1夢 悪夢への入り口
目が覚めた。AM6:59
いつもより起きるのが早かった。
「あれは・・・悪夢だったのか?」
夢で起きた出来事。それは自分が殺されてしまう夢。
似た内容の夢は今までに何度も見たことはあるが、今回は違う。
「この胸の違和感・・・なんなんだ」
夢の中で撃たれた胸。変な違和感がある。急速に治った傷・・・いや何か違う。元から傷の痕はついてないし、今もない。
「なんか怖いな・・・」
夢のことが気になるが、今は学校に行く準備をしよう。
俺、加賀悠介は私立彩夢高等学校の2年生だ。
成績はいたって普通、容姿も割と満足している。友達も少なくない程度にいる。
親友もいるし、彼女だっていたこともあった。
そんな生活に慣れてきた今、ずっとこんな感じで生きていきたいと思う。
準備ができた俺は家をでて、学校に向かう。
「さすがに今日は早かったな。まだ彩夢の生徒を見かけない」
時間もまだまだある。今日はのんびりして行こう。
まだ胸の違和感が消えない。1日たったら治るだろう。
家から学校までは、歩いてだいたい20分ほどかかる。
今日はのんびりしてたせいか、35分もかかってしまった。
教室に着くと、誰かいた。
「おぅ、おはよう」
声をかけてきたのは、親友の上野和希だ。
「和希か、早いな。まだ8時だぞ」
「いつもはもっと遅いんだけど、今日は起きるのが早かったから」
「和希もか。俺も早く起きたんだ」
「ははっ奇遇だな」
それから俺達はいつものように世間話をして時間をつぶした。
授業もいつもと変わらず、放課後を迎えた。
「なあ悠介」
突然和希が話かけてきた。
「なんだ?」
「昨日変な夢を見たんだ」
「どんな夢だ?」
「悠介を殺す夢」
まさかとは思ったが、やっぱりそうだった。
「よくわかんないんだけど、気付いたら銃で悠介を撃ってた」
「やな夢だな」
「ほんとやな夢だったよ。俺が悠介を殺すなんて」
俺は昨日見た夢のことを和希には話さなかった。
正しく言えば、話せなかった。
なぜか話すなと頭の中で聞こえた気がしたからだ。
共通の夢を見るなんて不思議だ。
これが良い夢だったならよかったのに、悪い夢だからな。
「たかが夢だ。あんまり気にすんな」
「そうだな。そうするよ」
そうして俺達は帰宅した。
部屋に入って着替えた俺はベッドに寝転がった。
「和希も同じ夢か・・・しかも殺す側と殺される側・・・」
不気味に思い、俺は少し寝ることにした。
ひと眠りした俺は飯を食って、シャワーを浴びた。
夢は見なかった。
「今日は大丈夫だろ」
俺は布団に入り目をつむった。
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【私立彩夢高等学校】
まただ。
昨日と同じ夢。そして昨日と同じ場所。
昨日と同じ夢なら和希に撃たれるはず。
そんな気がしたから、俺は校内には向かわず学校の周りを歩くことにした。
「和希・・・?」
ちょうど学校の裏側まで来たところに和希がいた。
「悠介か?・・・ここ夢だよな?」
「みたいだな」
「昨日と同じ夢なんて信じられないよ」
「ああ。俺もだ」
「俺もってことは・・・悠介も昨日見たのか?」
「まあな。昨日・・・和希かはわからないが、撃たれて死ぬ夢を見た」
「そうだったのか・・・」
「おい・・・和希、それ・・・」
和希の手には拳銃が握られていた。
「うん。昨日も今も、夢の中に来たらなぜか持ってるんだ」
「危ないからそれしまえよ」
「ああ、ごめん。」
和希は拳銃をズボンとベルトの間に挟んだ。
「悠介も危ないよ。それ」
「え?」
和希が指さしたそこには、日本刀が腰にぶら下がっていた。
さっきまでこんなもの無かったはずなのに。おかしい。
「なんで銃やら刀があるんだ」
「悠介は確か、昨日は刀なかったよね?」
「ああ」
和希もそこには気づいていたらしい。
「とりあえずここにいても何もないから、校舎に入ってみるか?」
「そうだな」
和希の提案に俺は賛成した。
和希がいるなら少し安心だ。
校門まで戻ってきて俺達は校内へと足を入れた。
夢なのに現実かと思うほどリアル。
玄関前に来ると、そこには大きな掲示板がある。
いつもはそこには学校行事のお知らせや、中間やら期末テストの学年別順位が貼ってあるのだが。
「なんだこれ?」
和希は掲示板を見て俺に聞いてきた。
「ん?えーと・・・悪夢へようこそ。ここは現実であり夢である。なんだこれ」
掲示板に貼ってあった紙にはこう書いてあった。
☆悪夢へようこそ☆
★ここは現実であり夢である。
★校内に入るとゲームが始まる。
★現実に戻るには1人殺すか、殺される。
★殺されて現実に戻れば肉体に影響される。
★1人ひとつだけ武器が支給される。
★条件を満たせば殺した人の武器は報酬として手に入る。
☆詳しいルールは⇒
「ゲームってなんだ?」
「さあ?でも書いてあることを連想すると、殺し合いかな」
「殺し合い!?なんでそんな!」
「俺にもわからん。でも和希は昨日俺を殺したって言ったよな?」
「ああ。確かに悠介を殺した」
「その後、すぐに目が覚めたか?」
「いや・・・悠介が消えて動揺して、しばらくしてから目が覚めた」
「なるほどね・・・」
だいたいこの夢の内容がわかってきた。
殺し合いをする夢。
でも普通の夢じゃない。この夢は現実とリンクしてる。
昨日俺が目覚めたとき胸に感じた違和感はきっとそれだ。
「和希。ここを見てくれ」
俺は掲示板に貼ってあるさっきの紙の一部分を指さした。
★殺されて現実に戻れば肉体に影響される。
「これがどうしたんだ?」
「きっとこれはほんとだ。俺は昨日撃たれて死んだときにすぐに目が覚めた。起きたら胸に違和感があったんだ」
「それほんとなのか?」
「こんなときに嘘を言ってどうする」
「ほんとだとしたらヤバいことになったな・・・」
「ああ・・・とりあえず詳しいルールとやらを見てみようぜ」
俺達は☆悪夢へようこそ☆の隣に貼ってある紙を見た。




