自分の運命
「存在が消えるってどういうことですか!」
優多の頭が真っ白になった。考えることすら一つしかなかった
「君には理解し難いことだろうけどここの世界ではこれしかないんだ」
「親はどうなるんですか?学校はどうするんですか?」
優多はパニックだった。目がグワッと開いて体が震えていて力が少ししか出なかった。
それもそうだ、急に能力が使えるようになって、これとまた別の世界があって、そして存在が消える…
そんな非現実なことを急に言われては、どうすれば良いのかわからない。
恐怖と不安と苦痛を優多は今同時に味わい、壊れてしまいそうだった。いや、ー壊れる寸前だったー
漫画やアニメにはこういった現象が主人公やその他の登場人物に宣言され、それを受け入れ…それが普通だった。が、
しかしここはー現実ーそんなことを普通に宣言されても受け入れたくもないし、逃げきれなくても逃げるのが普通だ。当たり前だ。
「親は君のことを忘れる学校は行っても君の存在自体なくなっているから、無駄だよ。追い出されてしまう」
優多はショックで落ち込んでいた。目には光が入らなくなっており、顔を下に向け力なく立っていた。この時、優多は、なんて思っていたのだろうか。
「ではこれからどう過ごしていけば良いのでしょうか?住むところもなければ食べる物もありません」
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「…あと、2日は君の存在が残っている…あと2日はこの世界でやり残したことをやればいいじゃあ今から“48時間後”迎えに来るから」そう言ってどこかに行ってしまった。いや、言ってしまったというよりは、消えた。という表現が一番正しいのかもしれない。
家に帰ったがやることは勉強と剣術の稽古だ。
そもそもに剣術を習い始めたきっかけは、自分を強くするためだった。
だが、失敗。自分は未だに弱かった。学校では馬鹿にされる。
父は有名な食品会社の社長だ
そのため山の一部分を買い取り、1000坪程の土地に立派な日本家屋を造った。もちろん平屋で、綺麗。それにしても大きすぎる。まあ父は社長だから、月に2、3回は他社の社長さんや、外国お偉いさん方が、くる。それがとんでもない人数なのだ。平均20〜30と目が飛び出る数である。
そして母は元世界1位の陸上選手である
そのためか、母のお客も色々とくる。父ほど人数は多くないが、週に一回は、お客さんを呼んでくる日数が多い
そして弟が2人いる。
僕は、生まれて初めて2人の弟の兄になったことを考えてみた。涙が出てきた。別に悲しいわけでもないし、嬉しいわけでもないが、涙が出てきた。
複雑な気持ちだった。その気持ちでいっぱいだった。
「もうすぐで僕はこの家族ではいられなくなる…そう考えると全部が全部が損したような気がするな…」
1日があっと言う間にすぎていった。2日目も弓から放たれた矢の様に早く、あっと言う間の日々だった。
普通に起き、普通に話し、普通に寝る。でもその時の優多は、一秒、一分、1時間。
その“大切な家族”との『時間』を大切にした。
そして…結城が言っていた“48時間後”。心を入れ換え、外に出た。そして、待ち合わせの門まで、玄関を振り向かなかった。だが驚いた。
門にいたのは、結城ではない別の人物だった。
「あなたは?」
門の前に立っていたのは背の低い。小学生くらいの男の子だった。
「あれ?聞いていなかった?じゃあ自己紹介を先にしておこうかな♪僕は『開智 無限』『流』を操る能力だよ♪」
「は、初めまして陣之内 優多です。あの…結城さんは?」
「結城が来ると思ってたか〜本当は結城じゃなくて僕が迎えに来ることになっているんだ」
優多は少し戸惑ったがすぐに状況を把握した。それにしても、なんだか軽そうな人だった。
「では、何故あなたが?」
「それはね…僕の手伝いと執事をしてもらうから僕が迎えに来たんだ!」
「手伝いですか?」
「そうだよ。僕は『現段階138種の多世界』の
地理、政治、経済、を調査し、毎日更新する仕事をしているだから…」
「ちょっと待って下さい!嫌な予感しかしませんが」
「察しが良いね♪そう、君には各世界の調査をしてほしい!」
ビシッと人差し指を優多の方に向けた。
優多は開いた口が塞がらなかった。
「よしっ行こうか!行き方はわかる?」
そんなのわかるわけがない。優多は首を縦には振らなかった。
「そう…じゃあまず頭の中で世界の境目を想像するなんでもいい。それだけで世界の扉が開いて行き来できる。これは君みたいな特殊な者しかできないんだ」
早速やってみた、言われたように世界の境目を想像した。
すると家の門が波紋のように歪み波紋のような波打った空間につながった
「さあ行こう!」
そう言って、その空間に飛び込んだ。
ー 香花館 東門前 ー
「さてと紹介するね♪『無を操る能力』の流咲 カイトだよ」
ハイテンションで門番の人の紹介をしているのは香花館の主、無限だった。
「んで、あの子が昨日言った優多だよ」
「ふーん…で、昨日『強い』って言ってたけど本当に強いの?全然見えないんだけど」
彼はガッカリしていた。こちらも多少傷つく…
「そういえばこいつにお前の仕事をやらせるだろ?
できるのか?」
「うーん…多分できると思う」
適当な返答の仕方で受け答えた。この人が本当に主なのか?と思ってきた。
「あ!あの!カカカッ!カイトさん!」
「何?」
「コッ!これから色々ご迷惑をおかけすると思いますが、がよっ!よろしくお願いします!」
すると困った顔をして、
「敬語はいい。堅苦しいから。普通にカイトでいいよそんな毎日カイトさんって呼んだらどう対処していいかわからないからね」
と、笑いながら答えてくれた。兄貴!この言葉は、この人のために生まれた言葉なのかもしれない!
「よしっじゃあそろそろ中を案内しなきゃね♪門番さん!今後もサボらないようにね」
「門番さんって言うな。それに俺はサボらない」
ー香花館 エントランス ー
香花館。見た目は白と青を基調とした建物で結構綺麗。エントランスのホールは広く、見渡すと鏡がいくつかあった
「それと館内の部屋に行くにはそこらへんにある鏡を通していけるから」
無限の性格を既に少し把握しているのかなんだか嫌な予感がした。ってかそれしかなかった。明らかに最後の説明は雑でしかも適当に言ったような感じだった
「まぁあとは自分で見学してね♪」
やっぱりそうだった。
僕は残念な気持ちとまあいいかと許す気持ちを持ち。色んな鏡に向かって見学をした。
でも、考えてみればあのまま、無限が迎えに来なかったら自分はあの世界で1人取り残されたままだった。そう考えると、無限にも感謝しなければいけない。
そういえば、この香花刀…勝手に持ち出してきてよかったのかな?まあいいか。