「チョココロネ、それは昼休みのロマン」
【おはなしにでてるひと】
瑞木 陽葵
お昼前、なんとなく甘いものが食べたい気分で、今日は“チョココロネ一択”。
購買の混雑には若干不安あるけど、そこは気合でカバー予定。
――蓮が急に走り出すと、なぜか自分もテンション上がってしまう。
荻野目 蓮
特にこだわりはないけど、“大盛り焼きそばパン”はテンション上がる。
けれど、陽葵が「チョココロネ……あるといいな」ってつぶやいたのを聞いて、
スタートダッシュの目的が、ちょっとだけ変わった。
――目的達成後の「ありがと!」を聞くと、昼休みが神タイムになる。
【こんかいのおはなし】
昼休みのチャイムが鳴った瞬間、
購買前の空気が、一気に“戦場モード”に切り替わる。
「よしっ、いくぞ!」
「はやっ!?まだ廊下出てないよ!?」
蓮が前を行く。
わたしは急いで靴を踏み直しながら、その背中を追いかけた。
「今日こそチョココロネいける気がするんだよねー!」
「おー、まかせろ。とりあえず先陣は俺がいく!」
「えっ、なにそれカッコいい……ってあ、まってー!!」
そんな感じで、廊下を小走りに曲がって、
購買部前に到着すると、すでに列ができかけていた。
でも蓮は、
**「これはもう“動きながら決める”やつ」**と心得てる人。
スッと列の隙間を読んで、手を伸ばし――
「チョココロネ、確保!」
「おおおぉ~~~~!!」
「ついでに焼きそばパンも――っと、あったあった」
そのまま器用にトレイに乗せて、
わたしの分の飲み物もまとめて確保して、
ドヤ顔で振り返る。
「どうぞ、姫の昼食でございます」
「はやっ!てか、なんでチョココロネ覚えてたの!」
「朝、“コロネ食べたい”って、ぼそっと言ってた」
「え、聞いてたの!?まじで!?」
「まじで」
購買横の階段にふたりで腰かけて、
包みを開いて、あま~い香りを吸い込む。
「……ふふ、めっちゃ嬉しいんですけど」
「俺も焼きそばパンゲットしたし、平和だな今日は」
ふたりでぱくっと食べながら、
昼の空気にくすぐられたように、自然と笑い合った。
「ねえ、このチョコのとこ、最後までいけるとちょっと勝った気がしない?」
「真ん中くらいで終わるやつは甘えだよな」
「それ!なんか今日のコロネ、しっぽまでチョコぎっしりな気がする……!」
「当たり日だな。陽葵の昼運つよすぎる」
そんな話してたら、
あっという間にチャイムが鳴り始めた。
「午後もがんばれってことかな、コロネが」
「コロネの神……けっこうやさしいな」
ふたりで食べ終わった袋を片付けて、
午後の授業へと向かう足どりは、
ちょっとだけ軽かった。
【あとがき】
購買は、日常の中の“戦場”だけど、
ふたりで笑い合えたら、それだけで勝ちなんですよね。
陽葵の“チョココロネ運”と、蓮の“瞬発力+観察力”の合わせ技、
ここに炸裂!
“食べる”って行為すら、ふたりにとっては“感情の共有”なんです。