願い
「イヤァァァァ!」
「フン!」
もうどの位、切り結んだんであろうか・・・。
『本当に強い。魔法なしでは勝てない・・・。』
私は唸る。
「どうした!ネタ切れかな?」
相変わらず、淡々とした表情で、クランは話をしてくる。
自らを誇るでもなく、戦いを楽しんでいるでもなく。
炎を使う割に、性格は真逆の氷の様だ。
『あの人を倒すには、後先考えない大技、ルブラ・グラデュース・ヴェラムしかない。』
先程はどこか躊躇いがあった。
それを見透かされて防がれてしまった。
『カルラ、でもあの技を防がれれば・・・。』
リーナの声が聞こえる。
口にはしなかったが、あの技は彼女にも相当な負担をかけるのだ。
『・・・。分かってる。ゲイボルグの時は、次を考えなかったから、あの威力が出せた。今は、それは無理だと思う・・・。』
『・・・。私は貴女を信じています。貴女は絶対に負けない!だから、私の事も信じて。』
『リーナ?』
『貴女が信じる限り、私も強くなれる!確かにあの人は、今までで一番強い。でも、乗り越えられない壁じゃない。』
「カルラ!」
後ろからクレハの声も聞こえる。
「私も貴女を信じる。貴女は本当に勇者になった。私が憧れたあの人の様に!」
「クレハ・・・。」
「私の力も合わせる。貴女が出来る全力を今見せなさい!」
クレハは弓をセットする。
『ム・・・!少女の闇が払われていく。ついに覚悟を決めたか・・・。』
クランは悟る。
「いいだろう!撃ってこい!また切り裂いてくれる!これを防げば私の勝ちだ・・・。」
クランは再び双剣を鞘に納める。
「ハァァァァ!」
私は気持ちを振り起す。
「この一撃にかける!流星よ。剣に宿れ!」
「私の全力も!光よ。弓に集え!」
「いくぞ!ハァァァァァァ!」
「ハァァァァァ!」
私は今度は剣を上段に構える!通用しなけば、もう手がない!
ルブラ・グラデュース・ヴェラム!
そして・・・。
サジッタ・ルメーン!
仲間たちの思いの結晶!
「ウォォォォォォ!」
クランはそれを堂々正面から双剣にて受ける!
ヴァァァァン!
お互いの技が再び激突する。
「・・・。なぁ。魔王はどんなヤツなんだろうな・・・。」
「なんだよ。緊張感のない奴だな。」
「まぁ此奴はそんな奴じゃねぇか。」
「そうよね。貴方はそんな人だから、私達はついていくのよね。」
「・・・。」
ああ・・・。そんな事もあったな。
今は皆バラバラだ・・・。
クランは静かに後ろに倒れる。
「フッ・・・。やればできるじゃないか・・・。」
「目が覚めましたか・・・。」
私は静かに尋ねる。
「フッ。お笑いだな。君に言った雑念を私が抱いてしまった・・・。」
氷の表情に僅かに滲むものがある。
「貴方には私一人では勝てませんでした。その事が悔しいです。」
「そうか・・・。それは愉快だ・・・。この思いを胸に私は元の世界へ戻ろう・・・。」
クランの身体が光に包まれていく。
「すまぬ、クレハ。アイツの事を頼む。それにしてもお前は、この世界の居場所をみつけたのだな・・・。」
「そうですね。貴方の苦しみは分かっていました。お力になれず、申し訳ありません・・・。」
クレハの瞳に熱いものが流れる。
「泣くな。お前はお前の道をいけ・・・。後悔のないようにな・・・。」
クランはやがて光に包まれ・・・、羽となって散っていった。
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