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想像×創造 A different world in the reality  作者: 蜜柑 猫
想像×創造 3章 死界編
24/27

まだ休みたかった

10月のとある日、我が主無限と縁側で夜の月を眺めている時のこと、

死神の多玉たぎょく かいから伝言が来た。

その内容は、


『死後の世界が壊れかけている』


とのこと…

なんだかんだあってもう10月…

「もう秋か…」

優多は部屋の窓に映る紅葉の色に染まった山を見て呟いた。

色々な山が赤、橙、黄…様々な色に染まっている。青い空と重なって綺麗だな…

今日の天気は秋晴れということで雲ひとつない晴天だ。だが寒い。

ノックの音が聞こえ、

「おーい優多〜入っていい?」

と、この声は無限かな?

「いいですよ」

すると、ガシャンと思いっきりドアを開きこう叫んだ。


「お月見しよう!」

「は…はい」


ドアが悲鳴をあげている。また設置し直さなければ…

それにしても物凄く驚いた、今何時だと思ってるんだろう…朝の5:00だぞ?

「お言葉ですが無限さん…」

「うん」

「お月見は月が出てないとできませんよ?」

「へ〜だから?」

あっさり流された。

「だから、今朝の5時ですし今やっても月は出てないので、紅葉狩りになってしまいますよ?」

「いやいや…別に今やる訳じゃないよ?」

「…え?」

「これから多世界の調査に入って来るついでにお月見をするためのお料理の材料を買ってきたり、新しく和風の建物も作ったりで十分時間がかかると思うから、今のうちに言っといたんだよ?」

僕は何か勘違いをしていたようだ…

「あ、はい…そうですか…じゃあ早速着替えて行ってきます…」






毎日多くの人で賑わう市場の中心にある青果売場で優多は今日やるお月見用の料理の材料を買っていた。

「毎度ありがとうね」

「いえいえ、こちらこそいつもサービスありがとうございます」

「気にしなくて良いんよささっ!持って帰って持って帰って!」

「ありがとうございます」

おばさん良い人だなあ…いつも助かってるよ

実は、10月の始めに無限が実験といい、ながらも新しい薬品調合か何かの作業をしている途中に大爆発が起き、畑に植わっている野菜が粉々になり家畜小屋が破壊され案の定家畜達が逃げ出しダメになってしまった。

それをやらかした張本人に『今すぐ直せ』と言っても『健診で能力は使えなくなってる』とのこと。

僕達が住んでいるのは館。当然僕以外にも住人は居るし決して少なくない。だから野菜など、食べる物が多くないといけないのだが、運悪く食品のストックは底をついてしまったので、買い出しに来ることになったのだ。

実はこのおばさん。僕が置かれている現状況を察してくれたようで色々とサービスさせてもらっている。

それにしても『流石賑わいの中ル・ルナ』



館の住人が、沢山居るだけあって買う物の量も多い…あれから何回かやっているが未だになれない…

重力を少なくし、持つものを軽くするのは簡単だが、やはり『バランス』の方も関係してくるので、風が吹けばバランスが崩れ大惨事となる。

沢山の荷物を抱えながら、『世界移動の扉』の地点まで歩いて行く。

「おーいお兄さん凄い荷物だね〜紙袋で埋もれちゃってるよ!」

「???」

見えない。前以外見えない。

紙袋が邪魔で左右真後ろ上下見ることができない…

「どうしたのお兄さん?」

「すみません…紙袋が邪魔であなたが見えないので僕の正面に来てくれませんか?」

「ん?別に良いけど…」

これって普通、前が見えなくなるもんじゃないのかな?まあいいか、

「んで、お兄さん大丈夫なの?」

「いえ、全然大丈夫じゃありません…」

見てみると話しかけてきた子は変わった格好をしていた。

「何?ジーと見つめて。そんなに見てたって胸ないしお兄さんが望んでいるような体じゃないよ?」

「いえ、そういうことじゃなくて…」

その子の格好はまるで小さな王子様かのような格好だった。

頭のサイズとはちょっとゆるい冠に高貴な洋服…

「????」

「あ…いえ、なんでもないです。すいませんでしたジロジロと…」

やばい…自分何やってんだよ…

「何が何なのかは分からないけど…お兄さん」

うつむいていた顔を上にあげニコニコしていた表情からつまらなそうな…無表情というか…とにかく忠告を言うには適さない顔でこう言った。



『相手を見すぎると、自分が不利になるだけだよ』



そして、またうつむき優多の後方に歩き出した。

気づけばさっきまで全く聞こえなかった周りの人達の声が段々と聞こえ、不思議な感覚だった。







夕方の午後18時。あれから2時間程かかり、香花界に着いた。

もうここに来て1年何ヶ月だろうか…すっかり馴染んでしまった。

気が緩み、微笑んでいられるのがその証拠。

仕事も完璧に覚え、最初自分がこなすには不可能に近かった事も今では、完璧にこなせる様になった。

そんなことを思いながら香花館へ続く道を歩いた。ここから館までそう遠くない。歩きで10分から15分くらいで着く距離だ。だから飛ばないし走らない。

それにしても買い物の紙袋が今にでもズレ落ちそうだ。

畑や家畜がどれだけ大切かを身体で教えてくれた。




あれから14分ほど歩き、香花館へ着いた。

館の中に入る前にドアの前にある1〜4段ほどの小さな石の階段に腰を下ろし一休みした。

最近事件がなくてホッとする。過度に疲れる事も無いし、死ぬ程の痛みを味あわない。

「…何してる」

「あ、」

声がする方に振り向くと、カイトが目の前にいた。

目の前というのもそのままの意味である。ジト目で屈み目線を合わせていた。

「うわぁ!」

「…耳元でうるさい。予想以上に驚いてビックリだ」

「す、すいません…」

その顔のままでカイトはノーリアクション

「…そう言えば凄い荷物だよね、半分持とうか?」

「え?良いんですか?」

「…もちろん。今、槍もってないし手ぶらだから」

「ありがとうございます!ではお言葉に甘えてこれとこれとこれと…これ持ってください」

優多は、10個ほど大小色んなサイズの紙袋を適当に選んで差し出した。

「…これを持っていけば良いの?」

「はい。あ、1番左のとその隣のには酒瓶などの割れ物兼お酒が入っているので気をつけてくださいね」

「分かった」

割たい…物凄く割たい…『あ…ごめん滑っちゃった』じゃ済まされる様なもんじゃないしな…

「…優多」

「割れもんですから気をつけてくださいね」

笑顔で言われた。

「…わ、分かった。気をつけて運ぶよ…」

「よろしくお願いします」

「…そう言えばこれは何処へ?というかこれって何?」

カイトが紙袋の中身を興味津々に見て聞いてきた。

「話せば長くなりますから短くしますけど、今日お月見するのでそれ用の食事の用意と食べ物のストックです」

「お月見?」

カイトが首を傾げて聞いてきた…そう言えば魔界出身だから分からないのかな?

「知らないんですか?お団子とすすき。今年採れた野菜などをお供えして豊作をありがやありがたやと感謝する行事ですよ」

「…ふ〜ん…そんな風習があるんだね。でもさっき言ってる事と今言ってる事の意味が違ってこない?」

「まあ昔は昔、今は今ですからね。それに料理を出せと言ったのは無限さんの方ですから」

「…へ〜」

「それと、これはそのままキッチンへ持って行きます。予定より少々遅れていますからね」


と、話しながら優多たちは、キッチンへ向かった。

キッチンに荷物を運んでくれたカイトには、お礼を言って別れた。

そう言えばカイト、物凄く疲れ気味だったけど今日門番そんなにハードだったのかな?






『ブエックシュッ!』

「…うう、風邪でも引いたのかな…」

流石に昨日の雨の中、山の中にトレーニングしたっきりシャワーも浴びずそのまま寝込んだのはまずかったかな?風邪を無にしようにも健診を受けたばかりで能力使えないし…

『ハックシュッ!』

今日は早めに休んどいた方が良さそう…ああ、お月見したかったな…

光の入らず陰気な暗い廊下にカイトは消えた



「さてと、まずはストックする分と使う分に分けないと」

そう言って沢山の紙袋から色んな種類のお酒やジュースを冷蔵庫やワイン倉庫にしまい、ストック分の野菜を倉庫にしまった。

キッチンのすぐ隣が食品倉庫で便利だ。結構前の話になるが、食品倉庫と、キッチンが別々だった時があって凄い苦労した。

そんな風に仕分けを手早く行い。野菜を洗うのに取り掛かって数分後…

「よし、これで全部かな」

キッチンには、皮のまま洗われた野菜が大きなボウルにきちんと分けられ入れられている。

「ニンジン、ジャガイモ、アスパラ、トマト…とうもろこし、キャベツ、ニンニク…」

キッチンの大きな調理台に、ギリギリ用意した材料が全部乗っかってくれて良かった。案外、多かった…

ぱっと見野菜が入ったボウルや肉や魚が入ったトレイは30個ほど…

人が増えたことから食材も沢山使うことになり、結構大変である。しかも今日はいつもより具材が多いから1人で支度するのは困難である。こんな時こそ、


「メイドさんの力を借りる時だ」


偶然キッチンを通りかかったメイドに声をかけ手伝ってもらえるか聞いたところOKをもらえたので早速手伝ってもらった。

量はいつもの2、3倍あるが2人でかかればすぐ終わる。あっという間に。わずか10分程で全ての皮むきと下拵えが終わってしまった。

「次は、色々と作りますが人手が足りないので、呼びかけてきますね」

「…」

そのメイドは無口のままコクンと頷きスタスタとフライパンや鍋の用意をし、先にパスタを茹でたり米をたいだりして、早くも次の作業を進めていた。

優多はキッチンを出て呼びかけてていた。

「誰か料理を作るの手伝っていただけますか?」

と言った約1分後、こちらに駆け足で2人のメイドが来てくれた。

「執事様執事様、私達は何をすれば良いのでしょうか?」

「先に来てくれた方が先にやってくれていますが、今日やるお月見の料理をしてください。メニューは7品。あちらの黒板に書いてあるのがそうです」

と、指をさしながら説明した黒板には、

『旬の野菜を使ったキノコ和風パスタ』

『キノコを使ったトマトソースパスタ

『栗の炊き込み御飯』

『クラムチャウダー』

『ホフドリのスークーチャ月見ソースがけ』

『ホフドリのグラタン』

『串なしのお団子(餡は白餡とこし餡で)』


「僕も作っているので、何か聞いておきたいことがあればいつでもおっしゃってください。ではお願いします」

そう言って優多も料理に戻った。



そして約30分。全ての料理の盛り付けが完成し、後は運ぶだけとなった。

今回はブュッフェのように好きなものを好きなだけ取れるようにした。

そういえば、最初に手伝ってくれたあのメイドさん、全然喋らなかったな…後に来た2人とは雑談もしながら作ったから余計に違和感を感じる…

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