3話:パステル・フラフラネード
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カラン――。
土曜日の朝、カフェの扉を押し開けると甘いバターの香りがふんわりと鼻をくすぐった。
パンケーキを焼く香りはここにいる限りいつも変わらない。
だけど――私の中にあるものは少しずつ変わっている気がする。
「ミズキちゃん、おはよー!」
明るい声に顔を上げるとカナデが笑顔で手を振っていた。
バイト前の準備中なのか、エプロン姿で髪をポニーテールにまとめている。
少し火照った頬にはほんのり小麦粉の跡。小麦粉のついた手で顔を掻いたのだろう。
(……好きだな)
そのことをもう私は疑わなくなっていた。
カナデの仕草や声、ふとした瞬間の表情。
どれを切り取っても、愛おしく思えてしまう。
以前の私はその気持ちを「なんだろう?」と考え込んでいたけれど、今はもう考えない。
ただ 「好きだな」 と思うだけで、それが一番しっくりくる。
「ミズキちゃん?」
「……うん、おはよう」
カナデに呼ばれて私はゆっくりとカウンターの方へ歩いた。
バイトの時間は何も変わらずに過ぎていく。
オーダーを取って、パンケーキを運んで、会計をして。
そんなルーティンの合間にカナデが時折こちらを覗き込んでくる。
「ミズキちゃん、何か考え事してる?」
「え?」
「さっきからなんかぼんやりしてるなーって思って」
カナデは笑いながら、こっそりと厨房の方を見てから、声を落とす。
「もしかして、恋……?」彼女がニヤニヤする。
「違う」
「え〜、なんでそんなに即答?ちょっとくらい照れてもいいのに〜」
「恋とかじゃない」
私は淡々と答える。
カナデは「そっか?」と納得していない様子だったが、それ以上は追及してこなかった。
(カナデは、ただカナデなんだ)
そのまっすぐな明るさも、歌が好きでたまらないところも。
だからこそ私はこの気持ちをちゃんと言葉にしなきゃいけない。
私はカナデのために書く。
私が書いた言葉を、カナデの歌にするんだ。
そう決めた瞬間、迷いがすっと消えていくのを感じた。
○
バイトが終わると、私はまっすぐ家に帰り自室の机に向かった。
机の上には、何冊ものノートが積み重なっている。
どれも私が今までに書いてきた詩のノート。
最優秀賞を取ったものもあれば、未完成のまま放置したものもある。
表紙が擦り切れたものもあれば、まだ新しいものもある。
(全部、私が書いた言葉)
そう思いながら、一番古いノートを手に取った。
それは、小学校四年生のときに書いた詩が載っているノートだった。
ノートの束をめくる指が、ふと止まる。
表紙が少し色あせた、一番古いノート。
私が初めて「詩」というものを書いたノートだった。
○
私が言葉を好きになったのはずっと昔のこと。
物心がついた時には本を読んでもらう時間が何よりも好きだった。
母の膝の上で私の小さな手でページをめくり、開かれた絵本の中には、色鮮やかな世界が広がっていた。
「ミズキ、ここ読める?」
「よむ!」
たどたどしい声で短い文章を読む。
2匹の野ねずみが大きな卵でカステラを作る世界観にワクワクし、小さいおうちがゆっくりと街に飲み込まれていく様子にドキドキし、少年がおじいさんのために真夜中に駆ける心細さにハラハラした。
物語の中の言葉はどれも私の中に優しく染み込んでいった。
けれどそんな穏やかな世界は、小学校の教室の中にはなかった。
小学校の高学年になったあたりで、私は周りと「違う」という感覚に気づき始めた。
みんなと違って目つきが悪くて可愛くもなく、器用でもなく、明るくもなかった。
髪が少しクセっ毛で、声も少し低くて、笑い方が不格好だと言われたことがあった。
それはただのからかいだったのかもしれない。
でも、子どもの言葉は時に大人よりも鋭いナイフになる。
「変だよね〜」
「なんか暗いよね」
そんな言葉の切っ先は、確かに私の心に刺さっていた。
私は教室の隅で静かに過ごすようになった。
みんなと同じ輪の中に入ろうとするほど、自分が浮いてしまう気がして。
そんなある日、私は図書室で一冊の本を手に取った。
重松清の『青い鳥』。
特別な理由があったわけじゃない。
ただ背表紙に指を滑らせたとき、なんとなくその本だけが指先に引っかかった。
本の中にはいくつもの短編が収録されていた。
その中のひとつ、「ヒムリール独唱」。
ページをめくるうちに私はその物語に引き込まれていった。
登場するのは、吃音症の国語教師・村内先生とかつて担任の先生を刺してしまった中学二年生の男の子。
事件のあと、彼は誰とも心を通わせず自分の居場所を見失っていた。
そんな時に村内先生は彼にある詩を紹介する。
草野心平の『ごびらっふの独白』。
そこには「白いカエル、ごびらっふ」 の鳴き声が並んでいた。
ごびらっふは周りのカエルと違う色をしており、群れから浮き、ひとりぼっちだった。
それは私にも痛いほどわかる感覚だった。
ページをめくる手を止めた。
胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。
物語の中で村内先生は詩を引用して彼にこう伝える。
『みんな孤独で。みんなの孤独が通じあうたしかな存在をほのぼの意識しうつらうつらの日を過ごすことは幸福である。』
その一文を読んだ瞬間、私の中で何かが崩れ落ちた。
気づけば、涙がこぼれていた。
(みんな孤独なんだ)
私はずっと自分だけが違うと思っていた。
だから苦しかった。
でもそうじゃなかった。
みんな心のどこかに孤独を抱えて生きている。
それが人間なんだ。
そう思うことができて、心が少しだけ軽くなった。
(学校だけが世界のすべてじゃない)
私は初めてそう思えた。
物語を読み終えたあと、私は「ひむりーる独唱」に出てきた詩を調べた。
それはカエルの鳴き声がただ音として並んでいるだけの不思議な詩だった。
でもその「ただの音」が、誰かの孤独や心の叫びのように聞こえた。
(私も詩を書いてみたい)
その衝動は言葉にする前に心の奥で膨らんでいた。
それから数日後、国語の授業で「好きなテーマで詩を書こう」という課題が出た。毎年一度だけこんな授業があり、優秀作品は表彰されて東京都の子どもたちが書いた同じく優秀な詩が載った詩集に載せてもらえる。
私は迷わずペンを取った。
『風の音』
シュオォォ シュオォォ
草がしなる 木がうなる
ザザ ザザ
川がはしる 雲がにげる
ヒュウゥゥゥ
まがる ゆれる とける
シシシシ……
遠くでささやく すきまの音
ヒュッ
かぜのこえ かぜのうた
私は、風の音を詩にした。
この世界に吹く風は、誰かの言葉かもしれない。
そう思いながら書いた詩だった。
そして、それが都の小学生の最優秀賞を受賞した。
受賞の知らせを聞いたとき、私はただただ嬉しかった。
自分の詩が大人たちに認められた。
それだけで胸がいっぱいになった。
でもその嬉しさはすぐに、胸の奥で小さなざわめきに変わった。
(これって本当に私の詩だったの?)
私の書いた詩は「ヒムリール独唱」や「ごびらっふの独白」に影響を多大に受けたものだった。
誰もそんなことは言わなかった。
でも、それだけに私の中には小さな罪悪感が残った。
(私は、私の言葉を見つけなきゃいけない)
そこからの私は狂ったように言葉を求めた。
学校が終わると図書室にこもり、詩集を読み漁った。
芥川龍之介の冷たい文体、茨木のり子のまっすぐな言葉、中原中也の滲むような哀しみ。
言葉がどうやって生まれるのか知りたくて、両親に頼んで美術館に足を運んだり、音楽に耳を傾けたりもした。
モネの『睡蓮』を見ながら曖昧な色の重なりが「曖昧な感情」と似ていると感じ、ドビュッシーの『月の光』を聴きながら、音が波のように広がっていく感覚を言葉にしようとした。
そして、次の年の小学校五年生のとき——私はもう誰の影響も受けていない詩を書いた。
それは「風の音」ではなく、「静寂」をテーマにした詩だった。
そこには音も言葉もなく、ただ存在する「間」を表現した。
その詩で、もう一度最優秀賞を取った。
そして六年生の時にも、再び受賞した。
○
机の上にノートが積み上がっていく。
受賞したときのもの、未完成の詩、走り書きのメモ、意味のわからない単語だけが並んだページ。
私はそれらすべてを机いっぱいに広げた。
古びた紙の匂いが少しだけ懐かしい。
ページの端が折れ曲がり、薄く消えかけた鉛筆の線が、過去の私の痕跡を残している。
(今の私の言葉は、どこにある?)
静かな部屋でペンを手にしたまま、私は自問する。
ページをめくるたび、過去の自分が顔を覗かせる。
「風の詩」——あのときは、ただ詩を書くことが楽しかった。
「静寂の詩」——誰の影響も受けず、自分の言葉を探し出した成果。
だけど今読み返すとそれはどれも「昔の私」の言葉だった。
そのときの私が感じたこと、そのときだけの世界。
(この言葉たちは確かに私が書いたものだけど、今の私の言葉じゃない)
私はノートのページをめくる手を止めた。
ふと頭に浮かぶのは、カナデの笑顔。
無邪気で、飾らない明るさ。
まるで太陽みたいに周りを自然と照らしている。
だけどあの眩しさをそのまま言葉にするのは難しい。
形のないものを形にする。
カナデのあの輝きを、どうやって言葉で掴めばいいのか。
(うまく言葉が出てこない)
それが、一番の問題だった。
言葉を並べてみる。
けれど、どれも違う。
単語を並べても、文にしても、どこか違和感がある。
「正しい」 言葉を探してしまう自分がいる。
(そんなの、どこにもないのに)
私は深く息を吐いた。
うまく書けないことが、こんなにも苦しいなんて思わなかった。
でも書きたい気持ちは消えない。
(私は、また書くんだ)
私はノートの新しいページを開き、ペンを握り直した。
○
それから五日が過ぎた。
机の上に積み上げられたノートたち。私は一冊ずつ目を通し、今の感情に近い言葉を新しいノートに書き溜めていっていた。書き写しては分解して再構築して新しい自分の言葉をとにかくたくさん書き出してみた。
カナデの明るさ、無邪気さ、そして私自身の中にずっとあった感覚。
それをひとつにするために、私は擬音という形を選んだ。
擬音はただの音じゃない。
そこには言葉にできない感情が宿っている。
私が詩を書き始めた頃、最初に心を動かされたのも「音」だった。
『ごびらっふの独白』が教えてくれた、あの感覚。
カナデへの気持ち、胸の奥にある不安、未来への戸惑い。
それらを直接言葉にするのではなく、音の響きやリズムに乗せる。
私はノートを開き、ペンを走らせた。
「フララフラ フラフララ パステルシュガーで ラララ☆」
最初に出てきたのはまるで弾ける泡みたいなフレーズだった。
音やペンの流れに任せて、言葉を構築していく。
「ふわっとパッと クルクルまわる パンケーキタワーにチョコレート♪」
何度も言葉を並べ直し、消しては書き直す。
音の響き、リズム、紙の上に広がる世界。
それはただの言葉遊びじゃない。
ペンを走らせるたび、頭の中でカナデの声が響いている。
私はペンを置いた。
ようやく書き終えた。
胸の奥にかすかな高揚感が残る。
うまくいったのかどうか、そんなことはわからない。
でもこれが今の私の言葉だと、確かに思えた。
誰がどう感じるかはわからない。
だけどページの中には今の私のすべてが詰まっている。
私はそっと、ノートを閉じた。
○
翌日、バイトが終わった後私はそのノートをカナデに差し出した。
「……できた」
ノートを渡す瞬間、指先が少しだけ震えた。
完璧なはずなのに、どこか不安が残る。
カナデはそんな私の気持ちなんて知らないまま、屈託のない笑顔でノートを受け取った。
「わぁ、ありがとう!早く見たい!」
カナデはそう言ってノートを手に取った。
ページをめくる音がやけに大きく聞こえた。
カナデの瞳がノートの中の言葉に吸い込まれていく。
一行ずつ追いかける視線は、まるで宝物を見つけた子どものようだった。
「……なにこれ!すごい!」
思わずカナデが声を上げた。
私の心臓がドクンと跳ねる。
褒め言葉のはずなのに、緊張で息が詰まりそうだった。
「このリズム!擬音が跳ねてて、読んでるだけで楽しくなるし……なんていうか、踊りたくなる!すごいすごい!」
ノートを抱きしめそうな勢いで、カナデは身を乗り出してくる。
まるで星を詰め込んだみたいに彼女の目がキラキラと輝いている。
(ああ、よかった)
胸の奥がふっと軽くなる。
言葉にしなくてもカナデの表情だけで十分だった。
カナデは再びノートに目を落とし、指先でページをなぞる。
「ここ、すごく好き!」
ページの一角を軽くトントンと叩きながら、自然と口ずさみ始める。
「『フララフラ♪ フラフララ♪ パステルシュガーで ラララ☆』……ふふ、これ、声に出すとすごく楽しい!」
音が跳ねて、言葉が弾む。
カナデの声が、私の言葉に命を吹き込んでいく。
その姿を見て胸の奥がじんわりと温かくなる。
(この言葉は、もう私だけのものじゃない)
ページの上にあった言葉が、カナデの声に乗って自由に踊り出す。
それは何とも言えない満足感を私の胸にいっぱいにさせた。
カナデはふいに顔を上げて、私の目をまっすぐに見つめた。
「ねえ、この曲ってどういう意味?」
その問いかけに、一瞬だけ答えを探す。
「それは……自分で考えてみて」
カナデは一瞬きょとんとした顔をして、ふわっと笑った。
「そっか、なるほどね!」
答えを求めるんじゃなく、感じるままに受け取る。
カナデならきっとそれでいい。
「これ早く歌ってみたいな〜!」
ノートを大事そうに抱えたままカナデが言う。
その無邪気な笑顔がまた胸の奥を優しく締めつけた。
「ありがとう、ミズキちゃん!」
私は小さくうなずくだけで精一杯だった。
言葉にすると何か大切なものがこぼれ落ちてしまいそうだったから。
(ありがとうなんて、こっちのセリフだよ)
心の中でそっとつぶやいた。
○
カフェの小さなステージに温かみのあるライトがふわりと降り注ぐ。
パンケーキの甘い香りとコーヒーの苦みが混ざるこの空間が、今日だけは特別な場所に変わっている。
私は客席の片隅に座っていた。
手の中で今日のために書いた歌詞が記されたノートをぎゅっと握りしめる。
心臓がドクンドクンと音を立てる。
緊張というよりも、何か得体の知れない期待が押し寄せてきている気がした。
カナデがステージに立つ。
マイクの前でふわっと息を吸い込む姿は、どこか神聖な儀式のようにも見えた。
彼女はニコッと笑い、マイクに向かって明るく声を放つ。
「次の曲は新しい歌です!みんな、準備はいい?」
お客さんたちがざわっと笑顔になる。
カナデの無邪気な笑顔に釣られるように、会場の空気が一気に和らぐのがわかった。
「フララフラ♪ フラフララ♪ パステルシュガーで ラララ☆」
カナデの声が弾む。
リズムに合わせて軽やかに跳ねるようなメロディ。
その言葉が、ステージから客席へまるでカラフルなシャボン玉みたいに広がっていく。
観客たちは最初こそ戸惑った顔をしていた。
「何これ?」という表情で、顔を見合わせる人もいる。
だけど――
サビに差し掛かる頃には、手拍子が自然に生まれていた。
笑顔でリズムを取る人。
小さく体を揺らす人。
じっと腕を組んで聞き入る人。
誰もが違う反応をしている。
それが不思議だった。
だけど同時にとても面白いと思った。
前回の「シュガードロップ」は違った。
あのときは切なさがストレートに伝わった。
観客たちの表情が揃っていた。
静かに聴き入り、同じ感情を共有する空気があった。
でも今回は違う。
驚き、戸惑い、楽しさ、ワクワク、クスッとした笑い。
バラバラな感情が同じ場所に散りばめられている。
(……これってすごく面白いかもしれない)
気づけば私は笑っていた。
なんで笑っているのか、自分でもわからない。
でも胸の奥がくすぐったくて、温かくて、楽しくて仕方がなかった。
私の書いた言葉がいろんな形になって届いている。
一つの意味に縛られず、聴く人それぞれの中で違う景色を描いている。
それは詩を書き始めた頃の感覚に少し似ていた。
言葉が誰かの心に届く瞬間の、あの不思議な感覚。
(そうか、私、こんな気持ちだったんだ)
○
カナデは最後のフレーズを歌い終える。
歌声が余韻となって空間に残る。
次の瞬間、客席から拍手が沸き上がった。
その拍手の中には驚きも、楽しさも、感動も、全部詰まっている気がした。
私は小さく拍手をしながら、心の中でそっと思った。
(これからも、もっと書いてみたい)
私の言葉がどんなふうに届くのか知りたくなった。
この感覚をもっと味わいたいと思った。
○
ライブが終わった後のカフェはいつもより少し静かに感じた。
お客さんたちの笑い声や拍手の余韻がまだほんのりと空気の中に残っている。
私は片付けを手伝うフリをしながら、カナデの姿を目で追っていた。
(……最高のライブだった)
客席から見たあの景色がまだ頭の中で鮮やかに残っている。
「パステル・フラフラネード」のあのリズム、あの響き、そしてカナデの笑顔。
それが誰かの心に届いたことが、言葉にならないほど嬉しかった。
ふと、思い立つ。
(……カナデのお母さんにちゃんとお礼を言おう)
私の歌詞を短期間であんなに素敵な曲を作ってくれたのだからと、感謝の気持ちを伝えたくなった。
「ねえ、カナデ。お母さん、今日は来てないの?」
カナデは少し驚いたように振り向いて、すぐに笑顔を作った。
だけどその笑顔がほんの少しだけぎこちない気がした。
「あ、うん……なんか今日は体調が悪くて、家で休んでるんだって」
一瞬だけ、胸の奥がひやりと冷えた。
なんとなく当たり前のように、カナデの母もこの場所にいると思っていたから。
「そうなんだ……お大事にって、伝えてくれる?」
「もちろん!そういえばお母さんも歌詞みてすごいベタ褒めだったんだよ〜!それでね〜」
カナデは元気よく答えたけど、その姿が少しだけ寂しそうに見えた気がした。
○
家に帰ると机の上にはノートが置きっぱなしだった。
歌詞を書いていた約一週間、ほとんど徹夜で疲れているはずなのに、不思議と疲れはなかった。
むしろ胸の奥で言葉がふつふつと沸き上がってくる感覚があった。
(書きたい)
そんな衝動が、ペンを握る指先に力を宿す。
ページを開く。
真っ白な余白が、じっとこちらを見つめ返しているようだった。
少し前までこの余白はただの「空白」だった。
何を書いたって、誰かの心に届くわけじゃない。
どんなに言葉を並べても、結局何も変わらない。
(無意味だ)
ずっとそう思っていた。
賞を取ったところでページの外の世界は何も変わらなかった。
詩を書いたって、私自身すら結局救えなかった。
だから書くことから少しずつ遠ざかっていた。
誰にも見せたくないノートを増やしていくだけの作業に、意味を見出せなくなっていた。
でも、今は違う。
カナデが私の言葉を歌った。
その声が誰かの心を動かした。
言葉は紙の上だけで終わらなかった。
自分のために書いた言葉が、誰かの中で新しい形になる。
それがこんなにも面白くて、こんなにも温かいなんて思わなかった。
(たとえ無意味だったとしても、書きたい)
その瞬間、自然と笑みがこぼれた。
意味があるかないかなんて、きっとどうでもいい。
ただ言葉を探すこと自体が、今は心地いい。
(また書こう)
そう思いながら、私はペンを走らせた。
新しい物語の始まりのように静かに、でも確かな言葉がページに刻まれていく。
++++++++++
『パステル・フラフラネード』
作詞: 鳴宮ミズキ
作曲/編曲: MIDORI
フララフラ♪ フラフララ♪
パステルシュガーで ラララ☆
ふわっとパッと クルクルまわる
パンケーキタワーにチョコレート♪
ぴょんっとポンっと 飛び乗っちゃって
クリームの雲で ふにゃふにゃダンス
イチゴでピッ☆ ホイップでパッ!
あれれ?今日がひっくり返る?
ペロリとひとくち トロリンあまい
ねえ、これってどこ行くの?
パステル☆フラフラネード
クルクルくるっと メリーゴー!
ポンポンはじけるキャンディの夢
フワフワ跳ねて どこまでも
フラフラネード☆ くっついたら
グルグルシュガーで溶けちゃうよ
ランラン響け フルフルカラー
ゆらゆらキラリ、ハートもフワッ☆
シュワっとパッと ソーダの海で
バナナボートがプカプカプー♪
もぐっとググッと お魚ハロー!
ゼリーの島まで トロトロワープ
クッキーでコン☆ ドーナツでトン♪
あれれ?未来がさかさまです?
コロリとコロンで あらららなんだ
もう、まいっか 笑っちゃお!
パステル☆フラフラネード
クルクルくるっと メリーゴー!
ポンポンはじけるキャンディの夢
フワフワ跳ねて どこまでも
フラフラネード☆ くっついたら
グルグルシュガーで溶けちゃうよ
ランラン響け フルフルカラー
ゆらゆらキラリ、ハートもフワッ☆
パパパラダイス! ララランホップ!
コロコロ転がる 夢の玉
あっちもこっちもカラフルスピン☆
まわってまわって とまらない!
パステル☆フラフラネード
クルクルくるっと メリーゴー!
ポンポンはじけるキャンディの夢
フワフワ跳ねて どこまでも
フラフラネード☆ くっついたら
グルグルシュガーで溶けちゃうよ
ランラン響け フルフルカラー
ゆらゆらキラリ、ハートもフワッ☆
フララフラ♪ フラフララ♪
パステルシュガーで ラララ☆
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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また次回もお楽しみに!!