《神具》召喚③
「まだ、確認したい事はたくさんあるが……、まだ、《神具》の召喚儀式はちゃんと終わってないのだな。
リナ、早く《神具》の召喚儀式を終わらせてしまいなさい」
霆、リナとミヤルザが《神具》を召喚する儀式を行う場所から学園長の所に来て、一通りの説明をミヤルザが学園長に行った後の学園長の第一声だった。
学園長は、イリイスと言う。霆はイリイスに会うまでは、学園長と言うからには年取ったおっさんだろうと思っていたが、実際には違って少女のような身なりをしていた。歳は中学生位に見える。髪は長いブロンズ色で後ろで一本に縛っており、目が青い。
リナは学園長室に来るまでに泣き止んだが、「なんで私ばっかりこんな目に」とか、「優れた魔法使いになる為に勉強をしたりしてちゃんと努力してるのに」とか、「魔力量だけなら、学年で一番あるのに」とか、「霆なんかを《神具》なんて認めない。絶対になんかの間違いよ。もう一度やれば、ちゃんとした《神具》が出てくるはず」などとブツブツと呟いていた。
そんな状況でリナはイリイスの言葉を聞いた事になるので、反発し、
「お断りです。私は霆を《神具》ではない、と思っています。
だから、《神具》の召喚儀式をやり直したいと思っています」
「それはできない。
状況からして、霆が《神具》である事は間違いない。
神々からの贈り物である《神具》をすでにいただいているにもかかわらず、再度神々から《神具》をもらおうとすると災いが起こると言われている。
だから、霆が《神具》かどうか確かめる必要があり、確かめるのには、《神具》の召喚儀式を最後まで行うのが一番いいのだよ」
「《神具》の召喚儀式を続けるという事は…………ーー」
「そう、霆とキスをする必要がある」
リナが顔を赤らめ、恥ずかしそうにして最後まで話をしなかったので、イリイスが最後まではっきりとした声で言う。
リナは顔を左右にブンブンと振り、人差し指を霆に向け、イリイスに必死に訴えるようにし、
「私はこんな奴とキスなんてしたくありません」
「こんな奴とは、今後一生一緒にいる事になるかもしれない《神具》に対してひどい言い方だな」
「学園長、そもそも、私は霆を《神具》と思っってません。何かの間違いだと思います」
「では、杖も使えず、《神具》も召喚できないリナは、魔法を使うのにどうするつもりなのだ?」
「私のご先祖様であるスズリミルは、杖も《神具》も使わなくても難易度の高い魔法を使えたと聞いています。
スズリミルの血を引いている私なら訓練すれば同じような事が出来るはずです」
「スズリミルの伝説は私も知っているが、スズリミルは《神具》を使えばさらに奇跡の様な魔法も使えたとも聞いている。
だから、《神具》は《姫巫女》にとって必須の持ち物なのだ」
「そうは言っても……、霆と《神具》の召喚儀式を続けるのは、私は絶対に嫌です」
プイッ、とそっぽを向く、リナ。
イリイスは困ったような表情を霆に向けて、
「リナは性格が負けず嫌いのクセに、打たれ弱い所があって口が悪い所があるが、女の私から見てもルックスは可愛いと思う。
霆は男として、リナとキスをしたくないか?」
「ーーなっ……⁉︎」
そっぽを向いていた、リナがイリイスの言葉に反応し、顔を真っ赤にし、霆の方を恥ずかしそうに上目遣いで見てくる。