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悩める竜と求める姫君

小説の文法無視で書きなぐりました。

全部書くと長くなるのでいろいろ省略してます。

 竜

 それはこの世界で強大と呼べる存在。

 人は竜の力を畏怖した。自らを排除出来る力を持った竜は、それだけで排除すべき敵と認識されたのだ。

 人の力とは竜に比べ微々たる物だ。だが、人は知恵を絞り、様々な手段をもって竜に対抗した。

 徒党を組み、魔術を使い竜を縛ろうとした者。

 罠、薬を使いその力を削り倒そうとした者。

 竜を殺すために作られた武具。皮肉にもその武具の素材として最も有効な素材は竜から取れたのだが。

 素材も高く売れ、さらには竜は宝を持っている、との話もあり竜に挑む者は少なくは無かった。

 そのほとんどは返り討ちにあったが、決して倒せない相手ではなかった。


 竜の討伐が可能だと知ると、人は竜の強大な力を求めた。

 その力を入手する事を可能にするためにさらに人は知恵を絞った。

 竜にも知恵があり、人の言葉も通じた。

 竜と取引をし、その力を借りようとした者。

 魔術を使い、竜を支配下に置く法。

 


 どうしてこうなった。

 竜はもう何度もそう考えた。が、やはりそれに答えなど出ない。

 自分は決して間違った事をしていないはずだ。その証拠に計画は順調に進んではいた。そう、途中までは順調だったのだ。

 

 およそ1年前、竜は里を出た。それはいくばかの本能と好奇心。外は危険だと分かってはいたが、それより興味が上回ったのだ。

 竜を求め、人々――冒険者と呼ばれる存在や、人の国の軍隊――が自分を狩りに来る事は分かっていた。

 それを出来るだけ防ぐため、人の手が入ってない山に巣を作り目立たないように生きる。

 そして、そのためにいろいろ画策した。

 まず、一族に伝わる人化の法。この魔法を使い人の姿になった竜は付近の村で情報収集やその操作を行った。

 多少でも竜の噂を聞いたならそれを否定し、その情報を元に竜の痕跡を消す手段を講じた。

 食料にしてもそうだ。竜はその巨体故に食べる量もそれなりだ。しかし、人化の法でその姿を変えれば抑える事は出来る。

 これにより、山の獣が大量に消えたとかの痕跡も無くなるはずだ。

 

 人には誤解されがちだが、竜は人に危害を加えたりはしない。それどころか人に憧れを抱いたりする竜も少なくは無い。

 竜が人に危害を加えるとすれば、人から危害を加えられた時のみ。いわば正当防衛である。

 ただ、人が竜を畏怖しているという事も知っている。竜がいるとなるとその実力を考えずに討伐するために人は武力を行使するだろう。

 故に、この山の竜は自分の存在を気取られないように過ごした。

 竜の姿に戻る事はなく、人に出会っても竜の存在を否定した。

 その手段は半年の安寧を竜にもたらす。

 そしてそれは半年しかこの安寧は持たなかった、という事だった。


 まず最初に来たのは冒険者だった。

 巣には里から持ってきた物が置いてあり拙い、と思った竜は幻惑の魔法を使い人を巣に近づけないようにした。

 それは成功し、冒険者は何も見つけれずに山を降りていった。

 その後数組の冒険者達が来たが、彼らも何も見つける事は出来なかった。


 次に来たのはこの国の軍隊だった。

 幻惑の法は、少人数相手は誤魔化せるが大人数を誤魔化すことは出来ない。

 竜はその姿を見せ、交渉をしようとした。決して危害は加えないからこの地に住まわせて欲しい、と。

 だが人はその言葉を聞こうとせずに武器を向けた。

 竜は仕方が無くその軍隊を蹴散らすしか方法はなかった。

 その後、報復を恐れた人々から貢物が届くようになる。

 

 軍隊を蹴散らした後は冒険者達が我先に、と押し寄せるようになってしまった。

 すでに幻惑の法の効果はない。竜はその身を守るために戦うしかなかった。

 人は罠を使い、薬を使い、魔術を使い竜を狩ろうとしたが、竜はそれを看破し生き延びる。

 竜は諦めこの地を離れようとしたが、ここまで準備してもこうなってしまったのだ。どの地でも一緒だろう、と思う。

 だが後に竜は他の地に移るなり、里に戻るなりしておいたほうがよかったと思う事になる。


 そして竜がこの地に来てから一年後。竜への貢物の中に一人の少女がいた。

 それは決して珍しい事ではない。いままでも何度かあった。

 国のため、家族のため。身を捧げ竜の怒りを静めようと生贄を捧げる。

 正直、捧げられても困るのだが。人は竜にどうしろというのだろうか。竜が人を喰らう、という事にでもなっているのだろうか。

 今まで捧げられた人間は全て帰らせている。竜は人を喰わない、という事を教えて。

 今回もそのために竜はその少女の前に姿を見せる。


「帰れ」

「嫌です」

「帰れ、と言っている」

「ですから嫌です」

「・・・・・・今なら命は助けてやろう。帰れ」

「命ならここに来た時点で諦めています。どうぞお納め下さい」

「あー、頼むから帰っていただけませんでしょうか?」

「嫌です。帰ってもこの命は死んだも同然ですから。それと一つお願いが」

「聞こう。そして帰れ」

「帰りません。私はハクア=ロイ=ガナーシェ。この国の第二王位継承者です。この身を捧げる代わりにこの国の安寧を約束して頂きたい」

「分かった。この国に手を出す事はしない。そちらから手を出す事をしなければ、だが。だから帰れ」

「ありがとうございます。ではどうぞお納め下さい」


 竜は頭を悩ませた。話が通じない。

 もしかすると言葉が通じてないのではなかろうか。そうだ。前に来た軍隊も、話をしようとせずにいきなり攻撃してきたではないか。

 きっと竜の言語と人の言語。なにかしら差異があるのではないだろうか。


「話もまとまった事ですし、参りましょうか」

「どこがまとまったんだ。分かった。ならばこの国には手出しはしない代わりに帰ってくれ」

「・・・・・・分かりました。そういう事でしたら諦めます」


 竜は安堵した。話は通じているようだ。


「では、この国の安寧は諦めましたので参りましょうか」


 





 どうしてこうなった。

 竜は一月前のハクアとのやりとりを思い出していた。

 現在、竜はその姿を人へと変えていた。巣には集めた家具等があり、人の姿のが過ごしやすいためだった。

 ハクアは竜の姿のが凛々しいとか理解が出来ない事を言っていたが、竜の姿のままでが不便が多い。

 ここへ来た理由について少女に聞いたが半分は理解出来たが半分は分からなかった。

 政略結婚というのが嫌で自ら生贄に志願したという。前半は理解出来る。気に入らない相手とは結婚したくはないだろう。だからと言っていきなり竜への生贄となるのはどうかと思うが。

 ちなみに、生贄に志願したが許可されなかったために貢物に忍び込んで来たらしい。ますます理解できない。

 ハクアがここに来てから一月だが、姫を帰せと二度程軍隊が来た。喜んで返したいのだがやはり会話を始める前に戦闘になってしまい蹴散らすはめになった。

 

「お茶が入りました。どうぞ」


 考え事をしていた竜に、ハクアは話しかける。もう竜は帰れとは言わなくなった。言っても無駄だからである。

 正直、軍隊が攻めて来るという点を除けば現状に不満は無かった。生活は多少なりとも便利になったし、独りでいるよりは誰かと共にいれるのはいい。

 それにこの一月というもの、ハクアは喜んで竜の身の回りの世話をしていた。その理由までははっきりしないが。

 現状を維持するにせよ、打開するにせよ話し合わなければいけない。


「ハクア。お前がここに来てそろそろ一月になる」


「ええ、そろそろお名前を教えて頂けるんでしょうか?」


 そう、竜はハクアに名を教えていなかった。それは重要な意味をもつ儀式だ。簡単に教えるわけにはいかない。

 実際の所は名を教えるだけなら問題はないのだが気持ちの問題というのも大事なのだ。

 儀式と共に名を送ればそれは契約となり二人を縛る事になるだろう。

 話には聞いた事があるが、そこまでの信頼を相手に預ける事なぞ竜には理解出来ない事柄だった。


「残念だがそれはないな。それよりどうするつもりなんだ?」


「それは残念です。質問の意味はわかりかねますが」


「言い直そう。お前はこれからどうするつもりなんだ?」


「これからですか。このまま巣で一緒に暮らす、というのはどうでしょう?」


 なるほど。それも悪くない。が、正直にそれをハクアに話すのも何故だか拙い気もする。


「・・・・・・お前は賢い。それも嘘ではないんだろう。だが、そろそろ本当の目的を話さないか?」


「・・・・・・」


 ふむ、と少女は黙り込んだ。

 竜は考える。ハクアの本当の目的を。

 ここ一月で分かったのは、ハクアは賢いという事だ。竜についてもそれなりに詳しいし、物覚えもいい。

 だから結婚が嫌で命を捨てに来た、というハクアの言葉は納得出来ない。

 それよりも別の目的があると考えたほうがまだ納得がいく。


 そう、例えば――竜の巣に潜入し、竜の寝首をかく――


 もしそうならば自分はハクアを殺せるのだろうか。

 竜は人間の感情に弱い。感化されやすい生き物、と言ったほうが正しいか。

 人が竜を憎めば、竜は人を憎むだろう。

 だが、人が竜を愛せば竜は人を愛するだろう。

 もっとも、心からの感情でなければ竜を揺さぶる事は出来ないが。

 そう考えるとハクアは竜を愛しているのだろう。それが親愛か情愛かは分からない。

 もしくは、『道具』に対する愛という可能性もある。

 ハクアは自分を利用するつもりなのだろうか。現状一番可能性が高い。


「そう・・・・・・ですね。以前言った事も嘘ではないんですが。というよりお会いした時はそれが全てでした」


「すまんが理解出来ないんだが・・・・・・。今は違う理由があると?」


「ええ。ですが、困りました。文献で知識のみはあるのですが、なにぶん経験がないので。お話する事をまとめたいのでお時間頂いても?」


「ああ、分かった」


 以前言った事は嘘ではない。つまり、ハクアは死に来たという事だろうか。

 そう考える竜だったか、森に入る侵入者の気配を感じそちらに注意を向ける。

 人数はかなり多く、恐らくまた人間の軍隊が討伐に来たのだろう。

 ハクアにその事を伝え、竜は姿を戻し洞窟の外へと向かう。いくら広いといっても、洞窟内で戦闘をしたくはない。気に入ってるこの空間を壊したくは無いのだ。





「悪しき竜よ!貴様の悪行はその命をもって償ってもらおう!」


 森を抜け、竜の前に現れたのは人間の軍隊とそれを率いる一人の青年だった。

 青年は竜を見ると剣を抜き叫んだ。


「我はルスト=ダル=フリークス!貴様を倒し攫われた我が姫を取り戻す!」


 竜の予想したとおりハクアを取り戻しに来た軍隊のようだった。ハクアとの生活も悪くは無い物だったが、厄介事を考えるとそうも言っていられない。

 だがハクアの来た目的は気になる。自分を利用しようとしたのかそうでないのか。

 いつもならここでハクアを返す意思を見せるのだが、今回はそれがためらわれた。


「竜よ!たしかに貴様は強大だ。だが、竜に力があるように人には知恵がある。覚悟するがいい!」


 どうすべきか竜は迷い、一度距離を開けようとその羽根を広げようとしたその時。軍隊から光の帯が飛び竜に巻きつく。

 人の魔術だろう。似たような術はいままでにも何度か受けた事がある。竜はそれを振り解くために咆哮を上げ、体内の魔力を放出する。

 ――否、放出しようとした。

 人の魔術ならそれで掻き消せるはずだった。だが、山に竜の咆哮が響き渡るだけだった。

 

「言っただろう、竜よ。人には知恵がある、と!」


 青年は叫び竜に向かい剣を振り下ろす。

 竜の鱗は硬い。ただ物質としても硬いが、竜が持つ魔力によって人の剣くらいは簡単にはじく硬度になっている。

 そして竜の予想通り青年の剣もはじかれた。が、予想と違ったのは青年の剣が竜の鱗を大きく傷つけた事だ。

 人間の魔術により、竜の魔力が封じられたために本来の強度がだせなくなっていたのだ。

 現在でもかなりの硬度を誇る鱗だが、破壊されるのは時間の問題だろう。


 ――殺される


 竜は吼えるがその体は動かない。

 どうしてこうなったのだろう。ただ静かに暮らしたかっただけなのに。

 何故邪魔をするのだろう。ニンゲンドモメ――


 向けられた憎しみに、憎しみで返そうとする竜。

 剣を向ける青年に洞窟のほうから声がかけられる。


「お楽しみの所申し訳ありませんが、我が竜を傷つけるのはやめていただけませんかルスト殿下」


「姫!?」


 ハクアだ。何をしに来たというのか。そうか、ついに自分を殺しに来たのか。

 竜は嗤う。やはりハクアは自分を殺すためにここにいたのか。ハクアが来なければ軍隊に襲われる事もなかった。


「・・・・・・我が竜よ。それは心外ですね。助けに来たというのに」


 声に出ていたのだろうか。助けに来た・・・・・・?


「ええ。いつも以上に悲痛な咆哮が聞こえまして。何とかできれば、と参りました」


「姫、何を仰っていますか! 私です。ルストです! 悪しき竜に攫われた姫を助け出すために婚約者として馳せ参じました!」


「手紙を送ったでしょう。私は望んでここに来たのです」


「何を・・・・・・。そうか、竜に言わされているのですね。今、この悪しき竜を成敗して見せます。姫はお待ちになって下さい」


 会話がかみ合っていない。他人事のように竜はそんな事を思う。

 ハクアの目的も未だ分からないがこの状況で来て何が出来ると言うのだろうか。


「ルスト殿下。傷つけるのはやめて下さい、と。言っても聞かないのでしょうね。たしかに殿下や軍隊に対して私は無力です、が」


 ハクアはため息を付くと竜を縛っている光の帯に手を伸ばし――


 引きちぎった。


「は!?」


「馬鹿な!竜を抑える魔術だぞ!?」


「姫!一体何を!」


 慌てる青年と軍隊。それもそうだろう。退治すべき竜の束縛を、助け出されるはずの姫が解き放ったのだから。

 そんな事は関係ないように姫はつぶやく。


「いい術ですね。たしかにこれなら竜は抑えられるでしょうが、対竜に特化しすぎてます。人にとってはただの無力な帯ですが」


 あくまで竜を抑える術で、人には無害だ。だがそれもそうだろう。竜に協力する人など想定の範囲外だ。


「さて、続けますか?」


 そう微笑むハクアの横には解放された竜。このまま続けた場合、姫を巻き込む事になる。

 それに術が通用しなくなったとなれば現在の戦力で竜に勝てるとは思えない。


「引き返しなさい。竜は命は助けると言ってます。・・・・・・慈悲深い。ですが、残るのならば――」


 そうハクアが言うと竜はそれに続くように吼える。

 そして軍隊は我先に、と急ぎ引き返していった。残ったのはハクアと竜と――ルストのみであった。


「姫。どうかお考え直しを・・・・・・」


「しつこいですね、殿下。私は竜と共に生きます。もし再びこの竜を討伐する動きがあったら――滅ぼしますよ? 我が竜が」


 そう言われたルストは森へと引き返していった。

 竜の表情は引きつっていたが、その表情は人には分からなかったのだろう。


「どういうつもりだ?」


「先ほど申し上げたとおり、助けに」


「人を裏切ってよいのか?」


「いいんですよ。先に裏切ったのはあちらですし」


「そうか」


「さて、そろそろ戻りますか我が竜よ」


「先ほどから気になってたのだが・・・・・・。我が竜というのは」


「失礼しました。順番が前後してしまいましたね。私の目的の話ですが。貴方と共に在りたい。この生涯が尽きるまで」


「すまないが何故そうなったか理解が出来ないのだが」


「おかしいですね、文献だとこのセリフが一番良いはずだったのですが」




 そんな事を話ながら一人と一匹は洞窟に戻っていった。

 求愛の方法に悩む少女と理解できない竜。

 竜が己の名を少女に与えたかどうかは少女のみが知る事になる。


書き残した事は多いですが、後から書くと蛇足になりそうなので破棄しました。

3人称のつもりでかいてたら1人称っぽくなってしまって泣きそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] お話面白かったです。 ただルスト殿下が途中からルクスになっているのが気になりました。
2011/04/14 01:37 退会済み
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