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3話 皇子と姫の伝説

 神々の時代は終焉を告げた。


 自然界の浄化作用によって回復の兆しが見え始めた世界は、戦火に呑まれ惨烈たる光景となった。

 耕された畑は踏み潰され、作物は燃やされ、日々鼻につく異臭が増し、悲鳴と苦痛の叫びが耳を塞いでも聞こえてくる。

 静寂を取り戻した後に残るは憎悪、復讐、怨念のみ。子を、家族を、友を、恋人を奪われた者は殺した相手へと剣を突き刺し、攻められた国は攻めてきた国へと報復をする。

 人は愛する者を殺されれば、拭い難い復讐心に囚われる。

 けれど、わだかまりを超え、武器を棄て、世界の復興へと一丸となって力を注げるならば。

 もし、互いに手を取り合う事が出来るのならば、血で血を洗う復讐劇は終焉を告げ、世界は蘇る。

 数多の人の意思、獣の如く乱れた心を一つに束ね、世界に秩序を取り戻す為に、2人の若者が旅に出た。


 1人は、魔術が根幹を成すイリシュタリア王国の姫。

 もう1人は、武術が根幹を成すグランディス皇国の皇子。


 姫は仁道を歩み、相手を心服させていった。彼女の無償の愛は相手の心を惹きつけ争いの芽を削いでいった。

 皇子は覇道を歩み、相手を屈服させていった。圧倒的な力は絶大な恐怖となり、争いを防いだ。

 心では人を武から守れず、武では人を心から救えない。

 ゆえに2人は異なる道を歩みながらも、互いを認め、手を取り合った。


 だが2人の願いを引き裂く様に、世界を満たす魔力は急激に変異し、均衡が崩れ始めた。


 滅ぼされ続けた命達の負の念の集合体。全てを終わらす者。

 絶対的な破壊の念を持つ妖精の王が誕生しようとしていた。


 妖精王の誕生の予兆は、終焉の前兆である。


 再生不可能の原始回帰。光は闇に、大地は泥土へ、生は死へと転換され、反創世が始まる。

 世界の最後の砦である2人は妖精の王とその軍勢を倒すべく、戦い続けた。

 満身創痍となろうとも尚も立ち上がる皇子と支える姫。生き残っているだけで、善戦と言っても等しい悲惨な状況であった。

 2人の援軍となるべく、多くのものが立ち上がる。

 あらゆる生命体、命無き無機物、枠組みを超え、世界に存在するもの全てが2人の力になろうと、自らの魔力を2人へと捧げる。妖精王の前では、それらは小さな一滴に過ぎない。だが、星の瞬きのように僅かな光はしっかりと結び合い、大地を潤す大河となり、2人の元へと届いた。


 そして、全存在と2人の想いが、彼の者を目覚めさせる。


 神々の天地創生の業を助け、世界の祖を作り上げた精霊の王。傍若無人の妖精王を許すはずが無かった。

 黒き負の念に染まることなく、託された想念の力によって白く輝く剣。精霊王によって創造された聖剣を手に、皇子は妖精王との最終局面に至る。

 だが、どれだけ地上の想いが寄り集まろうとも、積み重ねられてきた負の化身の力は増大である。皇子は、ここでようやく互角となった。


 皇子は、妖精王を道連れに聖剣の力をもって対消滅の道を選ぶ。


 覇道を突き進み、手に掛けてきた無数の命から溢れる憎悪の念を一身に受ける。それは、後世へと繋げさせない為に人柱となる覚悟である。

 そして、世界を覆う程の強い閃光が迸る。

 反創世によって世界を覆う暗雲は晴れ、朝日が昇る。

 妖精王を失った軍勢は光の中へと消滅する。青き空の下で生き延びた人々は、その光景に万感の思いで見つめていた。今を生きる喜びを噛み締め、平和な時代の到来に感謝の祈りを捧げる。

 姫は、皇子を見届けた。

 鞘だけになってしまった聖剣を手に、姫は精霊王と共に再生の旅に赴く。

 少しずつ、無理をせず、焦らず、自分の出来るやり方を見つめ直す探す旅であった。

 炎の降る塔。激流の郷国。竜巻の生まれる森。牙獣の王冠。かつて魔力の源流であった地に赴き、精霊王の力を祀り、聖地として封印を施した。役目を果たした精霊王は再び世界へと眠りにつき、息を吹き返した源流は大地を巡り、再び命を育み始める。

 各地の復興を目指す人々と言葉を交わし、同盟諸国の指導者達と新たな志の元、平和の誓いを立てる。

 そして最後にグランディス皇国を訪れた姫は、皇子の形見である聖剣の柄を皇帝へと献上した。

 星暦553年。新たな時代の幕開けを予感させる早春の日。故郷イリシュタリア王国へと帰還した姫の王位即位式が、盛大に執り行われる。王国初となる女王の誕生、その英姿を一目見ようと王都を訪れた人は百万を優に超えた。

 皇子の遺志を継ぐ彼女の治世において、各国は戦で乱れる事はなかった。

 






 そこで本を閉じた。

 約800年前に引き起こされた妖精王と2人の戦い。前半は皇子の場面なのか詩的になり、後半の姫の場面では内容が短く、淡々としているのが少し気になる。皇子の方が物語としては魅力があり、姫は盛り上がりに欠けた結果、作者は書くのに飽きてしまったのかもしれない。

 もう少し真面目に書けと思う。




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