彼女の処遇
戦いは終わった・・・。
「クレハよ。・・・。済まなかったな・・・。」
聖王(犬)が優しく語りかける。
「・・・。何?この犬?」
クレハの心底不思議そうな顔に、私は思わず、吹き出してしまう。
「笑うな!」
聖犬は抗議しているが、側からみても、犬が彼女の前で芸をみせているようにしかみえない。本当は感動の場面なのだが・・・。
「・・・。まぁ、それはそれとしてだ。実際、こやつ、どうするのだ。・・・」
こちらも全く空気を読まず、蒼犬が真剣な顔で尋ねてくる。彼にとっては自分の国を滅ぼした一人ということになるのだろう。もしかしたら、厳しい処置を望むのもやむを得ないかもしれないが・・・。
フゥゥゥゥゥ・・・。
二匹の犬が人間らしい大きな溜息をついている。全然忘れているが、やんごとなき王だったわ・・・。
「何か失礼なことを思っていないか?」
「・・・。まさか。」
「・・・。まぁよい。処遇はカルラ、お主に任せる。」
「・・・?意外です。良いのですか。」
「ああ。あの様な戦いをみせられてはな。もはや、我等のレベルでは対応は出来ぬ。それに・・・、我が配下達も、あの様な戦いを繰り広げておったのじゃな。ワシは安全な所でしか、推移を眺めておらんかった・・・。」
「ワシもじゃ。以下同文じゃ。」
二匹の犬は、かなりいい事をしゃべっているのだが・・・。まぁ外見があれだし・・・。すこしだけ残念・・・。
「やっぱ、失礼な事を考えてないか?」
「・・・。そんな事は。それで、お願いがございます。彼女と二人きりにしてもらえませんか?それで処遇を決めます。」
「ほう・・・。二人きりね・・・。いやらしい。」
「カルラよ。お主が淑女である事を信じておるぞ。」
「・・・。あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す。」
私は最高の笑顔を見せる。もちろん右手には小粋な炎を作って。
本当にこの犬王様たちは・・・。一言多いんだよ。
「さぁ、王様方。お散歩の時間ですよ。」
リーナが気を利かせて、犬達を連れ出してくれる。本当に素敵です。リーナさん。
しかし・・・。餌につられてついて行ってしまう犬って・・・。何も言うまい・・・。
「まぁいいか・・・。さて、クレハ。貴女の本当の気持ちを聞きたい。」
「・・・。何故?」
「刃を交えるのは会話するのと同じことだから・・・。貴女には強い想いがあった。貴女は世界ではなく、勇者への強い思慕で戦っている。」
クレハは真っすぐ、私を見据える。
「・・・。そう・・・。私にとって、世界なんてどうでもいい。私はあの人の傍にいたい。たとえ振り向いてくれなくとも・・・。」
「・・・。そう・・・。」
「そういう貴女は何の為に戦うの?」
私はハッとする。確かに私は何の為に戦っているのだろう・・・。
でも・・・。
「・・・。はじめはあの人に認められたい・・・だったかな・・・。でも今は・・・。」
「今は・・・?」
「あの人を振り向かせたい・・・かな?」
「え?」
「私もあの人に憧れていたから・・・。会ったことはなかったけど、あの人の伝説にいつもワクワクさせられてた・・・。」
「・・・。」
「成り行きで、敵とはなってしまったけど、私はあの人に近づきたい。その想いは変わらない。今にして思えば、この選択は運命だったと思う。」
「そう・・・。どこか私達は似ているのね。でも、貴女の方が真っすぐ・・・。かつてのあの人の様に・・・。」
クレハは静かに微笑む。
「でも・・・。馬鹿な事は考えないで。私を生かせば、また貴女に盾突くわよ。」
クレハは真剣な瞳で私を見つめる。どこか、覚悟を決めた瞳。それは、とても美しい。
私も静かに微笑む。
「・・・。その時はまた私が倒すまで。だから・・・。」
そう・・・。心の中に答えはあった。私はこの人と友達になりたいのだと・・・。
「クレハ。共に行きましょう。私達の想いを叶える為に。」
私は静かに手を差し伸べる。
「完全に私の負け・・・ね・・・。いいわ。貴女の心を信じましょう。共に進みましょう。」
クレハも静かに手を握り返す。
「フン。やっぱり、そうなったか・・・。」
「まぁアイツも英雄だよな。」
「私はカルラ一筋ですぅぅ。」
外野の囁きはともかく・・・。
きっとこれで良かったのだろう。
私達の旅は、まだまだ続くのだ。
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