契約④
「リナが一人ぼっちで心配なので、ちょっと行ってきますね」
昼食を食べている時にユキミルが、霆に言ったのだった。
今日の昼食はバーベキューになる。焼けた肉や野菜の串を持って《姫巫女》である少女達は、仲のいい友人達と集まってワイワイと喋りながら話をしている。
だが、リナだけは、一人ぼっちだった。
授業中も一人ぼっちだったし、昼食の時も一人ぼっち。リナに対していい感情を持っていない霆ではあるが、流石にかわいそうだと思った。
霆はユキミルが優しいなと思い、
「わかった。作業がなんかあったらユキミルの分もやっておくから大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
ユキミルは時々見せるお姉さんの顔をして、リナの所に急いで向かったのだった。
(まあ、作業って言っても、ほとんどやる事はないんだけどな)
霆は《姫巫女》のサポートをする係として来ている。だが、サポートをする係の人はたくさん来ているので、霆がやる事はほとんどないのだ。だから、昼食を食べていたのだ。
霆が昼食を再開すると、ユキミルがリナの所に着いたのが見える。リナがさっきまでつまらさそうにしてたのに、笑顔に変わったのがわかる。
(だが、リナは昼食をいつも学食で食べていると聞いているが、一人ぼっちで食べているのだろうか?)
疑問に思う霆。
相当辛い思いをしているだろう。今の状況を見ているとリナに友達はいなさそうだ。ユキミルから以前聞いた話の通り、あんな状況だったら性格が変わってしまうかもしれない。耐えられず学園をやめてしまうものもいるだろう。
リナは神々の子孫で魔法が本来であれば使えるはずなのに、使えない。リナにとってとっても恥な事になる。例えるならば、中学生が九九が出来ない様なものなのだろう。
身分制度が厳しいこの世界。『貴族=魔法が使える』という流れであれば、『魔法が使えない=貴族でない』という考え方もできる。もしかしたら、リナは学園で貴族として仲間として見られていないかもしれない。すると、一人ぼっちになっているのも納得できる。
(もうちょっとリナに優しくすればよかったかな)
霆は流れでそう思ってしまった。
けど、リナからやられた事をすぐに思い出して、首を左右に『ブンブン』と振る。
(いや、さっき思った事は気の迷いだ)
霆がそう思った時だったーー
「キャァァァーーーーー」
と言うリナの悲鳴が聞こえてきたのだった。




