第1話 スコー①~ボブとジャーニー~
第一話 スコー
西暦20XX年 某月
この日は関東一帯で大雪が降り、首都圏の交通機能は完全にダウン。
街中は家に帰れない多くの人々であふれかえっていた。
「はっ、はっ、はぁッ、、、」
人ごみとはまた離れた、
雪降りしきる雑居ビル街の中を
一人の青年が駆けていく。
「はっ、はっ、はぁッ・・・くっ・・ハァッ・・・」
非日常的とさえ思わせる、都会の銀世界。
社会はおおよそその歩みを止め、
束の間の非日常に世間は戸惑い、同時に浮足立つ。
「どうして・・・どうしてこんなっ・・・なんでっ・・!」
...ただしそれは「オモテ」の話。
街の持つ「ウラ」の顔は、いつも通り。
いつも通り、彼らは生活を成している。
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「なんで俺がそんなことしなくちゃいけねえ?話が違うぜ”ジャーニー”」
一人の男が声を荒げている。
男の声は荒々しく、ガキでもわかる憤りを感じさせる。
冬の厚着の上からでも一目でわかる、その筋骨隆々の体躯や、
腕の先から首まで入った隠しきれていないタトゥー。
見た目通りドスのきいた迫力のある声で、また別の男を責め立てていた。
「待てよ、ちょっと待て。なに寝ぼけたコト言ってるんだ?
ツラだけじゃなく頭まで類人猿になっちまったのか? “ボブ”。」
対する男は優男風で、ジャーニーと呼ばれている。
見た目は20そこそこの軟弱そうな美形だが、
目の前のボブと呼ばれる強面に面と向かって
呆れたように皮肉を垂れている。
「ヘイ、ヘイ”ジャーニー”。俺は真剣な話をしてるんだ。
俺の親父がゴリラだってのは今は関係ねぇ。それに俺は寝ぼけてもいねぇ。
クリアだ。冴えてるぜ。そうだろ?」
「で?お前は一体なにに文句があるんだ?金なら取り決めた額を払った。数えただろ?」
「ああ、金ならキッチリ貰ったさ。こなした取引の分はな。
だが違うぜジャーニーそうじゃねぇ。その金の話じゃあねえんだよ。
なあジャーニー。”このガキは誰だ?”」
ボブは僕を指差し、わかり易い嫌悪を顔に浮かべながらそう言った。
「ああ、言ってなかったな。コイツはウチの”新入りになる”。
名前は・・・聞いてないな?そういえば。
”少年A”だ。ほら、類人猿がキレる前に挨拶しろ。」
僕はいつの間にか少年Aになってしまっていたようだ。
とにかく目の前のボブさん(?)が、
いや。”場の空気全体が”恐ろしくて、僕は委縮しきってしまっていた。
「・・・・・・・・」
「・・・おいガキ。お前が誰かも知らねえし挨拶もロクにできねぇことにはムカつくが、
なにも要らねえぜ。そのまま黙ってろ。
なにしろ俺は"こいつの面倒を見る気はねえ”んだからな。ジャーニー。」