リナの家③
「ところで、名前は……?」
霆は初対面のメイド服を着た少女が机の上に食事を並べている時に話しかけたのだった。
メイド服を着た少女は作業をやめ、霆の方を向いて、
「あっ、そうでしたね。自己紹介がまだでした。
私はリナお嬢様のメイドをしております、ユキミルと言います。
今後ともどうぞよろしくお願いします」
と、言いながら、綺麗にお辞儀をしたのだった。
霆は元々いた日本の東京でそんな風に自己紹介をされた事がなかったので、やや驚きながら、
「こちらこそよろしく。
けど、さっき言ってた『シモのお世話』の『シモ』って、ひょっとして身分の下っていう意味をピンク系の意味に勘違いさせようとして使った言葉なの?」
「そうです。よくわかりましたね。
霆様は異世界からきたと聞いていたので、ひっかかると思っていたんですけどねぇー。
失敗しちゃいました」
えへへ、と明るく笑いながら言うユキミル。
霆はそんな面倒くさい事をするんじゃないと思いながら、苦笑いをする。
「ユキミルも魔法が使えるの?」
「私は神々の子孫ではないので魔法は使えません」
ユキミルは一般常識にも関わらず何でそんな当たり前の事を聞くのだろうと霆をややバカにした口調で言う。
霆は『神々の子孫』って、これまたファンタジーの様な話だなと思った。
「……神々の子孫⁉︎
その……、俺は知っている通り異世界から来たので、どういう事なのかを教えて欲しいんだけど……」
「ーーえっ……、異世界では魔法使いって本当にいないのですか?」
「いない」
「嘘をついているわけではないですよね?」
「ついてない」(なんかくどくど聞いてきて面倒くさいな)
「そうですか……、私にとって魔法使いがいるのが当たり前なので、魔法使いがいない世界なんてまったく想像できないのでなかなか信じられないです」
「それは、逆に俺もだ。
俺も魔法使いがいる世界があるとは思ってなかったから、まだ魔法があるなんて信じる事が出来てない」
「じゃあ、今度、私に霆様がいた世界について教えて下さいね?」
「わかった」
「そしてら、神々の子孫ついてお話をする前に、この世界の身分制度からお話をした方がいいと思います。
私は食事の準備が終わって立ち話もなんですから、2人でベットに座ってお話をしましょう。
まさに『シモのお世話』ですね⁉︎」
「そういった冗談はいらない」
霆はユキミルの『シモのお世話』という表現をうっとうしく思い、語調にも表情にもでてしまったと思う。
だが、ユキミルは霆のそんな態度を気にせず勝手にベットに向かって座って、ユキミルはそう言って、ポンポンとベットを叩き、
「ここで並んでお話をしましょう」
「……わかった」
仕方がなく、ユキミルと一人分の距離を開けてベットに座る霆。
「あっ、これから『シモのお世話』をするのに、離れて座ってはダメです」
ユキミルは霆と肩が触れるかどうかまで距離を縮めてそう言ったのだった。




