エルさん、初出勤!
朝9時ちょうど。
オフィスの自動ドアが開き、エルさんが姿を現した。
濃紺のスラックスに白いシャツ、黒のビジネスバッグ。
あまりにも完璧な“新入社員スタイル”だったが、よく見ると――靴が革製のブーツで、どこか旅人のような雰囲気をまとっていた。
「おはようございます。本日よりお世話になります、エルミード・ロジスフィア――いえ、“エル”で結構です」
一礼する姿勢は直角。背筋はピンと伸び、声は通る。
その様子に、先輩社員の加藤が目を丸くした。
「エルさん……やけに礼儀正しいな。ていうか“エル”って芸名みたい」
デスク到着
田島が席まで案内すると、エルさんはまず机の前に立ち、**「この場を借りて、働く覚悟を誓います」**と、小声で何かを唱えた。
「……あ、エルさん? それ、なにやってるの?」
「“職場の神”への献詞です。前の職場では……まあ、習慣のようなもので」
神妙な表情でデスクに一礼した後、エルさんはついに、現代の魔道具――パソコンとマウスに対峙することになる。
「“職場の神”への献詞です。前の職場では……まあ、習慣のようなもので」
神妙な表情でデスクに一礼した後、エルさんはついに、現代の魔道具――パソコンとマウスに対峙することになる。