表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Five Knives  作者: 直弥
第五章「後生」
38/47

その1

「よしっ」

 日本、関東某所のとある山奥で、一人の男がぐっと拳を握り締めていた。少年から青年の変わり目、見目十代後半か二十歳といったところ。唯袈裟を着ながらも、僧というにはあまりに俗っぽい風貌をした彼の名は青木春竜。


 ――この成功率やったら実戦でも使えるな……。なんとかぎりぎり間に合ったわ。待っとけよ、一糸ぐらい報いたる。


 何らかの決意を固めた春竜は、山を下りるために踵を返す。その背中、袈裟は焼け落ちて、筋骨隆々とした肌が露出していた。


「うわっ、えらいことになってる! やっぱりちゃんとした兵装着とかなアカンか」

 春竜がふうっと溜息を吐いて肩を竦めたところで、一羽の小鳥が飛来し、彼の眼前で騒ぎ立て始めた。一見してスズメのようであるが、腹は黄色く、鶯色のとさかのようなものがある小鳥が。

「チチチッ、チチッ、チチチチッ」

「ん?……あ! 鞍馬のじっちゃんのとこにおった送り雀か」

 小鳥の正体に気付いた春竜はぽんと手をついて、改めてその鳴き声に耳を傾けた。


 送り雀。猫が猫又へと変化するように、スズメ目のある鳥が変化したそれは、山において人間へ、魑魅魍魎の存在を警鐘すると云う妖鳥。春竜の眼前に現れたのはその一個体。彼の師が属する一派において、連絡係として重宝されているもの。


「チチッ、チッ、チチチッ、チチチチッ!」

「………何言ってるか全然わからん」なればそこはやはり、魔術を使うより他ない。春竜は自身の右の耳朶を摘まんだ。「ええっと、『知り合いのカラスに聞いたんだけど、ワイズネルラが南米にて陰陽師と交戦したらしい』やて?」驚きを隠せないながらも、春竜は更にその先の報告を促す。「……『しかも、ワイズネルラの力を暴いた』っちゅうんか? で、その陰陽師はどうなったんや? まさか」

「チチチッ、チッ」

「そ、そうか。無事なんか」春竜はホッと胸を撫で下ろし。「報告ありがとう。鞍馬のじいちゃんによろしく言っといてくれ」

「チチッ!」

 敬礼の真似事を見せて飛び去る送り雀の背を見送りながら、春竜が思案する。


 ――とりあえず『連合』の方に顔出してみるか。ワイズネルラの力の正体は、そっちに伝わってるみたいやし。ああ、でもその前に服着替えらな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ