ファントム
新たな仲間を加え、私達の旅は続いている。
「ここが、幻都ヴェルーヌ・・・。」
かつては聖都や魔都と並び、栄華を誇った歴史ある街。
だが、聖魔大戦の折、戦場となったこの街は、あとかたもなく破壊され、文字通り幻の都になってしまったのだ・・・。
「かえすがえすも、人も魔族も愚かよのぉ。」
「文化遺産を破壊するとは、なんたる蛮族か。」
『・・・。言ってることは間違いないのだけど・・・。』
ノスタルジーに浸る二匹の犬を微笑ましく眺めながら、私はこの街に入って以降、異常すぎる程、周囲を警戒し続けている。
「間違いない。十中八九、奴がいる。」
クレハは私よりさらに警戒モードを最大にしている。戦闘面では役に立つ唯一の仲間だ。
「ムッ!焼けますよ、焼けますよ!私の繊細なハートが!」
リーナはクレハが同行するようになって、余り機嫌はよくない様だ。ことさらに私の腕を抱いたり、肩にもたれかかったりが増えた気がする。尤もクレハの方と言えば、苦笑しつつも、相手にしていない様であるが・・・。
「ほ~ら。リーナ落ち着きなさい。ったく。で、クレハ。奴というのはやはり四英雄の一人?」
クレハの緊張が伝わってくる。それは肯定を意味していた。
「ファントム・・・。」
「ファントム?」
「同僚とは言え、私も会ったことはない。彼女は絶対に人前に姿を現さないから。ただ、勇者のパーティを側面から援護していた魔法使い・・・。だと思う。」
「魔法使い・・・。」
私と並び得る可能性のある魔法使い・・・。
それは是非手合わせをしてみたい。
「何か・・・楽しそう?」
「そうね。貴女も凄かったけど、四英雄とは底が知れない人達ばかりね。」
私はにっこり微笑む。
つられてクレハも少しだけ微笑んだ。
「氷の美女・・・。と思っていたけど、貴女もそんな朗らかに笑えるのね。」
「私はまだ心を持っているわよ。でもファントムは・・・。」
クレハの端正な顔に憂いが宿る。
「何れにせよ、彼女とは、倒すか倒されるか・・・にしかならないと思う。」
「それは何故?」
「そんな気がするだけ・・・。」
「戦士のカンってやつ?」
「まぁそんなトコ。」
それ以上の会話は不要である。
「焼けますよ~。プンプン」
リーナの怒りはしばらく溶けぞうにない様だ。
「おい!二人とも。そんな悠長な事を話している場合ではないぞ。街の中心から何かが溢れてくる!」
犬王様達がその中心を威嚇している。
「あれは・・・魔物?」
「スケルトン・・・だ!」
肉のない骨だけの魔物。それが隊列を整え、整然と進んでくる。
その数は・・・。
「五~六千、いやもっといるかも。」
しかし、壮観な眺め・・・。と言えなくもない。
「カルラ!ここは私が食い止める。貴女はファントムを仕留めなさい。」
クレハが冷静に告げる。その言葉は、まるで勇者の様だ。
「ようだ、じゃなくて勇者パーティーだったから!」
心を読まないでほしい。
「と・も・か・く。これだけのスケルトンを操るには、膨大な魔力や集中が必要な筈。つまり、奴は今どこかで実体を晒しているはずよ。」
「成程、普段見えぬファントムでも、今なら違うかもしれない・・・と。」
「そう!私達はここで負ける訳にはいかない。私を信じて!」
クレハの深碧の瞳が、私に強い力を与えてくれる。
「分かった。貴女を信じる。ファントムは私が倒す。」
「今から道を作る。そこを全力で駆け抜けなさい。」
クレハは弓を構える。その視線は骸骨軍団の中央を過たず捉える。
「道を示せ!光の矢、サジッタ・ルメーン!」
その名の通り、光の矢がスケルトン軍団を貫き、中央で爆発する。
そのあおりを喰らったスケルトン達は吹き飛び、真ん中のみ、一筋の道が現れた。
「今だ!」
私はその隙を見逃さず、目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。
スケルトン達の軍勢をすり抜け、その背後に進むと、その前に一人襤褸のローブを纏い、呪文を唱えている魔法使いを発見する。
「見つけた!ファントム!覚悟!」
私はその魔導士らしきものを素早く杖でぶん殴る。
「ム・・・。どうやら外れか・・・。全く手ごたえがない。」
私の状で潰された魔法使いはあっさりと砂城化して崩れ去った。本当に抵抗することなく、あっさりと・・・である。
「・・・それにしても・・・あれは何?この街の中心なのか・・・。」
私の目の前が急に広がりをみせる。そこには赤く染まる小さな湖と、その中央に佇む古びた怪しい古城が現れる。
『奴が誘っているのは間違いない。分の悪い賭けだが、行くしかないか・・・。』
私は魔法で体を浮かせ、そのまま古城へと突入した。
「ファントム・・・。幻影・・・?」
私の中で何かが引っ掛かった。
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