リナの家①
「あんたの部屋はここだから」
リナは学園長の執務室でイヤイヤ霆を自分の家に住まわせる事になったので、学園長の執務室から出た後、物凄く不機嫌な気持ちを込めたリナの最初の一言だった。
ランプを持ってリナが暗い部屋に入り、3つのロウソクに火をつけて部屋を明るくする。
明るくなった後、霆は部屋の中に入る。部屋は六畳位の広さのある部屋で、窓からは校庭が見える。使っていない部屋とういう事だったからホコリだらけでベットもないだろうと霆は覚悟していたが、意外と綺麗になっており、シングルベットと机も置いてあった。予想外にいい部屋だったので、一応お礼を言おうと霆がした時だった。
「じゃあ、私は自分の部屋に行くから、同じ家にいるからって変な事をしたら、ただじゃおかないからね」
と、リナは不機嫌な声で言い放ち、ドアを『バタン』と閉めて霆の部屋から出て行ったのだった。
霆は部屋にあるベットに寝転がる。布団は柔らかく寝心地がいい。
(だが、リナの性格は本当に最悪だな)
日本の東京で雷に撃たれて、いきなり見たことのない中世ヨーロッパのような雰囲気のある場所に来て、日本人とはまったく違う容姿のリナに会い、死んでしまったのだと霆は思った。だが、リナや学園の教授、学園長に会い、話を聞いていくと、霆は死んだのではなく、どうやら《姫巫女》と呼ばれる魔法使いが使う《神具》として異世界に来てしまった事とがわかり、召喚者のリナと同じ家に住む事になってしまった。
霆の召喚者であるリナはあんまり話してもいないにもかかわらず、上から目線で、どこの馬の骨だかわからない身分の低い男だからとかと言って、やたらバカにしてくる! 《神具》は《姫巫女》が使う魔法を使うのに重要な道具という事だが、こんな最悪な出会い方をしてしまった以上、霆は絶対にリナの為に働きたくない、と思った。
そう霆が考えていると、異世界に来てようやく一人になりホッとしたのかお腹が空いてくる。
(そういえば、こっちに来てから半日以上、ちゃんとした食事をとってなかったな)
霆が異世界に召喚され、学園長の執務室に向かう時には外が明るかったにもかかわらず、リナの家に来る時は暗くなっていた。
リナに食べ物をもらいに行くか? けど、ようやく嫌な印象のあるリナと離れる事が出来たのに、また会いたくないし、嫌な印象のあるリナに食べ物をもらいに行くなんて感情的にしたくない。結論としては、リナに食べ物をもらいに行きたくないという事だな、と霆は思った。
(仕方がない、何もやる事はないし、起きていると空腹が気になるから、このまま寝てしまって気持ちをまぎらわせるか……)
霆がそう考え、ベットとで眠りにつこうと目をつぶった時だった。
部屋のドアに『コン、コン』とノックがあり、聞いた事にない少女の声で、
「シモのお世話に来ました」
と言う声が聞こえて来たのだった。