剣の訓練④
「学園長、それで、なんで俺達は呼ばれたのでしょうか?」
『霆を今後どのようにするのか?』とういう事で呼ばれたはずなのに、一向に本題に入らないので霆がしびれをきらいてイリイスに向かって訊いたのだった。
イリイスは、うん、と頷き、
「では、本題に入ろう。
まず、霆をリナの性奴隷にしようと思っている」
「………………」(学園長、『性奴隷にしようと思っている』っていったい何を言ってんの⁉︎)
「奴隷は奴隷でも、こんな薄汚い犬である霆を性奴隷になんかしたくありません」
「………………」(安心しろ、リナ! 俺もリナの性奴隷になりたくない!)
「リナ、間違えた。霆を学園全員の性奴隷にしようと思ってる」
「………………」(学園長が言ってる事が、もっとひどくなってるよ! 学園長、どうしちゃったの⁉︎)
「学園全員が霆を性奴隷にしたとしても、私は霆を性奴隷にしません」
「………………」(リナ、そもそも俺は誰の性奴隷になる気はない)
「実は、私の性奴隷にしようと考えている」
「………………」(ーー学園長……、もう、冗談で言ってるよな! もう、遊んじゃってるよな! 中学生みたいな見た目だけど、実は聡明なんじゃないかって思ってた俺が間違いだったよ)
「学園長、ではどうぞ!」
「………………」(あれ、リナ、ここで学園長にどうぞっておかしくない⁉︎ 俺もリナよりも学園長の方がいいけれどもさ。ここは、『私の物を取らないでよ』じゃないの⁉︎)
「では、霆をいただきます」
「………………」(学園長もここで『いただきます』って、おかしいよね⁉︎ 学園長はちゃんと俺の事をリナの《神具》として導こうしてたよね⁉︎)
「じゃあ、私はもう霆と関係ないので帰ります」
では、とリナは言って、厄介事が終わって良かったという表情でドアに向かって振り向く。
イリイスは、さっきまでニコニコと話しをしていたのに、一気に険しい表情に変え、
「って、待てぇーい!」
「……どうしたのですか?」
話しが終わったにもかかわらず、イリイスから呼び止められてよくわからない、といった感じで振り向きながら言うリナ。
「そんなんでいいの?」
「何がですか? 霆をどうするかの話はまとまりましたよね?
学園長に霆を差し上げます」
「私はそれが不服なのだ。
なぜ私が『霆をいただきます』って言ったら、簡単にあげてしまうのだ?」
「私は学園長から欲しいって言われたからそれに従ったまでです」
私は間違っていない、と主張をする様に言うリナ。
イリイスは、はぁー、とため息をついて、頭が痛そうに手を当てて、
「誰かに命令されたからって、自分の《神具》を簡単に手放す奴がいるか?
普通ならば、どんな事があっても『嫌だ!』って断るところだぞ」
「そうかもしれませんが……」
反論で何かを言いたそうだが、言うのをやめるリナ。
イリイスは、リナの方を見て、
「霆にはリナと同じ授業に出てもらおうと思っている。
だが、すぐにリナと一緒に授業に出たとしても霆が初めての事だからわからないだろう。
だから、リナには放課後、霆へいろんな事を教えてもらう事になった」
「ーーえっ……⁉︎」
「『ーーえっ……⁉︎』じゃない」
「わかりました、仕方がなく、仕方がなく、仕方がなく、学園長の言葉に従います」
「『仕方がなく』を3回も言った事に一言言いたい気持ちがあるが、今はやめておこう」
「学園長、そうすると、霆に教えるのは、魔法や歴史に関する勉強から剣術訓練も含めてという事でよろしいのでしょうか?」
「そうだ。
霆が一緒に授業に出るようになるのは進捗具合を見て考えよう」
「わかりました」
いい事を思いついたかのように、ニヤリ、と笑みを浮かべるリナ。
リナは優しい微笑みに変えて、霆の方を見て、
「霆は、勉強と体を動かすのはどっちが好き」
「俺は体を動かす方だな」
「そう、それじゃあ、剣術の訓練から教えてあげましょう」
「わかった」
気軽に返事をする霆。
魔法や歴史の勉強は霆が日本の東京にいた時に習わなかったもの、というより全然知らない事になるだろう。だったら、まだ体を動かす方が絶対にいい、と霆は思った。
そうして、リナと一緒に学園の敷地内にある林の中に来て、木製の剣を構えていたのだった。
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