第39鮫 団欒
「ヒルー、まだ~?」
「はいはい、もうちょっとな」
ヒレブレヒトが狩ってきたウシサメの肉を焼いている間、プリルリはくっついて離れず何度も「まだ~?」と尋ねてくる。
5歳になっても、まだまだ甘えたがりだ。
胸にはファイアオパールのサメの歯のペンダントがしっかりと光っている。
「よし、そろそろ焼けるからカフカ呼んできて」
「はーい!」
プリルリは駆け足で焚き火を離れると、荷馬車の向こうにいたカフカの方へ向かう。
「カフカ! お肉やけるって!」
「分かった。ちょうどこっちももうすぐ終わるところだよ」
カフカはセンパーとパラタスの鬣を散髪してやっているところだった。
「――よし完璧。どうかな?」
カフカが尋ねると、プリルリは親指を立てた。
「キマってるねぇ」
「サメヒヒンシャークサメー」
「シャークシャクサメヒヒーン」
上機嫌の2頭の鼻面を撫でてやり、2人は焚き火の方へ戻ってきた。
出迎えたヒレブレヒトが口を開く。
「ウシサメの革がだいぶ溜まってきたから、デリカタに卸しに行こうと思うんだ」
「いいね。久しぶりにダビドフさん達にも挨拶したいし」
「わたし、おじいちゃんとおばあちゃんとお買い物いきたい!」
「いいけど、あんまりおねだりしちゃダメだよ?」
「あの人たちプリルリにお願いされたらなんでも買ってくれちゃうもんな」
「笑い事じゃないの。毎度毎度必死にお断りしてるんだから」
ヒレブレヒトが肉の串を手渡し、2人が受け取る。
「それにしても、今回も人間の生き残りは見つからなかったねぇ。次の街では噂くらい聞ければいいんだけど……」
「うーん。もしかしたらもう本当に僕以外いないのかもな」
「……なんか最近、レヒト本気で探してなくない?」
「そんなことはないって。ただ、見つからなかったら見つからなかったで仕方ないってだけだよ。ほら、冷める前に食べよう」
確かにヒレブレヒトは、だんだんと自分以外の人間を探すことに熱が以前ほど湧かなくなった自分に気がついていた。
そしてその理由もなんとなく分かっていた。
「いただきまーす」
きっと、本当に求めていたものは既にここにあるのだから。
《了》




