《神具》召喚①
「今日こそは絶対に成功させてやる!」
神々や精霊から祝福を受けた《神具》を召喚する為にリナ=シャプリエは、儀式を行う場所の扉の前で気合を入れていた。杖で魔法を使おうとすると毎回杖を壊してしまって魔法を使う事を禁止されている《禁術の姫巫女》と呼ばれているリナであるが、ヘーパイストス学園へ入学た者は全員《神具》召喚を行う事になっており、リナも例外ではなかった。リナはこれから3度目の《神具》を召還する儀式を行う事になる。
(学園での過去の失敗例は、体調が悪くて召喚中に集中力が切れてしまったものだけだったのに。
なんで私が二回も失敗することになるのよ)
リナは悔しい気持ちを表情に出さないようにして、心の中で苦々しくつぶやいた。
そして、最初の《神具》召喚の儀式を行う前の時を思い出す。
◆◆◆
リナは《神具》召喚の儀式をを成功させる事によって、不名誉な《禁術の姫巫女》という二つ名から誰からも尊敬されているような二つ名に変えさせようと考え、何度も《神具》召喚に関する教科書を読み込んでいた。
リナの意気込みは同じ教室にいる誰もが気づくほどで、リナの様子が気になった同じクラスのエフィ=アメレールは、リナに近づき、見下した表情をして、
「今日はいったい何を召喚する気なの? ボロ雑巾?」
「そんなモンを召喚するわけないじゃない。
絶対物凄い《神具》を絶対に召喚するんだから。
エフィこそ石っころでも召喚するんじゃないの?」
「そんなモンを召喚するわけないじゃない。
学年一の成績優秀者で、リナよりも胸も大きくてスタイルバツグンの私が、石っころなんて召喚するわけないじゃない。
今まで通り学年一の《神具》を召喚して見せるわ」
「ぬぬぬぬぬぬっ……、地方の田舎の村の成り上がり風情のエフィごときが学年一というのがおかしいのよ」
「名門貴族にもかかわらず今までちゃんと魔法を使えたことのないリナよりもマシだわ。
どうやら入学試験の時に学年最高の魔力数値を出して驚かせたのがリナの絶頂期だったのかもね」
「そんな事はないわ。
今日の《神具》の召喚でみんなが驚くような《神具》を召喚して見せるんだから」
「ふぅーん。驚くようなねぇ……。
まあ、確かにいつも驚かせてもらっているわ。
魔法が全く使えなくてね」
「…………、エフィはいっつも私に対して酷い事ばかり言うわね。
私にとって学園にきて初めてできた友達だったのに……」
「そう、その頃が懐かしいわね。
今日の《神具》召喚儀式は期待しているから」
リナはそう言うと《神具》召喚儀式の時間になったので、儀式を行う場所に向かって行ったのだった。
そうして、リナとエフィは《神具》召喚の儀式を行う。
その結果、エフィはネーレーイスという女神から祝福を受けた水魔法と相性のいい槍の《神具》を手に入れ、先生達からも学年一位の優れた《神具》との評価を受けていた。
一方、リナは《神具》召喚の儀式を行ったのだが、その日には何も現れず、エフィに物凄く笑われた。
◆◆◆
リナが最初の《神具》召喚の儀式の事を思い出し終わると、昨日の事のようによく覚えていて、心の中にドス黒い怒りの感情が渦巻いている。
(今日こそ絶対に《神具》を召喚させるんだから)
リナは心の中でもう一度決意を強く呟き、儀式を行う場所の扉に手をかけたのだった。