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モブ令嬢はモブとして生きる~周回を極めた私がこっそり国を救います!~  作者: 片海 鏡
2章 生誕祭に霊草の葉を

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15話 子供達の誕生日会

 夜が明け、王太子の生誕祭が開催される。待ちに待ったと言わんばかりに、王都は祝福ムード一色になる。

 王都では様々な催しが執り行われ、人々がひしめき合っているのだろう。別館の窓辺からは、大きな飛行船が飛んでいるのが見える。飛行船の大きな気嚢には、遠くからでも見える程に大きな王家の紋章が描かれている。800年前の姫が作ったとされるその紋章は、白い大きな鷹と一本の剣が描かれている。それは精霊王と皇太子を表している。

 精霊王は姫の周りを飛びまわり、道案内をしていたのだろうか。それとも、彼女が呼ぶとその姿を現したのだろうか。紋章の鷲を見ながらそう考えていると、レフィードが鳥に似た姿へ変化したのを思い出し、気になり始めた。

 どうして同じ鳥なのか。今度、訊いてみよう。


 



「殿下。お誕生日おめでとうございます!」


 口々に私や兄様位の貴族の子供達が、レーヴァンス王太子にお祝いの言葉を述べながら、彼へとプレゼントの箱を渡していく。

 私達がいるのは、城の敷地内に設けられた庭園だ。庭師達の手によって手入れが行き届いた庭園にはピンクや柔らかなオレンジ色等、様々な花が咲き誇っている。

 ガーデンパラソルの下には子供に合わせたイスやテーブルが並び、綺麗に皿やカトラリー一式がセッティングされている。子供達が席へ着くと、次々とお菓子が運ばれてくる。

 生誕祭一日目は、貴族の子供達を集めた誕生会だ。レーヴァンス王太子の10歳の節目となる生誕祭のパレードは、パーティの最終日にして誕生した日に当てられている。各国の要人に国力を見せつける目的もあると思うが、一体どれだけお金が動いているのかと想像するだけで頭が痛くなりそうだ。


「ありがとう」


 昨日とは打って変わって、子供っぽい笑顔ではなく王太子様らしい穏やかな笑みを浮かる。彼はプレゼントの箱を受け取ると封を開け、その中身について一人一人会話を重ねる。

 登場人物全員デビュタントが終わっている8年後の物語しか知らず、貴族社会に疎い家系に生まれたので、彼等の話に衝撃を何度も受けた。

 城や貴族の邸宅では、定期的にこのように貴族が集まるお茶会が開かれている。それは知っていたが、大人だけでなく子供も含まれていた。男女で別れてはいるが、情報交換の場だけではない。将来の為に信頼関係を築くだけでなく、親の指示によって交友関係を広げている。繋がりやコネを得ようとする一族は率先してお茶会に参加している人もようだ。

 今出席している子供達は、全て顔見知り。友人関係を築いている。

 兄様と私は、今とてつもなく浮いた存在だ。

 ちょっと国王に注目され気に入られたからと、最終日のパーティへ招待された田舎者の男爵の息子と娘。ここに居るのは子供から、親に何か言われているのか、刺さるような視線が時折向けられる。


「ねぇ、ミューゼリアさん」

「えっ、あ、はい!」


 黄色のドレスを着た私の隣の席にいる女の子が、優しく声を掛けてくれる。

 年は私よりも一歳年上。ふんだんにレースがあしらわれた水色のドレスに、銀色の美しい髪を彩る紅玉と金剛石の髪飾り。絹の様に白い肌はほんのり桃色に色づき、長いまつ毛に彩られた紫色の瞳が人々を惹きつける。

 仕草一つ一つが美しく丁寧であり、まるで絵本の中から出てきたお姫様のような可愛らしさと気品を持っている。

 国家最強の魔術師であるアーダイン公爵の娘シャーナさん。

 悪役令嬢。将来、そう呼ばれる役割にいる女の子だ。


「難しい顔をしていたけれど、大丈夫?」

「緊張してるだけ、です!」


 心配そうに見つめるシャーナさんに、我に返った私は笑顔を作って答える。

 魔術師と魔法使いは相いれない部分が多く、アーダイン公爵がリティナの師匠を良く思ってはいなかった。事ある毎に対立し、遺物回収も反対をしていた。

 公爵家として、将来有望な魔術師としてもてやされた彼女は、ゲーム本編では何かにつけてリティナを目の敵にしていた。婚約者であるレーヴァンス王太子がリティナの協力者となった嫉妬心だけでなく、彼女が大役を任された為に魔術師としてのプライドが傷付けられたのだろう。気に入らない事があれば癇癪を起し、何かにつけてリティナが原因だと決めつけ、虐めを行い、画策した。結果、彼女は心を壊し、妖精達に利用され、妖精王復活の贄となる。

 彼女のサイドストーリーは、少しでも道が違えばあんな結末にならなかったのでは、と思わせる描写がいくつもあり、ifが欲しいと思わせる内容だった。


「はじめての場所は、緊張しますよね」

「私達が一緒にいるので、悪口を言ってくる人はいません。大丈夫ですよ」


 シャーナさんの取り巻きの女の子2人が、私を励ましてくれる。


「そうよ。私達が付いているわ。ミューゼリアさん」

「あ、ありがとうございます」


 にこやかに笑うシャーナさん。今の彼女は、ゲーム本編の全く違う。

 いじめの標的になる筈の私に声を掛け、取り巻きの女の子と一緒に同じテーブルの席へ座らせてくれた。これから2週間の催しについて、嫌な顔せず説明をしてくれるだけでなく、生誕祭が終わった後もお友達として交流しようと誘ってくれた。

 こんなに優しい子が、心を壊すまで追い込まれながら主人公を妨害するなんて、想像がつかない。


「すいません。そろそろ俺達の番なので、妹を連れて行きたいのですが、宜しいですか?」


 しばらくして、兄様が私達のテーブルへやって来た。昨日とは違い、とても礼儀正しく、立ち姿もしっかりとしている。一瞬、誰なのか分からない位だった。


「もちろんです。ミューゼリアさん、また後でお話ししましょうね」

「はい。それでは、また」


 私は深々と頭を3人に下げ、兄様と一緒に王太子の元へと向かった。


「王国の若き太陽。王太子殿下。誕生日おめでとうございます」


 王太子の前へと立つと、兄様は胸に手を当て深々と頭を下げ、私はドレスの裾を少しあげながら片足を引いて軽く曲げて挨拶をする。


「はじめまして。レンリオス家のイグルドさんとミューゼリアさんだね。来てくれて嬉しいよ」


 王太子の言葉が終わると、私達は顔を上げる。

「はい。殿下。記念すべきこの日。貴重なお時間を共有させていただき、感謝いたします」


 周囲にバレないようにお互いに初対面であるかのように装う。王太子は慣れていると思うが、兄様がここまで合わせられる人だとは驚いた。オンとオフの切り分けがしっかりできるタイプの人のようだ。


「我々が用意した贈り物はこちらです」


 待機していた護衛のリュカオンが一つの小さな箱を兄様に渡す。兄様は箱の蓋を開けて王太子に贈り物の中身を見せる。


「これは……?」


 レーヴァンス王太子の微笑みが少し崩れ、不思議そうに贈り物を見つめる。


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