ  」


心臓がバクンッと確かに音を立て、0.3秒の間僕は死んでいた。

流れる静寂の中で、どうか自分ではありませんようにと祈ることしか出来なかった。



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