6. 義賊事件2
屋根の上に降り立った彼女を見つけると、蒼い影は「ちょうどいいや」と呟いた。
「皆!そして、この光景を正義の眼でご覧になっている国王陛下!今ここに宣言する!僕らは、悪を為して私腹を肥やす者達から奪う!」
盗賊が言葉を切り、後ろを取ったまま動かない伝令官を振り返った。
「僕らのしていることは誰が見ても“悪”だ」
蒼い影となって姿を隠した彼は今や、アルフィミィの耳を、目を通して、黄金要塞の王に話しかけている。
彼の意志を敏く見通した伝令官は、あえて動こうとしなかった。
「だが僕らには、僕らの信じる大義がある。僕らが動く事で、この愛すべき街に巣食う害虫共に、黄金王の正義の剣が及ぶのを願ってやまない」
王が唇を噛む。
返答を待つかのように佇む盗賊に、伝えねばならぬ。
アルフィミィが小さく頷いた。
アルフレッドはベッドサイドの抽斗から取り出した魔導具に魔力を通し、伝令官に魔法の伝言メッセージを送る。
「黄金王よりの問いを伝えましょう、蒼き影よ。諸君が諸君の信ずる大義に従って盗みを行い、そして先刻の言葉に、嘘偽りは欠片も無いか?」
王はケネス翁とともに、極度に緊張したまま映像を──盗賊の反応を注視する。
「誓って、偽りは無い」
盗賊は言った。
言葉をかみしめるように、誓って見せた。
「僕らは一度たりとも、善き人から奪う事はしない。凡百の盗賊でなく!弱きを助け強きを挫く、心ある義賊として振る舞うと誓う!黄金王よ、僕らは挑み続ける──止められるならば止めてみたまえ!」
蒼い影は宣言を終えると、集まった人々に次の約束を伝え、素早く姿を消した。
アルフィミィに急ぎ帰還するよう伝え、魔導具を置く。