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第二話 おとーさんとのであい

ドラゴンのシムスと人間の少女べルース。

空を飛び町に向かうシムスは、ふとべルースとの出会いを思い出すのでした。


どうぞお楽しみください。

 天高く舞うドラゴンのシムスと、その背に乗る人間の少女べルース。

 二人は空から人間の町を探していました。


「あ! おとーさん! まちがみえるよ!」

「ん? どっちだ?」

「えっとね……、ちょっとひだ……、みぎのほう!」

「お、本当だ。べルースは目が良いな。助かるぞ」

「ふふーん」


 とっくに見つけていた事はおくびにも出さず、シムスは背中で胸を張るべルースを褒めます。


「おとーさんのおかげでみえるようになったからね! いっぱいおてつだいするよ!」

「そうか。それは頼もしいな」


 シムスは嬉しそうに話すべルースを肩越しに眺めながら、右寄りに進路を変えました。


(あれからもうすぐ一年か……)


 シムスはべルースとの出会いを思い返します。

 山でのんびり暮らしていたある日、突然近くの村から疫病を鎮める生贄として捧げられた盲目の少女べルース。

 母を早くに亡くし、父も疫病で失い、病に光も奪われた少女は、父のいる天国に行くためと言われ、シムスに食べられたいと懇願します。


(まったく、人はドラゴンというだけで、災いの責任を押し付けようとする。困ったものだ)


 しかし村の疫病には何の関わりもなく、人を食べる事に興味さえないシムスは、にべもなく断りました。

 それに絶望したべルースの大泣きに閉口したシムスは、咄嗟に自分が父親代わりになると言ってしまいます。

 人間の子どもなど育てた事のないシムスでしたが、試行錯誤を重ねるうちに、べルースの幸せを心から願う気持ちが芽生えました。

 半年ほど過ぎたある日、村から依頼を受けたであろう討伐隊の気配に、山を去る事を決意。

 べルースに自身の血を与えて目の治療を施すと、討伐隊にべルースを託せると思い、飛び去ろうとします。


(あれで人の元に返して幸せにできると思ったのだがなぁ……)


 しかし半年の生活でシムスを父と慕っていたべルースは、その尻尾に根性でしがみつき、付いてきてしまいました。

 目が治り、ドラゴンの姿を見てもなお父と呼んでくれたべルースにシムスも折れ、共に旅を続けています。


「おとーさん!」

「な、何だ?」

「なんかぼーっとしてた! どうしたの?」

「何、べルースと会った時の事を思い出していた。あの時と比べると随分大きくなったな」

「うーん、そうかなー。おとーさんとくらべると、まだまだちっちゃいきがする」

「私と比べてどうする。私はドラゴンで、べルースは人間だ。同じような大きさにはなれないだろう」

「やってみなくちゃわからない!」


 びしっと音がしそうな勢いで腰に手を当て、胸を張るべルースに、シムスは思わず笑い声を上げました。


「はっはっは。そうだな悪かった。やってみないで決めつけてはいけないな」

「そーだよおとーさん!」

「そうしたら次の町で美味しいものをいっぱい食べないとな」

「うん!」

「ナカアキの実もな」


 途端にべルースの顔が曇ります。


「うぇ、あのにがいのやだ……」

「うーむ、それでは私のように大きくはなれないな」

「! たべる! ちゃんとたべるよ! ……ふたくちくらい」

「はっはっは。まずはそこから頑張ろうな」

「そのかわり、ちゃんとたべたらなでてね!」

「勿論だ」


 べルースの笑顔を乗せて、シムスは町へと向かうのでした。

読了ありがとうございます。


どっかで見た事ある話だなと思ったあなたは通ですね。

一昨年の『なろうラジオ大賞2』に投稿した『お父さんはドラゴン』のアフターストーリーとなります。


『お父さん』呼びが『おとーさん』になっていたり、話し言葉がひらがなになっていたりと仕様変更はありますが、どうかご容赦いただければ……!


次話もよろしくお願いいたします。

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