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2話 馬鹿が来る

 あー。死んだわー。


 坂田課長の最初の命令は、その乱馬リョウなる危険人物を協力者として確保せよとのことだった。一応護身用に拳銃は持たされているが。


 とても、ではないが交渉の余地などありそうにない。サンドバッグになって生きて帰れたら御の字だ。


 翌日、僕は、ジュラルミンケースを持って乱馬リョウの持つ道場とやらに来ていた。


 ぼろい。


 木造の道場は漫画に出てくるあんな感じで死ねだのなんだの落書きされ、台風1つで吹き飛ばされそうな気配があった。


 インターフォンを鳴らす。


 ……。


 返答はない。


「留守だな……」


 引き返すか。


 そういえば、腹が減った。ラーメンでも食いに行くか。


 結局この後僕は、ラーメンを食べられない。


◇◆◇◆


 路地裏。


「ダメじゃなーい! リョウちゃん! 借りたもんは返さなきゃ」


 その男は、ナイフを持ったニューハーフのヤクザに詰め寄られていた。


 その舎弟のチンピラ20名程に囲われて。


「すんません。返済はもうちょっと待って」


 と、男は愛想笑いを返した。


「うーん、ダメダメ。アタシ知ってるんだからぁ。リョウちゃんが昨日ファイトマネーをがっぽり稼いでるって」


「あーはは。人違いじゃありませんかねぇ」


「いいから出すもん出しな」


 チンピラが男の肩を掴んだ。


◇◆◇◆


 僕の前を信じがたいものが横切った。


「あぶね」


 2メートルに届くかという大男だ。


「おっらぁ!」


 声の方、路地裏に目を向けるとまた1人男が飛んでくる。


 男を投げ飛ばしたのは、俺と変わらないくらいの身長のタンクトップの男だった。


 あれは……。


 ビルディングに身を隠し、様子を伺う。


「あ、アンタたち何してるのよ! さっさとやっちまいなさい!」


 白いスーツのおねぇ言葉の男が指示を飛ばすと、3人程のチンピラがタンクトップの男を襲う。しかし、


「おせぇ!」


 それぞれの鳩尾、金的、のど元にほぼ同時に蹴り、正拳が決まった。


「はは! どうした! どうした!」


 間違いない……。乱馬リョウだ。


 僕は、暫くもの陰から、その戦いを観察していた。


◇◆◇◆


 人とトラ程度の戦力差だろう。冷静に見ていると、立っているチンピラの数が一気に減っていく。残りは白いスーツのオカマを含めて3人というところで、


「な、舐めないでちょうだい!」


 オカマがスーツの懐に手を忍ばせた。


 マズい!


 オカマが引き金に指をかけるのと僕がクイックドローで拳銃、9ミリ拳銃を抜き放つのは同時だった。


 宙を舞うマカロフ型拳銃。


「警察だ! 全員大人しくしろ!」


◇◆◇◆


「そこのタンクトップの男以外! 大人しく帰れ! でなければ、拘束し所轄へ引き渡す!」


 ふぅ。チンピラたちは撤退していく。


「格好いいところは全部持ってかれちまったなぁ」


「いや、君の空手に見惚れてただけだよ」


「その拳銃、ヤクザのものとは違うな?」


 ひぇ。いい勘してる。


「9ミリ拳銃って言って、自衛隊で正式採用されているものだよ」


「じゃあアンタは、俺をスカウトしに来た自衛官さん?」


「残念ながら、外れ」


「じゃあ……」


「警官だよ。一応ね。話がある。君の家に上がらせてもらえないか?」


 さて? どうなる? とても、9ミリ拳銃1つで同じ土台に上がれたつもりはないのだが。


「ああ! いいぜ!」


 ふぅ。第一関門クリア。


◇◆◇◆


 通された先は埃まみれだった。


「すまねぇなぁ……。こんな汚ねぇところで」


「いや、別に」


 別に構わん。君の半径1メートル圏内にいる方が怖いから。


「そのジュラルミンケース……」


 乱馬リョウはそれに期待しているらしい。


「3億ある」


「3億!?」


 いや、俺も、びっくりなんだけど、国から公安の一組織に配る金としては、それくらい気前よく放出できる額なのだろう。


「出来高で更に月給も払う」


「待て待て待て! アンタ! 何者なんだ!?」


「大鷲マナブ。公安警察のものだ」


「こ、公安ってあれか!? FBIみたいな」


「そう。その公安」


「アンタ……俺を何に付き合わせようとしてるんだ?」


「超能力者犯罪。その抑制だ」


「超能力者犯罪の抑制……。つまり、アンタは秘密警察でスパイの手伝いをしろってか?」


「大体、そう。この国に巣食う犯罪者予備軍の超能力者の監視、拘束、また、事件解決に協力して欲しい。公安の情報だと、君の借金は2000万というところだろう? ファイトマネーはいいところ数百万。遊んで暮らせる額だと踏んでいるのだが」


「受けなきゃもらえない……」


「僕を殺すなりして、奪ってもいいがね」


「……そんなのは漢じゃねぇ」


 ふぅ。良かった。もうここに来る時点で死んだものと覚悟してたからね。

 乱馬君は悩んでいる。

 お茶でも飲みたいものだ。


◇◆◇◆


「いいだろう。受けよう」


「……こう言ってはなんだが、危険が付きまとうよ?」


「いや、決めた。その金で借金をチャラにする」


「公安の一員になるというのは、今よりもしがらみが多いかもしれないよ?」


「それでもかまわねぇ……」


 ほ。


「ただよう。俺の力を見ときたいだろう? 借金返すところについてきちゃくれないか?」


 はー。面倒な。けど仕方ない。公務員だからね。僕は。


◇◆◇◆


 そして、僕たちはヤクザさんの事務所に来たわけだけど。


「よ、よくも! 顔を出しにこれたわね!」


 あのオカマさんが部下たちを武装させて、待ち構えていた。


「いいじゃねぇか! 利子付けて借金返済に来たんだからよぉ!」


「はぁ!? そんな金何処から!?」


「この親切なお兄さんから!」


 どもー。


「あ、アンタ! 警察でしょ!?」


「えーまー、はい」


 公安って非合法活動も厭わないからさ。


「まぁ、利子には俺の拳も入るんだがなぁ!」


 それじゃ、頑張って。


 僕は、注意が乱馬君に向いた隙に、隠れるのだった。


「おらぁ! いくぞぉ!」


 乱馬君が飛び込んでいく。馬鹿が行く。


 僕は、抗争の音をバックミュージックにある人へ電話をかける。


「あーもしもし? 刑事4課の鈴木さん? お世話になっておりますー。元刑事1課の大鷲ですけど」


 後片付けは専門の人達に任せましょ。


◇◆◇◆


「よくやった」


「いえ、私はただ任された仕事をしただけですから」


 坂田課長は定食屋のおじさんのような笑顔を作っていた。


「まさか、100人単位のヤクザを無手のまま殲滅するとは……。課長の読みいいかと」


「ありがとう。いや君もよく頑張った」


「あーいえ、ただ、刑事4課に連絡しただけですし」


「はえー! すっげえいいビル!」


 乱馬君は普段訪れないであろう霞ヶ関に興奮していた。


「君の部屋は12階だ! そのフロアを好きに使ってくれ!」


 僕は、坂田課長から預かったフロアキーを乱馬君に渡した。


「けど、俺、道場に基本的にいたいんだけど」


「忙しくなると、ここにいてもらわなきゃいけないかもだから」


「……うし。わかった! 自由に使わせてもらうぜ!」


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