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リナの家②

(『シモのお世話』っていったい何を言っているのだろうか……?)


 ベットに寝転んでいた霆がお腹を空かせていたのをまぎらわせようと目をつぶった時に、いきなり部屋のドアにノックがあり、『シモのお世話に来ました』と言う少女の声が聞こえてきて、霆はどういう事だかわからず考えていたのだった。日本の東京にいた時の使う通りに考えれば……、『シモのお世話』っていうと……、ピンク系のアレの事だよな……? けど、今居る場所は日本の東京ではない。『シモのお世話』という言葉は今いる異世界では違った使われ方をするのかも知れない。日本では箸を使って食事をするが、海外ではスプーンやフォークを使って食べるような、場所によって風習が変わるというアレだ。そもそも、今いる家にリナ以外の少女がいた事が驚きだ。リナは家に入った段階で、どんな人がいるんだかちゃんと説明してから部屋の中に入れろよな! まあ、どっちにしろ、警戒して対応した方がいいかもしれない。

 そうこう霆が考えていると、少女からまた声が聞こえて来る。


「早く入れて欲しいです」


 少女からドアを早く開けるようにとの催促するものだった。ピンク系の意味に取れなくはないが、今は違うと思いたい。

 なので、霆は急いでドアを開けると、ドアの外に身長がそんなに高くなく、長い黒髪で、胸が大きいメイド服を着た少女がいたのだった。少女の横にはパンやサラダ、スープが乗っている台車がある。

 メイド服を着た少女は霆を興味深そうに見て、下から霆を覗き込むように上目遣いで見ている。


「あのー、シモのお世話に来たのですが……、中に入ってもいいでしょうか……?」

「いや、その『シモのお世話』っていったい何?」

「『シモのお世話』と言ったら、『シモのお世話』ですが……、いったいナニを言ってるのですか?」


 メイド服を着た少女はそう言いながら、不思議そうに霆の下の方を見る。

 霆はメイド服を着た少女から下の方を見られて、内心恥ずかしく思いながら、


「なぜ下の方を見る?」

「だから、『シモのお世話』をする為にですが……、ナニか?」

「ナニかって、こっちが聞きたい」

「逆にこっちが教えて欲しいです。

 私はちゃんと明確に『シモのお世話』来て、中に入りたいって言っているのです。

 そこに、ナニか意味があるのですか……?」


 メイド服を着た少女は下の方を見ていた目を、再び霆の目を見て上目遣いで見つめる様に言ってくる。

 メイド服を着た少女は明らかに意味ありげな視線を送ってきているが、おそらくこの流れからいって俺はからかわれたりしているのだろう。リナと一緒にいた時にリナは、男を相当身分の低い扱いをしていた。だから、このメイド服を着た少女も同様に男である俺を身分の低い扱いをしているのだろう、と霆は思った。だから、冷静に対応した方がいいだろう。


「すまない。さっきまで寝ていて寝ぼけていて頭が混乱していて変な事を聞いてしまった。

 食事を持ってきてくれたの?」

「……『シモのお世話』です」

「………………、」


 メイド服を着た少女が一瞬どうしようか悩んだ表情を見せたので、霆は問い詰めるように、ジーとメイド服を着た少女の目を見る。

 メイド服を着た少女はその視線に耐えきれなくなったのか、はぁー、とため息をついて、


「すみません、おっしゃる通りで、食事を持ってきたという意味で『シモのお世話』来たと言ってました」


 謝りながらも、テヘヘッ、と明るく言うメイド服を着た少女。


「そうか、食事を持ってきてくれてありがとう。

 何か手伝った方がいい?」


 霆はメイド服を着た少女がからかってきた事よりも、とてもお腹が空いている時に天からの恵みの様に食事がきた喜びの方が大きかったので、メイド服を着た少女に何も不満を言わず、お礼と共に手伝いを申し出る。

 メイド服を着た少女は一瞬戸惑ったようだが、笑顔を作り、


「……いっ、いいえ、大丈夫です。

 では、中に入って準備をしてもよろしいでしょうか?」

「お願い」


 メイド服を着た少女が台車と共に入りやすい様にドアを手で開けたままにする霆。

 メイドは中に入って、食事の準備を始めたのだった。

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