剣の訓練⑦
「エフィにデレデレして、本当に発情期の猿の様な豚ね」
「………………」(『猿の様な豚』ってもうなんなんだかわからなくなっているのだが……)
剣術の訓練をして休憩している時に、エフィから話しかけられて不機嫌になったリナは霆を連れて家に帰って来たのだった。
家に入るなりリナは、目を釣り上げて、人差し指をビシッと霆に向けて、そう言ったのだった。言葉に怒りがこもっているのが良くわかる。
霆としては、エフィに対してデレデレしているつもりはない。リナが言っている事はいいがかりだ。
「いや、俺はデレデレなんかしていない。
というより、エフィってどんな奴なんだ?」
「エフィは私の同級生で何かと嫌なの事を言ってくる意地悪女よ」
「そうなんだ」(エフィはリナの事を良い意味で気にしている様だったが……)
「『そうなんだ』じゃない。
私にエフィの事を思い出させるなんていう嫌がらせをするなんて、霆にはどうやらお仕置きが必要なようね」
リナはそう言って、持っていた木製の剣を霆に向けて振り被る。
「おわっ……! これ以上殴られたら死んじゃう!」
霆は我ながら情け無い事を言ってるな、と思ったが、リナから殴られない様に大げさに伝える。
「……仕方がないわね。
晩御飯抜きで許してあげるわ」
「おっ、おい! 俺はまだ昼食をちゃんと食べてないから、昼食は食べてもいいんだよな⁉︎」
「ダーメ! ユキミル、そういう事だから、今日は霆に餌をあげちゃダメだからね」
「わかりました」
ユキミルがキッチンからやってきて言う。
剣術の訓練でボコボコにされた上、食事までもらえないんじゃ横暴だ、と霆は思った。リナによって異世界に召喚されてからの事を思い出すと、リナから散々酷い事を言われたり、酷い事をされてきた。リナと一緒にいて酷い事をされるくらいだったら、家出してやる!、と霆は決意し、ドアに向かって歩いて行く。
「どこへ行く気なの?」
リナの不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「………………」
霆は何も言わずにドアを開けて、家の外に出たのだった。