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契約⑧

「教授にはかないませんわね」


 上品な中にも色っぽさのある声が、林の中から聞こえてきた。

 姿を現したのは、髪がスカイブルー色で長く、大人っぽい雰囲気がある胸が大きい少女。

 エフィだった。

 霆は以前、リナと剣術の訓練をした時にエフィと会った事がある。

 ミヤルザの手に光が集まりだし、赤い刀になる。山賊とかが持っていそうな刀の形状に似ている。

 おそらく《神具》だろう。光が集まり物が作られた様子から以前イリイスに見せてもらった《神具》の表れ方に似ている。

 ミヤルザは刀をエフィに向け、警戒している表情で、


「リナを誘拐した仲間か?」


 と、質問を投げかける。

 リナを誘拐したのは一緒に授業を受けていたアキミナになる。アキミナの他に学園の生徒が誘拐犯の仲間がいてもおかしくはない。


「いいえ、違います。

 私もリナ救出作戦に参加させていただきたいと思いましてきましたの」


 唐突な事を言うエフィ。

 両手を上げている。ミヤルザと霆に対して危害を加える気はない、と伝えたいのだろう。

 だが、ミヤルザは刀を下ろさない。リナが授業中に誘拐されるという緊急事態になる。いきなり背後から現れた相手に対してすぐに警戒を解くのは不用意過ぎると判断したのだろう。


「急にどうしたのだ?

 リナ救出作戦に参加する希望者を募った時に、誰も手を挙げなかったはずだが」

「学園で嫌われているリナの救出に行きたいとあの場で手を挙げると、私の今後の立場が悪くなってしまうので挙げませんでした。

 リナを誘拐した仲間ではありません。

 だから、刀を下ろしていただけませんか?」

「……、いや、帰れ!

 さっきリナがいる周りを観察して、私と霆の二人で救出する作戦を立てた。

 救出作戦に参加しないと言っていた者がいきなり来て、救出作戦に参加したいと言われても困る」

「教授は私が裏切るかもしれないと危惧して、『帰れ』と仰っているのだと思いますが、私は裏切りません。

 魔法を使える者が一人でも多い方がいいはずです」

「それはそうだが……」

「さっき、アキミナの顔を私も見ましたが、あの状況とは私は違います」

「……気付いたのか?」

「はい、」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 『あの状況』っていったい何を言ってるんだ?」


 疑問を投げかける霆。

『あの状況』とかって意味ありげな言い方をされてしまっては気になる。


「今は誘拐犯が指定した時間に近づいてきているから、戻ったら『あの状況』について教える」


 話づらそうに言うミヤルザ。

『あの状況』とはあまりいい状態ではないのだろう。

 ミヤルザは『うん』と頷いた後、エフィに向けていた刀を下ろし、


「わかった。リナ救出作戦に参加してもらう」

「ありがとうございます」

「ああ、万が一、リナを誘拐した犯人の仲間だった時に、見える所にいた方がいいからな」

「教授、一言多い気がしますわ」


 口を尖らせ、拗ねたように言うエフィだった。

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