夢違え、この世
朝の7時、無限は庭の木々に止まっている多種多様な蝉の鳴き声に目を覚ました。
「あれ?お目覚めになりましたか?」
その光景に無限はぎょっとした表情で見た。
それは、ベットの横にいた優多に向けてだ。
「あれ?どうなさいましたか?どこか具合でも…」
と、差し伸べてきた優多の手を無限は酷い睨み顔で強く弾き返した。
「く…くるなァァァァッ!!」
その無限の酷い顔や、言動に優多はびっくりして、その場でこけてしまった。優多の表情は、酷く驚いて固まっていた
「む、無限…さん?」
優多は驚きを隠せない表情で、無限の名を呼んだ。
「だ、大丈夫…問題ないから……ごめん…優多…ハハ、ハハッハハ…」
優多は明らかに無限がおかしいのに気づいた。
物凄く窶れた顔だ…何かあったのだろうか?
無限は未だに震えが止まらなかった。
あの出来事は夢だったのは分かるが、やはり
『恐怖』
は身体と脳内に、しっかりと染み付いている。
あの時の事を思い出すだけで、身体が動かなくなる。それどころか何もかもが“怖い”
“ブラックホールの顔面”
それは、昨日見た夢。
小さなブラックホールの顔を持つ人間に殺された夢。
静か過ぎる薄暗い道に能力も使えない中、
さっきまでいつもの“見慣れた顔”の優多は“ブラックホール”のように何もなかった。
そこには、優しさの笑顔も何もなかった。
トラウマだ。多分優多や桃香とは数日間まともに話せそうにない…それに、まともに外にも出れないだろう。我ながら厄介なものと関わってしまった…
1ヶ月経って、ようやく外の気温も景色も彩りよく落ち着き始めた季節になった。
あれから無限は少しづつではあるが、優多や桃香の接触が可になってきた。同時に外も小範囲だが、歩けるようになった。
最近無限は、“夢が具現化”する
『夢化夢幻』
と言う物が起きていると聞く。それに恐ろしい事ばかり…
“異形”や“怪異”に半殺しにされたり、“正体不明”の1日病、百日病、千日病などにかかったり…
だが、これに至っては、既に無限が優多に頼んで調査済みである。
それで、気になるところ…
やはりこれは、
また、怪異達の仕業であった。
しかし、これはあくまでも、“情報”だ。
事件の主犯者、共犯者達の名前、住所といった詳しい事は分からない。
ただ、分かる事は事件に直接関係する、
『夢の具現化』
今現在、正規登録してないのを含めて多世界は、300以上。それに、最近発覚した“次元”を含めると、約8005(今現在確認された世界)ととんでもない数だ。
そこのどこかの世界に犯人がいる可能性とすると、
1/8005。
または1/8006(新しい世界にいる可能性)。
または、x/8005(8005の世界の1つの世界に犯人含めた仲間達がいるとは限らない)
それで、次元を含めた事件の手掛かりとなる多世界は159個(地形などを考慮した上で出た数)となるから…
別の計算になるが、
159/x。または、159/8006。
となる。
つまりこれはどういう事か、簡単である。
8005の世界の夢を具現化させるのに犯人は159の数が限界だという事だ。
ちなみに、コルピタンの法則を使えば解けると言うが、公式があまりにも長くわかりづらいので、暗算だ。
「おーい♪優多〜」
さて、一人考察が終わったところで優多を呼んだ。
ガチャリとドアを開け。そして入ってきたのは…
「ギャアアアアア!『積み重なった本』が歩いてる!」
その積み重なった本が床に置かれると、ドンッと重々しい音を立てた。相当重いのだろう…
するとその本の柱みたいになっているところから優多が出てきた。
「違いますよ…僕ですよ僕。陣之内 優多です……お化けなんかじゃありませんよ」
と、呆れ顔で無限の方へ歩を進め言った。
「頼まれた資料書、メモ、参考書、調査書全部持ってきましたよ」
と、優多は本の柱を叩きながら言った。
「ありがとうありがとう♪重くなかった?」
「小指で持てるぐらい重力を軽くしたので、全然問題ありません」
「そっか♪なら大丈夫だね♪じゃあ僕はこれからこの本を使って事件の細々した事を調べるから、優多は、自分の仕事に戻って良いよ」
と、無限はその本の柱を持って優多に別れを告げた。
が、あまりにも本を持つ無限の足取りが、フラフラとこけそうで見ていられなかったため、優多はしょうがなくその本の柱の半分を持ってあげた。
本当は無限が持ってるもう半分の本の重力を軽くさせたいのだが、
たくさん能力を使いすぎると後々自分の体力や免疫力などの力が薄れてしまうので(もちろん時間が経てば戻る)使わない。
と、同時刻。
とある世界で、何らかの実験をしている輩がいた。
まあその事に対して、僕は優多達にヒントを与えるような事はしない。だってこれに対しては、今後の物語で避けられない事実なんだし、それにこういった
“避けられない事実”。
だからこそ、何らかの『予知』が事前に起こったりする。それも結構前の方に
“伏線”
として…
僕の名は、
古山 結城
僕は人間ではなく神に、近い存在だ。
僕の能力は、人の運命と未来が全て分かり、その者の時間を自由に行き来できる能力を持っている。
だが、僕には年齢というものがない。
その理由として、
ほぼ能力が時間に関係するため、未来に行ったり過去に行ったりするため、自分の年齢というものも老いたり若くなったりするのだ。外見は全然変わらないが…
ようは、
過去や未来を頻繁に行き来するから成長できないってこと。
まあ、これらを話して本当に理解してくれるのは古くからの良き親友であり家族であった開智 無限しかいないのだが…
まあ彼は、常に法に従い、それを破って生きている。いわば、“滅茶苦茶”なのだ。
事がよく片付いたことなど、仕事以外何1つとしてない。ある一方方向で人格が破綻しているやつなのだ。
だから、過度な嘘のような本当の話を聞き入れて、理解できたのかもしれない。




