最後からのrestart
刀と剛拳がぶつかりあい、重い音が辺りに響き渡る。
豪気の拳に巻きつく炎は絶えなく燃え続け、熱で辺りが歪んで見える。
「へ〜すっごい力。やっぱ人妖魔神怪は見た目で判断するもんじゃないね〜。ところで誰から剣術を学んだんだい?素人じゃなさそうだし」
豪気は、炎拳とつばぜり合いというなんとも想像のつかない状態で優多に話しかけた。優多は無表情のまま表情を変えずに答えた。
「師匠から教わりました。刀での戦い方の他に、素手での戦い方。いわゆる近格闘戦闘術というものです」
「へ〜優多にも師匠と呼べる存在がいたのか…会ってみたいな〜。それに、その近格闘戦闘術ってのも、その師匠が古くから伝えられたその『派』ってものがそっちの世界にあるんだろ?一回味わってみたいな〜」
豪気は自分の炎拳で優多の香花刀とのつばぜり合いを払い、優多に言った
「まだいけるか?」
「はい、まだまだです」
そう言って優多は大勢を低く整え、右手にある香花刀を後ろに引き、反対の左手には香花刀と同じくらいの長さの気力刀を逆手持ちに切り替え、気力刀の鍔を自分の顎の二、三㎝前に置き、その鍔に香花刀の剣先を置いた。
そして、
思い切り地を蹴り風の如く速さで走り、豪気が気付いた時には優多が横にいた。
そして“秒”の速さで豪気の死角に入っては、また移動し、豪気が優多に気づく前に移動する。これが“師匠”。今は名だけの存在が教えてくれた『近接戦闘術』のひとつ。
優多が刀を振り風を斬る音同時に発される移動のためのステップを踏む音の速さがいかにその動きが速いかが分かる、優多の姿を捉えるには、到底無理な話だ。それは人間に限らずの話だったようで、超人の豪気でさえその速さには驚きを隠せられなかった。
そして次の瞬間、豪気の真後ろに月の構えの状態で、優多が斬りに掛かったその瞬間、
「やめやめやめやめっ!僕が見てないときになにをやり出すんだ!けが人でも出たら大惨事だよ!」
寸前で気付いたのか、無限が自分達を止めにかかった
「そういえば…君たちの流れを見て思ったんだけど、豪気!」
「は、はい!」
顔はまるで、先生に怒られたかのように緊張していたそれが体にも出ており、呼ばれた途端ピシッと背筋を伸ばした。やっぱり“怒られる”と言う時の姿勢というのも全世界共通なのだろうか…
「勝手に勝負を持ちかけない!いい?」
「はい!今度からは気をつけますっ!」
そして、無限の目がこちらを向いた
「優多!いい?こんな勝負を絶対に受けないの!わかった?」
「いや、そもそも前回黒体と戦わせたのは誰なんですか?」
「いや…それは…なし!今のはなし!何でもない!」
何だったんだろう…そう思いながらカイトの方を見てみると…
寝ていた。
門番があんなことをして大丈夫なのかそんな心配を自然としてしまう。いや、誰だってするだろう。
「まあ今回はひとまずこれで終わりにしよう。次こそは決着をつけような!」
豪気は残念そうな顔をしてその場から離れていった。帰りは、ちゃんと門をくぐることに色々と突っ込みたいのだがやめておこう
「まったく…まだ戦闘は慣れていないというのに…優多ごめんね今度からはちゃんと見ておかないと」
「いえ、大丈夫ですよ。いい経験をしましたし」
「そう…じゃあ良かったね」
無限は意外そうな表情でこちらを見ていた
「それと、前回はごめんね!本当にごめん!調子に乗りすぎました!」
無限がいきなり手を合わせてこちらに謝ってきた。
「え、え!だ、大丈夫ですよ!もう許していますし…それに、もう僕は弱気になんかなりませんから」
優多はそう言って、無限と館に戻った