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契約⑨

「では、作戦を伝える」


 繁みに潜み、小声だが聞き取りやすい声で言うミヤルザ。

 ミヤルザの表情から気合が充実している事が伝わってくる。なんとかしてもリナを助けようとしてくれているのだろう。

 霆もエフィもミヤルザの話しかけに対して、無言で頷き応える。

 ミヤルザは霆とミヤルザの意気込みを確認するかの様に目を見つめた後、


「まず、手紙にはリナがいる場所だけ書かれており、それ以外については何も書かれていない」

「誘拐した目的や要求もですか?」

「そうだエフィ、だから罠が数多く仕掛けられている可能性がある。

 だから、まず私が正面からリナを救出に向かいたいと思う。

 不測の事態が発生した時に、エフィが魔法で援護して欲しい」

「わかりましたわ。

 リナを拘束する為に土魔法で作られた足枷と手錠を、隙を見て私の水魔法で壊しておきますわ」

「頼む」


 エフィに役割を依頼するミヤルザ。


「それで、俺は何をやればいいのでしょう?」


 リナ救出作戦の役に立ちたいと思って霆は来ている。


「霆は……、ここで待機だ」

「……なっ、何でですか?」

「わかってくれ、魔法が使えないと魔法に対処できない」

「じゃあ、何で俺がここに来たんだかわからないじゃないですか?」

「いや、意味はある。リナが助かった後、こういう場面にいたという経験は大きな財産になるだろう」

「見ているだけってーー」

「ダメだ! 待ってろ。

 霆がリナ救出作戦に参加して、霆が捕まってしまったり、怪我したら意味がない」

「ーーうっ……、」


 反論できずに言葉を詰まらせる霆。

 結局魔法が使えなければ、何もできないのだ。

 霆はさっきの授業中の時に《姫巫女》達が魔法を使っている所を見た。どれも日本の東京にいた時に起こり得ないものばかりで、拳銃なんておもちゃに見えるような威力の魔法もたくさんあった。魔法が使えなければ、魔法の攻撃を防げない。リナを助けに来たのに、霆が何かしようとして足を引っ張ってしまったら、本末転倒になってしまう。

 霆は仕方がなく、「わかった」とミヤルザに言う。

 ミヤルザは自分が立てた作戦を伝え終わったので、「じゃあ、行くぞ」と言いながら立ち上がったのだった。

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