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想像×創造 A different world in the reality  作者: 蜜柑 猫
想像×創造 1章 自然の恐怖編
9/27

我心不通

「あの時以来、俺は香花の者を見る目が変わった」

勝は、懐かしげに遠くを見ながら言った。

「隣失礼します」

「どうぞ」

優多は勝の隣に座わった。

勝があぐらに対し、優多は体育座りで縮こまっていた。

そして勝は話し始めた

「この世界に来たのは、偶然でも奇跡でも無い。

さだめーだったんだ。

そういう定だったんだ…」

いきなり勝は落ち込んだ顔で話し始めた。

優多は勝の話を真剣な表情で聞いた。

「あの時はまだ心の整理がついていなかったから、

あんな行動を起こしてしまった。

優多、あの時は本当にすまない。お前の第二の故郷やお前の存在を否定して…本当に申し訳ない」

勝はめに涙を浮かべながら優多に打ち明けた。

「大丈夫です。僕が怒れる筋合いはどこにもありませんし、むしろこちらが謝る方です。

慣れない地での生活や主従関係が色々なことがあってストレスがたまるのは、本当に辛いことです」

そう、細かく話すと複雑になるから大まかに話すが、優多のように、人間が能力を持つと存在が薄れてしまうためその地を離れなければいけない世界がいくつかある。

勝もその1人であり、行き場を失った結果この世界に来たという。

だが、なぜ勝は香花を恨むのだろうか?それは、

香花と言うのは、上の上の上であり、

界や道を外れ、長に達するところなのだ。

だから、断然誰でもくることが可能な訳でも無い。

だが、香花界の者は皆 神人類のようなもので、

まず五体をバラバラにされても、消されてもそれぞれ多種多様な復活の仕方で生き返るし、

能力の度合いや効果がほとんどチート級だ。

例え、何億何兆度の熱線に触れたとしても、太陽くらいの大きさの物ぶつけられても、

それぞれにある弱点を潰されなければ、

生き返る。

いや、生き返るというよりも



“自身を防ぐ”



と言った方が合ってるのだろうか。

人よりもずっと強く大きい知能、知識、記憶、能力、力で事前にある恐怖や災難から

逃れる。

その者たちを文字で表せば、


“万能”


とある方向ではその言葉そのものだ。


そのことを踏まえた上で、

勝の心情をもう一度考え直すとどうだろうか…

多分香花の者が羨ましいと勝は思うはずだ。


実際、香花界は強い者で溢れていると、有名だ。

わかりやすく物で例えるならば、

ブラックホールなどのそう簡単には手にできないほどの最強武器を何億個も所持している、

軍のように…

それに誰も優しい。

よっぽどの時にしか手を出さないし、どんな時でも喜んで対応してくれる。


どうだろうか?

一度は行って見たい。

なんて思う人はきっとどこかにいるだろう…


「優多…今俺は他人からどう思われているんだ?他人からどう見られているだ?恐ろしいか?憎たらしいか?」

勝は静かに涙を流しながら聞いた。

優多はそんな勝を元気付けようと、話をし始めた。

「砂川さん。自分に自信を持ってください!。

そうしないといつかは、本当に砂川さんの言っているようになっちゃいますよ。

大丈夫です。砂川さんは色々な方から良い人だと思われていますよ。

人は信じるからこそ、信じられるんですから」

そう言いながら優多は立ち上がり、

「色々とありがとうございました。

事件についていろいろな情報本当に助かりました。

僕はこの後、天気を自由自在に変化させる能力を持っている人のところに行き、

ちゃんと言い聞かせてきます。

もちろん口だけでは上手くいかないと思うので、

力でどうにかしますけど…

では今日はありがとうございました」

そう言いながら優多はその場を離れた。

勝は高速道路の支柱の根元に座ったまま下を向き、

優多を見送ることは無かったが、



『頑張れよ。人を信じることで俺が信じられるんだったら、第一にお前を信じるぞ。

ありがとな、親友』



勝は下を向いたままだったが、

確かに優多にはそう聞こえた。

多分嘘では無い。

だって勝は笑っていたんだもの。

無理でも、愛想笑いでもなくただただ嬉しそうに笑っていた。




優多…

お前は、本当にいいやつだよ。



優多は、少し歩き、何もない。

荒れ地に立っていた。

本当に何も無かった。草も木も山も岩山も。


その場に手を“何か”に当てるように前に出し、

そして、“何か”を掴むようにギュッと握り、



捻った。



するとどうだろうか。

今さっき“何も無かった”はずの空間が、優多が握る、捻るの2行程で、空間が歪み、優多が手を放しても続いている。


グルグルグルグルと、優多が歪ませた空間は一定の部分だけ捻り捻って、グシャグシャになりまるで、水面の波紋のようになり、次第にその部分だけ景色は見えなくなり、最終的に、


その一部分が白い何かの部分が煤色に靄掛かりながらも、見えた。

優多は、その煤色の靄を払うように白い何かを撫でた。

そして見えてきたのは、


“白いドア”だった。



これは、『世界移動の扉』と言って、そのまんまだが、世界移動をする時に使う“一種の術”だ。

優多能力を持った最初の頃に、母海の地球から無限と一緒に出る時に、異世界へ移動するため、想像で扉を開けていたが、それと同じ原理だ。

能力も、魔法も一緒。全てが全て想像の強さが具現化し、創造となる。

だから能力者や、魔法使いの本人は気付かないだけで、想像の強さが普通の人ととでは比にならないほど強大なだけだ。



そして、優多はその扉に入り、世界移動に身を移した。


バタンと、扉が開い閉まるのにつれて、扉の端から煤色の靄がかかり、扉ができる巻き戻しをしたかのように元に戻った。






風が荒れている

物凄い勢いだ


竜説の異動。通称


『竜説の香』


世界面積は、地球の月、約1/4とやや小さめ。

地理の状態は、世界の1/4が森林や海などの自然地域。そのうちの1/0.5がその世界の人々が住まう市街地となっている。

人口はおよそ100人と少ない。

そのうちの80人が超人であり1/2.75の比率で自然に関する能力者がいるらしく、そこそこ名が上がる世界である。


そして、今回の事件の親玉の者が世界のど真ん中の


“キュウサイルシア”


という名の場所にいるらしい。

だが、キュウサイルシアというのは、その世界の言い方なので、僕が使う日本語に訳すと

キュウサイが、南の空。ルシアが、〜の海。

ということで、南の空の海ということになる。


こう見えて自分は、全多世界の言語を死ぬ気で勉強しているので、会話に困らない。

まああの時、

『無限はそんなことしなくたって、みんな日本語使ってるから大丈夫だよ』

なんか言ってるが、

心配で勉強したのだが、どうやら無限の言ってることは正しかったらしく、会った多世界の住人のほとんどが、日本語を使いこなしていた。



あれ?

そう言えば忘れていた。

今日は僕の誕生日だ。

もう1日が経とうとしている。

結局誰にも祝ってくれないという、とても悲しく複雑な気持ちだ。

こんな気持ちになるのは初めてだ。

強くもなく、弱くもない…能力を持って地球から離れた時よりはまだ弱いが、でも何か心がムズムズする。

そんなことを考えているうちに、今回の舞台。


ー竜説の香ー


に来た。

腕時計を見て、また誕生日なんて余計なことを考えてしまった。

時間を確認するために見たのになぜかわからないが、

自分の誕生日のことを考えてしまう。

そんな誕生日だなんて一年過ごせば誰だって来て当たり前で、自分の誕生日だなんて貴重にするほど大事なものではないのに…

でも、よくよく考えてみると、この腕時計は香花館の主である無限さんが13歳の誕生日にプレゼントしてくれた、時計である。

懐中時計のようなデザインで中世ヨーロッパの雰囲気が漂っている。

形は、楕円形で中には銀色の小さなパーツで模様が描かれている。正面だけでは無く、側面や更に着用している時には、見えないところだが、裏側にまで細かく模様が描かれている。

そして驚くべきところは針にも模様が描かれていると言った繊細すぎる時計だ。

色はパールホワイトであれから毎日のように使っているのに、錆びたり塗装が剥がれたりしない。

無限さんいわく、凄い材質で作られているから何十年も持つだとか…

んで、聞いておいて後悔した金額だが、日本円に直して、

7億8000万だと言う。

それに僕の優多という字をわざわざ時計にはめ込み、追加で205万800千円と言う…


聞いた時、あまりの衝撃に顔が真っ青になった。


それにこの時計を作るには、約50年の月日がかかると言われる、最高級品でありそれぐらいの価値はあると思えた。


なんだか笑えてくる。

こんな僕のためになんでこんなものをくれたのか?という疑問もあるが、それを含めて、

僕の存在を受け入れてくれた、無限さんの存在自体が笑えてくる。

でもバカにしているからとか面白いからとかじゃ無くて、不思議で笑ってしまう。

おまけに涙まで出てきちゃって…

感謝を越えて、有難みだ。

だから、誕生日と言う言葉には引っかかるんだろう。

ようやく理由がわかった。

人間は不思議だ。

楽しみにしていても、その出来事を少しでも知ってしまった。分かりやすく言うとネタバレをされたら

その楽しみが消えてしまう。

それにに知っていてもその二の次三の次とやってきても案外喜べない。

だが、逆に何日、あるいは何百日、何千日、何万日。それをふっと思い出すと、

なぜか感動するのだ。


そんなことを思いつつ、一歩二歩三歩。

徐々に歩を進め始めた時だった。

前方から黒い影、いや暗い影?

いや…表面には、バラバラに丸みを持った灰色の球体のようなものが近づいてくる。いわば雷雲のようなやつだ。

距離はおよそ14.2mぐらいか?

ふと、

優多は背後に気配を感じ、後ろを振り返り、

目をこらすと、今度は先ほどのものとは逆で明るい。まるで何かに照らされているような感じだ。

光っているとは言えないが何かに照らされているような光の球体が近づいてくる。いわば月のようなやつだ

こちらも先ほどとは同じぐらいの距離で、

13.5m程。


そして、この二つの異物の共通点は、


2つ


1つ目はものすごく早い。

素早く暗算で計算したが、

驚くべきことに、秒速10m程度だ。


2つ目はこの林の中で木々の隙間を難なく進んでいることだ。

この林の木々の隙間は、非常に狭く最大0.7m程であり、平均0.4、5m程だ。


だがなぜだかわからないが、優多との距離を近くしたり遠くしたりしながら周りをぐるぐる回っている。

それにその2つの異物と優多の距離は毎度狭まってきている。

優多は、立ったまま2つの周り続ける異物を交互に見続け、戦略を考えるものの、落ち着くにも落ち着けず。息が荒いのは自分でも分かった。

冷静に判断し、行動できなかったのだろう。


優多が光に包まれた異物に背を向けた途端に、

その異物が瞬間的な異動で、優多に迫り通りすがるようにその異物は避けながら猛突進した。

そして、優多が体勢を立て直した時には、暗い異物を見失ってしまい、背後を振り向いたその瞬間。

優多の首元に


ズシュリと


静かに刃が通り、

一気に血が吹き出た。

優多には、直接見えなくて、どうなっているのかわからないが、


傷は深く首の1/3を斬られ、

首が取れそうな状態であった。

優多には、『重力を操る能力』と『生物を域を越えた知識、力、生命力がある能力』があるが、

今の優多には、パニックで何をするのかさっぱりわからず、とにかく驚愕と酷い痛みに耐えるだけで一杯一杯であった。

いや、痛みよりも恐怖の方が打ち勝つのかもしれない。

今の優多には、驚愕と恐怖しかないと言った方が正しいのかもしれない。

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