戦いは終わった?
ここは大秘境入口の街『ヴィント』。
「ぬ~わ~ん~だ~とぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ええっと・・・?どんな生活してたら、そんな時代遅れのアタマになるんでしょうか・・・?」
ギルドに私・カルラの声と、僅かに妖艶な気配を持つ、制服を着た受付嬢の声が響く。
「もう一度聞くけど・・・。聖魔大戦は10年も前に終わったの?」
「そ・う・で・す。今や勇者様はこの国の王様ですよ。」
受付嬢は可愛らしい容姿といえなくもないのだが、その容赦ない言葉で、次々と私の繊細な胸を破壊していく。
「・・・。すぉんんなぁ・・・!」
私の夢。終わったぁぁぁよぉぉぉぉ・・・。この話はこれまで・・・。
になるわけないでしょ!
私は絶望的な気持ちになった。
折角の修行が台無しに・・・。
「あぁ!そこの童女。うるせぇぞ!」
ガタイだけはよいが、頭の悪そうなチンピラ風の冒険者が絡んでくる。どの世界でも、こういう手合いはいるものだし、普段なら気にも留めない処だが・・・。
「童女はおとなしく、母ちゃんのおっぱいでもなめとれや!力もないくせに、いっぱしの冒険者づらしてんじゃねぇぞ!」
下品な笑いと共に、周囲の臭いお仲間と絡んでくる自称ベテラン冒険者ども。まぁこれも平和になった証と言えなくもないのだろうが、今は・・・。
ブチ!
私の中で何かが弾ける。
『私は大変、機嫌が悪いのです・・・。少しだけ遊ばせてもらうか・・・。』
私は冒険者達に背をむけたまま、銃を模った人差し指の先を肩に乗せる。
「・・・風の船。ヴェントス・シヴァ・・・。」
「なんだ!体が勝手に浮いて!う!ウワァァァァァ!まさかお前は!」
冒険者たちは一瞬で風にくるまれ、多分、街外れの辺りまで吹っ飛ばされた。
「・・・。良かったな。今が春の昼日中で。」
たまたま開いていた入口からは、醜悪なゴミが取り払われて、そこからは、爽やかな風が吹きこんで来る。それを感じるだけで、少し気分も晴れるというものだ。
「ごめん。今日は気分じゃないから帰るね。登録はまた後日・・・考えるわ・・・。」
「そうですか。・・・。ではお待ちしております。」
受付嬢は顔色一つ変えずに、丁重に頭を下げる。いや、正確には何かを思案している様だったが、今ではないと判断したようだ。
また、先程の顛末をみていた他の冒険者たちも、私が外へ向けて歩き出すと、慌てて扉の左右に並び、敬礼!する。
「すいやせんでした!」
まぁ折角なので、私はその真ん中を堂々歩いて、外へ出る。
「さて・・・。これからどうするか・・・。」
平和な時代に私の力は不要なのか・・・。いや・・・。
「そんな訳ないでしょう!」
先程、何か言いたげだった彼女。あの受付嬢が、すぐ後ろに立っている。すぐに追いかけてきた様だ。
「これを・・・。」
「これは?」
「貴女が先程ぶちのめしたのは、そこそこ強い冒険者。」
「あんなのが?」
「そう。あんなのでも、です。」
受付嬢はニコッと笑う。本心からの笑顔。少しドキッとする。
「まぁ、それほど強い貴女なら、これを託してみようと思ったのです。ギルドとは別の秘密の依頼。」
「秘密の依頼?」
「ええ。付属の地図にある、この印のある場所へ向かって下さい。きっと貴女の道はそこにあると思いますよ。」
「ふぁ~い?」
「行けばわかります。」
「・・・。」
私は考え込む。
依頼内容:前国王が新たな勇者を探している。腕に覚えのある者は、かつての魔族の都『マドラム』を訪ねるべし。
『どういう事・・・?』
前国王である聖王は退位したと聞いた。何故、勇者が統治までする時代、再び新たな勇者を欲するのか・・・?しかも魔族が滅びたとされる地で・・・。
「・・・。でも、他に目的もないし、いいか。行ってみるよ。そこへ。少し面白そうだ・・・。」
「フフフフ。そう言って下さると思っていました。貴女は度胸もある方なのですね。一目ぼれでしたが、ますます惚れてしまいぞうです。」
「はい?」
「おっと、余計なことを。では、行ってらっしゃい。」
ただモノではない雰囲気を持つ受付嬢様は、本音を隠す爽やか過ぎる笑顔で、恭しく見送る。
『まぁ、すぐに会えますよ。』
そんな声が聞こえてきた、そんな気がした。
『そういえば、ここって魔都に近い場所だったっけ・・・。』
今更だが、私はその事に気づくのだった。
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