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夢の中の王子様  作者: 相原華憐
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学校生活~その1~

 ふと目が覚めると、そこは見知らぬ森の中。


 小鳥が囁く春の歌。


 木々の間から差し込むやわらかな木漏れ日。


 緩やかな風とワルツを踊る落ち葉とともに、微かな香ばしさが鼻をくすぐる。


 すぐそばをせせらぐ川は、まるで宝石を散りばめたかのように、キラキラと私の視覚を刺激する。


 童話の中の1ページを切り抜いたような、少しぼやけた、どこか懐かしさすら感じる、見知らぬ世界。


 私は、何も考える事なく、ただただ目の前の世界を、ボーッと眺めている。


 ……どれくらい時が経っただろう。

 ふと物音がして振り返ると、そこには、白い馬に跨がり、純白の甲冑に身を包んだ騎士がいた。


 金色の髪をなびかせ、すっと馬を下り、澄んだ青い瞳で微笑みながら、私に手を差し伸べてくる。

 私は戸惑いながらも立ち上がり、騎士の手を取る。

 そのまま身体を引き寄せられた。彼の顔が視界を遮る。

 端正な顔が少しずつ私との距離を縮めてゆく。

 青い瞳に見つめられた私は、恥ずかしさを隠すように、ゆっくりと目を閉じてそれを迎え入れる。

 聞こえてしまいそうなくらいドキドキと胸が鼓動する。


 とうとう来てくれたんだね。いつか夢に見た「白馬の王子様」




「っと、ここで目が覚めちゃったんだよね~」

「きゃ~っ、なにそれぇ!?もったいなぁい!!」


 まだ人がまばらな教室。ホームルームまでまだ30分はある。

 いつものように友達と談笑している私、相原華憐は、今朝見た可笑しな夢の話を恥ずかしげも無く披露していた。


「ホントだよぉ。気付いた時には二度寝も出来ないくらい目が冴えちゃってたもん」

「でも、その後はどうなってたんだろうねぇ~」


 人一倍大きな目を、さらにパチクリさせながら柚子が言った。

 小林柚子。

 高1の春に仲良くなり、約1年の付き合いで、小柄な身体にほっそりした彼女は、その身体に似合わず、毎日元気いっぱいの女の子。

 おそらくクラス内で「妹にしたい選抜総選挙」を行えば、万丈一致でセンターの座をとるだろう。


「ね~っ!!今夜続きが見れたらなぁ・・・想像しただけでヨダレが出そう」

「あははっ」


 ピョンピョン飛び跳ねながら笑う柚子。

 この愛らしい小動物は何科何属の何類なんだろうと考えていると、


「ばぁ~か。キスより先の経験がない華憐には、その後どうなるかなんて夢の中でも見れないっしょ」


 珍しくホームルームより前に教室にいる遅刻魔の、宮内ルミが後ろの席から参戦して来た。

 朝から他人の席で化粧ポーチを広げている。

 彼女も高1からの仲で、2年になってもたまたま同じクラスだった3人は一緒にいることが多くなっていた。


「うっさいわね。あんたと違って私は純粋なのっ!白馬の王子サマが現れるまで純潔を守り通すんだから!!」


 と振り返ると、


「へいへい。一生言ってろ。てか、私だって好きになった人にしか許してないしぃ~」


 同性の私から見ても魅力的なルミは、ピューラーで自慢の睫毛をカールさせながら無表情で答えた。


「へぇ~。こないだの先輩なんて、運命の人見つけた!!とか言っといて1週間続かなかったじゃん!?」

「あれは運命の人じゃなかった。ただそれだけだから」

「ルミって気が多いよね~。元彼と呼べるヤツが何人いるんだか」

「でも、ルミちゃんそれだけもてるんだよね。顔もキレイだし。羨ましいなぁ~」


 裏表がなく、思った事を素直に言ってしまう柚子は、心底羨ましそうな顔をした。


「そうゆう柚子だって中学から付き合ってる彼氏いるじゃん!!」


 そう。

 3人の中で彼氏が出来たことないのは私だけ。早く来て!王子様。


「あの可愛らしい彼氏ねぇ。ま、おこちゃま柚子にはお似合いだよね」


 手鏡を覗きながらルミがいった。


「ぶ~。またルミちゃんバカにしてる。牛乳いっぱい飲んでるから、これからどんどん発育するよ~だ!!」

「牛乳飲んでりゃでかくなるわけじゃないだろ」


 でたっ!いつものこの流れ。

 そんな話ししたって男子しか喜ばないよ。

 案の定、周りの男子は、気にしない振りをしながら聞き耳を立てている。

 ほんっとこの2人って正反対だよなぁ。


「ははっ、頑張れゆぅ~ずぅ~!!」


 微力ながら柚子に加勢していると、柚子が俯きながらボソリと言った。


「それに……秘密のエクササイズだってしてるし」


 ん!?何だそれ??と考えていると、手鏡を机の上に置いたルミが、手を叩きながら笑い出した。


「あっははっ。ゆっずちゃ~ん。あどけない顔してそぅゆぅ事はやってるんだねぇ。ま、彼氏のいない誰かさんには分からないだろうけどね」


 ルミはカバンを持ち立ち上がると、ニヤっと意地悪そうな笑みを浮かべ、教室の出入口へ向かい歩き出した。


「ちょっとルミちゃん!?まだじゅぎょ……」


 柚子が言い終わらないうちに、メイクバッチリの小悪魔は


「これからデートなの」


 と、ウィンクで返してきた。

 授業どころかホームルームさえ始まってないのに……こいつはメイクする為に学校に来たのかっ!?

 私と柚子は呆れながらお互いに顔を見合わせた。


「おっ!?華憐の王子様が来たみたいだぞ」


 教室から出かけたルミは、顔だけ室内に戻し一言言うとそのままいってしまった。


「宮内っ!!もう帰んのかっ??」


 廊下から聞き覚えのある声がし、その声の主が廊下の窓から顔を覗かせた。


「よっ!!華憐!!今日の部活、自主トレで早く終わるから、一緒に帰ろうぜ!!」


 短髪で日焼けした顔から白い歯が見える。まるで少年のような無邪気な笑顔。


 幼なじみの山崎優斗だ。


 私は笑顔で頷いた。


 両親が親友で、家も近所の腐れ縁。

 王子様??笑っちゃうわ。双子の姉弟っていう感じがしっくりくるかなぁ。


 

 ……それにしても、秘密のエクササイズってなんなの??めっちゃ気になるし。


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